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10
#シングルマザー
水羽凛
174
#異世界転移
花月夜れん
2,595
フィオレ
86
6 ◇ネジが10本くらい抜けてる女
「ちょっとぉ……冷たいんじゃない? 私、あなたのことをここでずっと
待ってんだから、話ぐらい聞いてくれてもいいんじゃない?」
おいおい、待っててくれなんてこちらからお願いしたわけじゃなし、
ほんとに身勝手な人だ。
それに直の友達でもない俺に一体どんな話があるっていうんだよ。
時間もすでに22:00近くで、うんざりだ。
しかし、だからといって話を聞いてほしいと言われては無碍にもできず、
俺は仕方なく返事をした。
「あっ、もうクタクタでお腹も空いてたものですから、つい早く家に帰りたくて……
足を止めずに失礼しました。で、お話というのは?」
「あら、ごめんなさい。
私ったらつい話を聞いてほしくて強い口調になってしまって。
あのね、また休日の午後にでもマッサージをしに来てくれたらうれしいなって……
それをお伝えしたかったのよ。早速明日か明後日にでもどうかしら?」
「あー、お誘いありがとうございます。
でも、うちも住宅ローン抱えてるのでサロンに通うというのは
正直きついんですよね。
どなたか懐に余裕のある人を誘われては如何ですか。
折角なのですが、申し訳ありません」
「何よ、この甲斐性なし! しょうがないわね、半額にしてあげるわ。
どう?」
「いえ、遠慮させてもらいますよ。
甲斐性なしを相手にしてもしようがないでしょ。それじゃ」
とんでもなくネジが10本くらい抜けてる女がくだらない提案をしてくるから、
頭が痛くなってきた。
早く家に帰って圭子と未紗の顔を見て癒されたい。
……と、しみじみ思いつつエレベーターのボタンに手を掛けたその時だった。
後ろから彼女が言い放つ。
「あの日、何があったのか、圭子に言ってやる。
何もなかったなんて言い訳は通用しないんだから」
彼女が脅しの台詞を吐き続けている間にエレベーターが1階に降りて来た。
扉が開くと俺は素早く乗り込んだ。
そしてそのあと、彼女が一緒に乗り込んできやしまいかと冷や冷やしながらも
すぐに開閉ボタンを押した。
ドアが閉まり始めたときに、彼女の最後の脅し文句を聞くこととなる。
「ペットカメラに部屋の様子がバッチリ映ってるのよ」
扉が閉まる直前に捨て台詞を吐く彼女の顔が視界に入ってきたのだが、
平素の見た目美しいと自他共に表現されているその顔は、俺にはとても醜く
おぞましいものとして映った。
それにしても余りに用意周到な女の計略に愕然とするばかり。
エレベーターを降りると数メートル先にはいつものように自宅の灯りが見えた。
ほっとしつつも、今日はやけに遠くに感じてしまう。
そして、様々な出来事それに伴う己の心情などが、一挙に俺の脳内に
洪水のように押し寄せてくるのだった。
7 ◇誤算
大抵の男たちは最初の誘いは勿論のこと、二度目の誘いにだって自らチャンスが
あればとばかりにノリノリでホイホイ乗ってくるのが定番だ。
そこには多少の金がかかっても、ただのマッサージ料金でアロママッサージ付の
本番ありきという付加価値が付いているのだ。
物販で例えるならば、ノベルティが付いているのと同じになる。
しかも、密室でマッサージをしているだけなのだから、妻たちから風俗に
行ったとかで咎められるリスクも少ない。
密室にいるふたりが口を噤んでいれば、推測の域を出ず言い逃れが容易い。
マッサージサロンを初めてまだ日は浅いが、大体の顧客たちは鼻の下を伸ばし
有難がる。
それなのに圭子の旦那ときたら、本来柔和でやさし気な男の癖して、私からの甘い誘いに
毅然とした態度で乗ってきやしない。
だから、つい普段なら使わないようなエゲツない物言いになってしまった。
そして焦りから、半額にしてあげるから来いと情けない言葉を続けてしまった。
それにしても、そこまで私に言わせておきながら彼はあくまでも毅然とした
態度を崩さず『遠慮させてもらいます』と言い放った。
よほど圭子のことが怖いのか、もしくはそれほどまでに圭子との今の暮らしが
大切なのか。
そう自分で無意味な自問自答するも……だが、そんなこと二択を問わずとも
後者であることは明白で淳子自身分かっている。
分かっているが認めたくない気持ちが敢えて二択というものを絞り出したに
過ぎない。
余りに自分に靡こうとしない相手に焦れて、あの日のことを圭子に言ってやる
などと脅したものの、この時の淳子は、そこまでしようとは考えていなかった。
8 ◇太客をGetしたい女
自分の交友関係において性格の破綻している人間が多い中、
圭子は真人間で誠実な人物である
彼女に対して嫉妬心はあるものの同じマンション内で夫も子もいない中、
唯一会えば気楽に話の出来る人間なのだ。
だから、簡単にその関係を壊したいわけではない。
それならその友人の旦那にどうして手を出したりするのか?
そこが複雑な女心で、一方で匠平が自分に靡けば圭子の方を切るのは
構わないという考えも持っているのである。
淳子という人間はどこまでも自分本位で視野の狭い人間であった。
圭子への嫉妬や匠平自身に惹かれるものがあることの他に、
匠平を誘う理由はもうひとつある。
住宅ローンが重荷で本当に返済が苦しく、困っているという問題を
抱えていたのである。
淳子は圭子が考えたような、例えば住宅ローンに困った場合、住んでいる分譲を
賃貸に出し自分は安い賃貸住宅に移りその差額分で凌いでいくというような発想は
微塵もなかった。
高級マンションに暮らす優雅な自分、自身もそうだが人からもそう見られたい
という欲求が強すぎた。
今更、マンションにせよアパートにせよ安い賃貸に入居するなど
真っ平ごめんだった。
兎に角、現状を打破するには太客をGetすること、これを目標に職場である
クラブでも、またアロママッサージサロンでも顧客の中から探し出そうと必死で、
この時の淳子の頭の中は、そのようなことでいっぱいだった。
AI自作イラスト 小泉淳子
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