テラーノベル
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あいつのことを『好きだ』と思ったのがいつだったかなんて、もう覚えていない。
それくらい前のことだった。
オーディションで太智と一緒に受かって事務所に入って、あいつと出会った。
初めてあいつをみたときに単純に『かっこいい人だな』と思った。
そこから一緒に過ごすようになって、中学生みたいにふざけるくせに真面目過ぎるくらい真面目で、こっちが心配になるくらいストイックで、同じグループで活動するようになってからは俺たちメンバーのことを誰よりも大切にして守ってくれようとする奴だということに気付いて。
そんなの好きになるでしょ。男同士とか関係なしにさ。
俺はもともと性格が内向的で友達も少なかったから女の子と会話するなんてことはほとんどなかったし、小6で事務所に入ったこともあって恋愛なんてしたことなかった。
つまり俺の初恋はあいつなのである。
俺は好きになったら一途なようで、いままであいつ以外に好きになる奴どころか気になる奴すらいない。
そんなあいつは今日も俺の目の前でメンバーとアホなことをしてふざけている。
ー控室
太「はやとー‼小指折るやつ、もう一回見せて!なかなかうまくできへんねん!」
勇「はいはい笑。っつーか、だいちゃんドラマも忙しくて暇な時間ないくせにまだ小指折るやつやってんの⁉笑」
舜「ほんまに生まれたてすぎるなぁ笑」
ソファを挟んで斜め向かいに座るあいつ。
両隣に太智と舜太が座っていて、俺の隣には柔太郎。
なんだか最近ナイーブ気味な俺は、あいつが好きなのに、好きが故にあいつの声が聞きたくなくてイヤフォンをして音量を上げて、声をシャッドダウンすることにした。
~♪
“いつになったら新しい人と 恋に落ちれるだろうか”
聞こえてくるのは以前カバーさせていただいた曲。
別に俺はあいつと恋人でもなかったし、勝手に俺が好きになっただけなのに、何故か歌詞が今の俺の気持ちにリンクしてしまって目が熱くなってくる感覚がした。
仁『っ…、ふぅ…。』
みんなに聞こえないように、バレないようにどうにか気持ちを逃そうとするが難しくて。
すると、
いきなり片耳のイヤフォンが外れて、そこに優しい隣の奴の声が聞こえてきた。
柔「…仁ちゃん、ちょっと俺と外に一緒に行ってくれない?飲み物買いに行こ。」
仁『…え?』
柔「決まり。ね?」
そう俺に言うと、
柔「みんなー、俺と仁ちゃん、ちょっと飲み物買いに行ってくるー。なんか飲みたいのある人いる?」
太「マジで⁉あんがと!俺はねー、ケバブ!」
舜「いや、飲み物っていうてるやんか!笑」
柔「わかったー、じゃあプロテインねー。」
太「なんでなん⁉嬉しいけど!」
舜「嬉しいんかい!笑」
その会話を聞きながら、とりあえず鞄に入れている財布を取りに行く。
鞄の中から財布を取ろうとしたとき、背後から腕を掴まれて振り向くと、今一番近くに来てほしくて、そして、一番近くに来てほしくないあいつが心配そうな顔をして俺のことを真っすぐに見ていた。
勇「仁人、お前、なんかあった?」
柔太郎ほどではないがこいつも人の心の機微によく気付く奴だから、俺がナイーブになっていることにも気付いているのだろう。いつもならこいつから心配してもらえたら嬉しいのに、今はただただ苦痛だった。
仁『…何もないよ。勇斗は何か飲みたいのある?』
できるだけ平然を装って返事をする。なのにこいつは俺の返事に納得いかなかったのか、腕を離そうとしてくれない。
勇「はぐらかすなって。何もない顔じゃないだろ。何があった?」
もうやめてくれ。俺に触れないでくれ。これ以上お前に優しくされたら泣きそうになってしまいそうだから。
勇「なぁ、じんっ」
柔「仁ちゃん、行くよー」
『あっ、これ泣くな』と思ったその時。後ろから俺の両肩を掴んでさりげなく俺の腕から勇斗の手が離れるようにして、俺の顔が見えないようにわざと俺に密着した柔太郎は「はやちゃんも、飲み物何がいいか俺に連絡いれといてー。じゃあ行ってくるね」と、勇斗がこれ以上何も言えないようにして俺のことを部屋から連れ出してくれた。
仁『…、じゅうたろう、』
柔「仁ちゃん、よく頑張ったね。もうちょっとで人気ないところにつくからあと少し我慢して」
普段は俺にだけ強くあたるくせに、俺の手を引きながら前を歩いているこいつは本当に優しすぎるくらいに優しい。
その優しさが今の俺には心地よくて、温かかった。
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#ご本人様には関係ありません
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