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蝶舞(かれん)@常にスランプ
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素っ頓狂なレイブの問いにアスタロトは真摯なムードで向き合う、羊の骨の表情はどこか優しげな慈愛に満ちているようでもある。
『ハタンガが魔力災害に襲われた事も、ギレスラと出会いその後ペトラと出会う事も、バストロ達との別れ、黒衣の襲撃者との邂逅、学院での生活、それに役立たずの誹り…… スタンピートで死に掛けた事も、その場に満ちた魔力に依って我と対面できた事、何より、消滅するばかりだった我がお前に助けられて今ここにこうしている事こそ、想定外の事態をお前自身の判断で取捨選択してきた結果じゃないか、レイブ?』
「そ、そう言えばそうかも知れませんけど…… でもそれは全部その場その場で出来る事を夢中でやって来ただけで――――」
『それで良いのだ、レイブよ』
「え、良いんですか?」
アスタロトはレイブに対して大仰に頷いて見せ、灰色の両手を左右に大きく開いて言葉を続ける。
『無論だとも、良いかレイブ、そもそも人生とは計画通りには行かない物なのだぞ? どれほど賢かろうが用心深く慎重に行動しようが、思いもよらぬトラブルや予想外のイレギュラーは決して避け切る事など出来ない物だ…… これは、今のこの星、地球の有様自体がそんな異常事態に端を発している事を思えば誰にも否定する事ができない真実だろう? 何しろ世界中の多くの命が今の様な状況を回避する為に知恵と技術を惜しみなく結集した結果が…… この時代なのだからな……』
「…………」
『どれほど望もうが常に思わぬ事が起こるのが人生であり世の中なのだ、予測も付かない未来に対して人も悪魔も他の生物も違いなく立ち向かうしかない、その場その場で最良だと思う手段を選択しながら只々、一所懸命に向き合うしかないのだ』
「……確かに」
『自信を持てレイブ! お前達ならきっと首尾良くやり遂げられる、我はそう信じているぞ! よしんば思い通りにいかなかった場合であってもその先は新たな道が開ける、そうしたらその場で又、一所懸命に全力を尽くせば良い、違うか?』
アスタロトの問い掛けに、徐々に表情を引き締まった物に変えながらレイブは答える。
「そうか…… そうですね、その場その場で一所懸命、か…… それだったら、兎に角出来る限りの事を精一杯なら、ペトラやギレスラと力を合わせてやってみますっ! アスタさん、俺、上手くいかなくても諦めずにチャレンジしてみますよっ!」
この決意に溢れた言葉に、アスタロトは満足そうに頷いて見せ、直後に声のトーンをいつも以上に明るい物に変えて言葉を続ける。
『その意気だ! 思えば我等悪魔が天空に赴く前、世界を確定されていた滅びから救い上げた『聖女と愉快な仲間たち』も、一度として予定や計画通りに物事を運んだ事など無かったな』
「そうなんですか?」
『ああ、折角集めたアーティファクトを他人に渡してしまったり、死を覚悟した筈が突然取りやめたりな、いつも出たとこ勝負のその場しのぎ、付け焼刃の連続であった♪』
「へー、意外ですねー、そんな場当たり的な感じで良く皆が付いて行きましたねぇ、人徳が有ったのかなぁ、例のコユキさんと善悪さんですよね?」
『うーむ、人徳? は怪しかったが、兎に角、諦めると言う事は無かったな…… 二人とも出会った時からずっとそうだったのだぞ! 目的を果たす為には手段を選ぶ事と言うのが無かった…… 時に無様で滑稽に見えても一切の躊躇なく邁進し続ける姿にな、徐々に周囲のニンゲンや悪魔、魔獣達までつられる様に引き込まれていってなぁ~、ふふふ、気が付けば全員揃ってバタバタと、な♪ 先も何も見えないというのに思えば愉快に過ごした記憶ばかりが残っているな♪』
ここまでの道程で、幾度と無く聞かされて来た数千年前の思い出話、その中でもいつも愉快そうに語って聞かせてくれたニンゲン、コユキと善悪のエピソードと比べても、この時のアスタロトはまるで子供の様に無邪気な口調であった。
聞いているレイブもどこか楽しい気分を感じたが、多くの仲間に囲まれた彼等の姿に思いを馳せれば、これからスリーマンセルきりで旅を続ける事に一抹の寂しさをも同時に感じてしまうのであった。
その気持ちを見透かした訳でも無いだろうが、アスタロトがレイブを励ます様に告げたのである。
『それにお前達スリーマンセルの旅路は我のかつての仲間達と共に歩む道行きとなるであろうよ♪』
「えっ!」