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ゴォッ!
彼女は、足から炎を噴射し、コンクリートに若干の焦げ目を付けて高速で移動する。
「クソっ……! なんで『火炎放射』が……!」
「オラ!! 待ちなさい!!」
『火炎放射』と呼ばれる彼女は、二宮二乃。
異能が発現された世界、この大日本で国内二位の異能力を持つと呼ばれている少女である。
そんな二宮が追いかけているのは、銀行強盗だった。
人類に異能が発現し、同時に科学分野も飛躍的に向上、人類の異能に対応すべく、様々な技術革新により、世界は発展の一途を辿ったが、犯罪は無くならない。
自らの異能ならばその技術も掻い潜れる、そう信じる者の強行により、例年犯罪は増えるばかりだった。
それらを取り締まるのは、本来、異能警察庁、通称、異能警察のはずなのだが、銀行から逃げ出す際に、小さな女の子を蹴り飛ばした瞬間を二宮は見てしまい、怒り任せに犯人の追跡中なのであった。
「へへっ……これならあの火炎放射でも……!」
犯罪を犯すということは、異能があるということ。
そして、犯人は逃げ切れる自信があることになる。
そんな犯人の異能は『透明化』。
二宮も、角を曲がった先に居るはずの犯人の姿がなく、困惑した上で、「それなら……!」と、遙か上空まで炎を放出して飛び上がった。
「上から探しても無駄だっつーの」
ほくそ笑む犯人が、死角に隠れて逃げようとした際、一人の男とぶつかる。
「あっ、すみません…。あの、銀行強盗さん……ですよね?」
「あ……!? なんだ……お前は……!」
「僕は、異能探偵局から貴方を捕まえるように言われて来ました。行方行秋と申します。申し訳ないのですが、身柄の拘束をさせて頂いても宜しいでしょうか?」
行方は、ぺこぺこと犯人にお辞儀をすると、強引に犯人を取り押さえる訳でもなく、ただ微笑んだ。
「ふっ、ふざけんな! 誰が捕まるかよ!!」
犯人は勢いよく行方を吹き飛ばすと、そのまま駆けて行ってしまった。
「ハァ……吹き飛ばさなくてもいいのに……」
そして、誇りを払うと行方は一通の電話を入れる。
「あ、すみません。犯人と接触したんですけど、やっぱり逃げられちゃいました。まあ、多分予想通りかと。はい、じゃあよろしくお願いします」
電話を切ると、行方は犯人の方へ歩いて向かった。
「ここまで来れば安心だ……! ふはは……! あのNo.2の火炎放射だって振り切れるんだ俺の力なら……!!」
人気のない高層の駐車場、四階に、男は仲間たちと待ち合わせしていたのだ。
そして、一台の車の音が鳴り響く。
「よし、来たな……!」
その時、犯人を囲う二人の姿が現れる。
「「 犯人、追い詰めた……! 」」
赤いショートカットに、汗を滴らせる二宮二乃。
そして、茶髪の短髪にコートを羽織る行方行秋。
「お前らか! どうやってこの場所まで辿り着いたかは分からないが、もうタイムアップだ! 俺の仲間がやって来る! 俺はもう車に飛び乗るだけだ!」
高らかに笑う犯人に、二宮は容赦なく飛び込む。
「逃すわけ……ないでしょ……!!」
「コイツ……! 車で轢いてやるぞ!!」
コトコト、と、喧騒の中、小さな足音が鳴り響く。
「あー、ちょっといいですか」
「お前……!」
「アンタは……!?」
「お嬢さん、懸命なのはいいけど、私利私欲での異能の使用は刑罰の対象になる。あとは任せてよ」
「ハァ!? 私は犯人を捕まえるから行使にはならない! そういうアンタは何者なの!?」
行方は、強引に犯人と二宮の腕を抑える。
「僕は、異能探偵局から来た行方行秋。無能力者です」
異能探偵局 始