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誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第59話 〚甘い選択肢の中で〛(全体)
《キッチン・ノア》を出る頃には、
全員しっかり満腹になっていた。
「次、どうする?」
玲央が聞くと、
「決まってるでしょ」
えまがにっと笑う。
「ハロウィン用のお菓子!」
そのまま向かったのは、
モールの一角にあるお菓子屋
《スイート・パレット》。
壁一面に並ぶ、色とりどりのお菓子に
入った瞬間、女子たちのテンションが一気に上がる。
「これ可愛くない?」
「個包装の方がいいよね」
「量多いのにしよ!」
えま、しおり、みさと、りあは
迷いなくカゴに放り込んでいく。
一方——
澪は棚の前で立ち止まっていた。
(クッキー……チョコ……キャンディ……)
どれも良さそうで、
どれも決めきれない。
「澪、まだ決まらないの?」
しおりが振り返る。
「……うん、もう少し見る」
その間にも、
女子たちのカゴはどんどんいっぱいになっていく。
その少し後ろで、
海翔はふらっと別の棚に目を向け——
「あ」
手に取ったのは、
大きな袋の綿飴。
「それ、珍しくない?」
玲央が言う。
海翔は少し照れたように笑って、
そのまま澪の方へ近づいた。
「澪、綿飴好き?」
澪は一瞬きょとんとしてから、
小さく頷く。
「……好き」
「じゃあ、これ入れよ」
海翔は自然にカゴに入れた。
「海翔が綿飴好きなの、意外」
えまが言うと、
「見た目甘党じゃないよね」
みさとも笑う。
「昔から好きなんだよ」
海翔は肩をすくめた。
(意外、って思われるのも悪くない)
澪は綿飴の袋を見て、
ほんの少し口元を緩めた。
結局、澪は
えまたちが選んだお菓子に便乗する形で納得。
会計を済ませ、
袋を分け合って持つ。
自動ドアを抜けると、
夕方の空気がひんやりしていた。
「いっぱい買ったね」
りあが言う。
「ハロウィンだからね」
えまが満足そうに頷く。
ショッピングモールを出て、
7人は並んで歩き出す。
袋の中で、
綿飴がふわりと揺れた。
その甘さみたいに、
この時間も——
静かに、やさしく続いていた。