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霞む目は、日比を映し出している。孤児院での綺羅びやかで細やかな記憶。
此処に入ってからの重厚で暗い記憶。
いつまで愛されたか解らない親と、一輪の白い花の記憶。
あの花はどうなったんだろう。朧気な記憶にバキッと鮮明に光る花のシルエットと色合いは思考を巡らせようとする。
が、生憎死に近くあらゆる出血を体現しているこの体で考えを巡らせることなんて叶わないことだった。
死にたくないなあ。って思ってたと思う。吐き出せない吐き気が口を乾かしていく。
眼球が乾き始め、血液が抜けていく。
指先を腹に持っていく。血が流れているのを感じるほどの感覚は残っておらず、身体の温もりを微かながらに感じるだけであった。
仰向けで転がる私は天を仰ぐように腕を上げ言った。
「このクソみたいな世界に、感謝するよ。」
「そのまま地獄に堕ちろ、クソガキ」
何かが体に染み込んでいく。感覚が戻っていく。世界が動き出すように、迅速に身体が、もとに戻る。
私に回復用の血をかけていた。誰が?
「君は、シリウスかい?」「よく覚えてたな。クソ野郎これ俺の分なんだからな。一生かけて感謝しろ。」
「そうするさ。」と言って体を持ち上げる。不思議なもので、体を持ち上げると全く別の体になったみたいに目新しい感覚なのだ。
そう思うと見透かしたように「一回死んだようなもんだ、慣れるまで時間がかかる。」と言われた。
「もう1箇所に血痕があるってことは、相手にもダメージ入ったのか?お前が一人でってことは」「能力はまだ何もないんだなあ、それが」「助けなけりゃ良かったな。」酷いな。
見ると、シリウスも身体中に切り傷がありボロが出ていた。
「切り傷があるが、どうしたんだ?」と、聞くとあまり予想していない答えが帰ってきた。
「負けた。勝てそうもないから逃げてきた。」「っん…、相手はどんな?」息を呑んでから質問する。
「背の小さい女だ、攻撃が見えなかった。イメージとしては………そうだな、空気が、攻撃してきた、みたいなかんじか?」
「ってことはクラーラってやつじゃないのか。」と小声でいうと声を低くして「誰だそいつ」と聞かれた。
「敵が、あの黒いヤツ、を呼び出していたんだ。その時クラーラによろしくだのなんだの言ってたから、推測だけどそのクラーラってやつが、黒いヤツ、を操っているんじゃないか?」
「ほーん。で?交戦したやつは?」
「重力を滅茶苦茶重くしてきた。」「なるほど」
「話を整理しようぜ。あの黒いヤツ、を操ってるのがクラーラ。重力系能力者が一人、あと、能力よくわからんが空気圧系の能力者が一人。」「うん、多分そう。」といったところで一つ素朴な疑問がよぎった。
「ここの能力者もあの儀式をしたのか?」