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そらとの部屋のドアが閉まった瞬間、さっきまで車内でギリギリ保っていた理性が、音を立てて崩れていくのがわかった。
「……座れ」
「え、なんでそんな命令口調なんよ」
「いいけん座れ」
そらとの声が低くて、逆らえない空気にまなみはおとなしくソファに腰掛けた。
目の前に立つそらとは腕を組んで見下ろしていて、その視線がやけに熱い。
「さっきの奴のLINE、ブロックしとけ」
「え、もう?!」
「当たり前やろ。おれ以外に笑うな」
「……え、なにそれ」
「おれ以外に笑うん禁止」
「……じゃあ、そらとにはいっぱい笑っていいん?」
「……は?」
「んふふ、笑うね」
無自覚にあざといその言葉に、そらとは大きく息を吐いた。
「……ほんま、もう無理」
次の瞬間、そらとはまなみの腰を引き寄せ、そのままソファに押し倒した。
体温が一気に重なる。
見下ろすそらとの目は、今まで見たことがないくらい真剣で、熱を帯びていた。
「ちょ、そらと!?」
「煽っとんやろ」
「ち、違うよ……!」
「違わん。おれのこと、こんなんさせとる時点で煽っとる」
低く囁く声に、鼓動がうるさいくらい跳ねた。
まなみは視線を逸らすけど、そらとの手が頬を掴んで顔を戻させる。
「……おれ見ろ」
「……っ」
「今更逃げんなよ」
頬に触れる指が熱い。
呼吸が近すぎて、息をするのも忘れそうになる。
しばらく見つめ合ったあと、そらとはゆっくりと顔を近づける。
唇が触れる寸前で、ふっと笑った。
「……お前ほんま、反則や」
「……そ、そらとも、ね」
「は?」
「そらとも……反則」
言い終わらないうちに、柔らかい感触が重なった。
一瞬で視界が真っ白になる。
「……っん……」
「声、我慢せんでよか」
「な、なん言いよるん……っ」
「おれにだけ聞かせろって言いよるん」
そらとの吐息が耳元にかかるたび、身体の奥まで熱が走る。
幼なじみとして長年一緒に過ごしてきたのに、
こんなに近くて、こんなに重なっているのは初めてだった。
どれくらいそうしていたか、わからない。
やがてそらとは額をまなみの肩に落とし、小さく息を吐いた。
「……まなみ」
「……ん?」
「……もう、戻れんぞ」
「……わかっとるよ」
その言葉に、そらとの瞳が揺れた。
次の瞬間、再び強く抱き寄せられる。
「おれ、今日お前のこと離さんけん」
「……離さんで」
小さな声でそう返したら、
そらとの腕の力がさらに強くなった。