コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
館の中庭に、淡く輝く魔法陣が浮かび上がる。リゼリアが静かに呪文を唱え、手をかざすと、魔力が奔流となって空間を歪ませていった。
「……ふふ、いい感じね」
彼女は満足げに微笑みながら、徐々に形を成していく門を見つめる。
セリオは腕を組み、その様子を眺めながら呆れたように言った。
「館に転移門を作るって言うから、てっきり外のどこかに繋げるのかと思っていたが……お前の研究所か」
「ええ、そのほうが便利でしょう? 私がわざわざ魔界のあちこちを歩き回る手間が省けるし、お前も困ったときにすぐ呼べるわ」
リゼリアは指を鳴らし、魔法陣の光を安定させた。門は黒曜石のような縁取りを持ち、中央にはゆらめく紫色の魔力の膜が広がっている。
「転移門があることで困るのは、俺のほうだな……」
セリオはため息をつきながら、門を一瞥する。
これでリゼリアが好きな時に館へやってくることができる。彼女にとっては便利かもしれないが、セリオにとっては休まる時間が減りそうだった。
「まあ、そういうことだから、これからはもっと頻繁にここに来るわね」
「……やっぱりそうなるか」
「そうなるのよ」
セリオが頭を抱えるのを見て、リゼリアはくすくすと笑った。しかし、その笑みは次第に穏やかなものへと変わっていく。
「ねえ、セリオ……少し真面目な話をしてもいいかしら?」
「……急にどうした?」
「実は……お前に話しておかないといけないことがあるの」
リゼリアは一歩近づき、真剣な眼差しでセリオを見上げた。その表情には、いつものからかい混じりの雰囲気はない。
「……何の話だ?」
「お前には、息子がいるのよ」
セリオの思考が一瞬止まる。
「……は?」
「カイ。お前と私の間に生まれた子よ」
リゼリアの静かな声が、中庭を舞った。
セリオはただ、その言葉を理解しようとするかのように、じっとリゼリアを見つめていた——。