『~~~~~~[魔力感知]で魔力を認識し、その認識した魔力をなんかこうフンッてやってそれでうおおおおってやってビチクソがーって頑張れば魔力を任意の位置に集めることができる。多くの場合ここまでできたらスキル[魔力操作]を獲得することができる。また、[魔力操作]を獲得してからは容易に魔力を操作することができるようになる。そして~~~~』
「はぁ?」
何言ってんだこの本…
え?これって[10歳までに覚えたい魔法の使い方]であってるよね?
私は本を閉じて表紙を確認する。
そこには[10歳までに覚えたい魔法の使い方]と太々しく書かれている。
だよね?私ちゃんとこれ読んでるよね?
何?ビチクソがーって…
まあ百歩譲ってふんっはまだわかるよ?そんでさらに九百歩譲ってうおおおおも渋々わかってあげよるよ?
でもんだよビチクソがーって…
舐めてんじゃねぇぞこら!
あー、美少年舐めたくなるのはわかるんだけど…
とにかく、こちとら金払ってこの本買ってんねん。
わかるけぇ?
それやのになんやねんこのビチクソがーとかいうふざけた表現は…
私が気強かったら今頃これ買ったところまで行って店主を問い詰めてたよ?
んでもって私のあまりの美しさを持ってして店主を失神させちゃうよ?
よかったね、私が気強くなくて、お淑やかで華やかで可憐で麗しくて美しくて…
はぁ、そんな可愛い私が心の中だとはいえビチクソだなんてお下品な言葉を連呼していただなんて…
末代までの恥ですわ…
…はっ!まさか顔面オーパーツのこの私にビチクソとかいう汚い言葉を連呼させるためにこんな内容を…?
この私が…IQ2億のこの私が…!?
こんな低俗な本の策略にまんまと嵌るだなんて…
なんたる屈辱…
美少女を17年、美少年を7年やっててそんなビチクソだなんて穢らわしいお言葉一度も発したことなかったのに…
んだてめぇ?こっちはなぁ合わせて24年間ずっと美の化身として生きとったんじゃ…
それをこんな世に出て数年くらいの本に…
ん?この本そんな若いか?
「…」
さわさわ
んー、この紙の感じもしかして100年くらい経ってんじゃない?
この私が美の化身としてこの世に存在した時間よりもこの低俗な本がこの世に存在した時間の方が長いだなんて…
あたす…許せないでやんす…
てかこいつよく100年もこの世に残れたな…
こんな本即刻焚書されるもんでしょ普通…
わかんねー。
「これも駄目か…」
私はこのバカ本を雑に本棚に返す。
これでもうこの書斎にある魔法についての本は全部読んじゃったのかな…?
どれも何書いてんだか分かんなかったけどこれはその中でもダントツで意味不明だったね。
二度とその面見せんじゃねぇ!!
ばーかばーか!!
…私魔法の才能ないのかね?
どうなんだろ…
んー、でも才能ある人にあの本見せても多分何言ってんのか分かんないはずだよね。
ていうかこれ読んで魔法使えるようになったらめっちゃ引くわ。
…やっぱ[魔力相殺機構]のせいなのかなぁ…
いやいや…だってあれは魔力で魔力を相殺するシステムのことだし。
もし私が自分の魔力を相殺してるんだったら[魔力感知]で認識できないはずだしね。
もうちょい頑張るかぁ。
「まず[魔力感知]で魔力を認識して…」
ゆらゆらと私から漂う魔力を認識する。
んで次に
「フンッ」
………そして
「うおおおお」
……………………
「ビチクソがー」
……………
魔力は微動だにしない。
これ声に出す必要あったかな?
なんで私こんな恥ずかしいことしたんだろ…
…これ誰かに聞かれてないよね…?
い、一応確認しとくか。
私は恐る恐る[魔力探知]を発動させる。
「え?」
扉の前に何かがいる。
そこだけじゃない、食堂に、お風呂に、私の部屋に、私の[魔力探知]の範囲内に数え切れないほどの人型ではない何かがいる。
なんなんだこいつら!?
クソ!変なこと考えてたから気づけなかった!
あんなクソ本読むんじゃなかった!
とにかく、一旦隠れなきゃ…
ドンッガッ
「ヴオオオオオオオオオ」
「ッ!」
扉の前にいた何かは扉を突き破って書斎に入ってきた。
私とおんなじくらいの大きさでぱっと見狼なのだけど異様に発達した前足と大きな爪のせいで狼とは違う生き物だとわかる。
逃げられない…
そして私は叫ぶ間もなく狼もどきの大きな爪にお腹を貫かれた。