犬飼が天王寺組の刺客、苅米に襲われる。
「俺は柳葉刀の皆伝免許保持者や、犬飼、踏み台になってもらうでぇ!」
「うるせぇ!テメェみたいな外道は軟体動物にでもなっとけや!」
ついに天王寺組城戸派との戦争が始まる…。
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俺の名前は久我虎徹。
「汚ねえ手使いやがって、そんなにシマが欲しいのか…外道が!」
「ヤクザはシマの取り合いや。平和ボケしとる方が悪いんじゃ」
天王寺組の刺客、韮沢と相対する武闘派の極道だ。
激化の一途を辿る、京極組と天王寺組による『極王戦争』。
「何かしら…痛いわ…」
それは高砂の兄貴が街頭で奇襲を受けたことから始まった。
この犯人を天王寺組だと嗅ぎつけた俺たちは村雨町にある奴らの東京支部を訪問。
「悪いけど、正当防衛や。死んでください」
「クソッタレがぁぁあ!」
その時仙石の兄貴が怒髪天をつく。
「どこが正当防衛だ!てめぇらみたいなセンスのない奴は死んどけ!」
「ウギャァァァァア!?」
たった一人で支部を壊滅させたのだ。
しかし奴らが高砂の兄貴を襲ったという明確な証拠はない…
「これは許せんなあ。戦争や、兵隊送らなあかんなあ」
東京支部壊滅を関東侵攻の大義名分とされたのだ。
高砂の兄貴襲撃の証拠がなければ、京極組は仁義外れ同然となってしまう。
そこで一条の兄貴が大阪の天王寺組本部へ、証拠を掴みに行った。
「天王寺組の狙いは京極組ですわ。あそこ潰して関東制覇しよ思てますねん」
「やっぱりてめえら天王寺組だったのか…、よくも高砂の兄貴を襲ってくれたなクソ野郎が… 大阪で、東西決裂の、大暴れ〜」
「これが栗林組、そしてウチの怒りじゃあ!」
「ゴバアアアアアア!」
高砂の兄貴の件が、天王寺組によるものだという確かな証拠を手に入れたのだ。
だが、天王寺組の論理はこうだ。
「音声なんかなんぼでも捏造できる。ウチがやったって認めんかったらええだけの話や。アイツらはなんの罪もない天王寺組の支部で暴れた大罪人や…、さあ関東侵攻や」
奴らの悲願、関東侵攻に向けて若頭の大嶽が動き出す。
そして天王寺組の二大武闘派集団の一つ、城戸派に京極組制圧の指示が下った。
「東京の皆さん邪魔すんでー!」
「邪魔すんねやったら、帰ってください」
「ほな帰ろか」
「いや、帰らんといてください!」
それを受けて奴らは村雨町に支部を建てやがった。
その後、大将の城戸が対京極組に向けての方針を発表する。
「組長の五十嵐、若頭の大園。そして一条と仙石は無論殺す、というのが本部からの指示や」
『はい!』
「あとは久我虎徹…コイツも殺る。末端と上層部を繋いでる存在や。他も末端でなければ襲え、との事や」
「ほんなら城戸の兄貴、俺はその久我って奴をやってきますわ」
その時名乗りをあげたのは、チャカと日本刀の二刀流、韮沢だ。
「韮沢…お前楽なとこ行くなぁ。それやったら俺が一条とかなってまうやんか」
一条の兄貴の名前を言った瞬間、城戸はどこか複雑そうな顔をする。
だがすぐに、
「まあええわ、行ってき」
と言った。
一方俺たちの方も、親父からこの戦争の方針が出た。
「いいかお前ら。今回の戦争は侵略者を打ち負かす、いわば防衛戦争だ。自分たちのシマを守るためにも、絶対に負けられん。目的は相手の中枢を破壊して、戦争を出来なくすることだ」
この戦争の中心人物に関して、京極組は情報を手に入れていた。
「狙いは関東侵攻を裏で糸引いている、大嶽と高見沢!奴らは大阪にいる!そして東京に入ってきた奴らは…容赦無く殺せ」
「はい、ウチを舐めたら何人たりとも死ぬ…、それを味わせます」
親父の指示は天王寺組壊滅ではなく、関東侵攻の計画を叩き潰すことだった。
一条の兄貴が大阪から帰ってきて一週間ぐらい経った。
「虎徹ぅ、天王寺組の奴らは絶対東京に紛れ込んでるはずだ」
「一条の兄貴、もう少し殺気を引っ込めてください。ビビって、カタギが距離取ってます…」
組は厳戒態勢…、一条の兄貴ですら殺気爆発だ。
だがいまだにシマ内に天王寺組の影は見えないでいた。
「京極組のシノギは抗争中こそ、効率よくやらないとマズい…。横っ面を叩かれちまう」
守代を貰えなければ、組の財布は干上がる。
戦争中でも、並行するのが絶対命題だ。
だがこの時、奴らは着々と準備を進めていたのだ。
「城戸の兄貴、これが黒焉街の地図です。各構成員のシノギルートも描いてます」
「おお…韮沢、苅米やるのう。じゃあ、いっぱい地雷埋めたらええんちゃう?」
「そんなんしたら、一般人を巻き込んでまいます。あとは見張って襲撃でもかけてみますわ」
「おお早速黒焉街が血の海に…。今年は海水浴行かれへんかったから、ちょうどええわ」
「50メートル泳げるようにしときます」
奴らの影が見えなかったのは、隠密に俺たちのことを調査していたからだった。
そんなことはつゆ知らず、俺たちは警戒しつつもシマの見回りを行っていた。
俺や、同期の犬飼もそれぞれ担当のルートを巡回する。
そして、その帰りのことだ。俺は気づいていなかった。
「お、久我を見つけた。ついてるわ俺」
「こっちは犬飼を見つけましたわ」
「じゃ、別々で襲うか」
「早速死んでもらいましょ」
天王寺組城戸派、韮沢と苅米に建物の中から見張られていたことを…。
そして、韮沢は俺を、苅米は犬飼を殺しに向かう。
「おお、おったおった。死ぬ寸前までお勤めご苦労さんやわぁ」
奴は陰に身を潜めて、じっと俺のことを狙っていたんだ。
そして奴はチャカの照準を俺の頭に合わせる。
「(悪いけど遺言はなしや。出世の足がかりになってもらうでぇ)」
だが…今の俺は感覚が研ぎ澄まされている。
「(殺気だ…!後ろからだ!)」
奴は気配も殺気も完全に消していたが、極限まで集中すれば、どうってことなかった。
おそらく俺狙いの襲撃…意表をつくためにこっちが先手を取る!
気配がするのは…右あたり!
「頭に鉛でも入れとけ!」
バァン!!
俺は一瞬振り向き、それと同時に狙った方向へ早撃ちをする。
「うおお!?(コイツ、俺に気づいた!?完全に殺気ごと消してたはずやのに!)」
「今の俺は覚醒してんだよ…、てめえぐらいどうってことねぇ」
そう言った俺は懐からドスを抜いた。
「襲撃なんてことしやがって…。返り討ちにしてやるよ」
「あほか、死ぬんはお前や…久我虎徹」
一方、犬飼の方も苅米の襲撃を受けていた。
「犬飼、早速やけど死んでえな!」
「おおっ!!」
犬飼は先手を仕掛けられるも、間一髪で柳葉刀による斬撃をかわす。
犬飼の獲物はスレッジハンマー。
怪力である犬飼が使えば、人体の骨なんてすぐに骨折するのではないかというレベルだ。
「うおらぁ!軟体動物になっとけやぁぁ!!」
「あっぶなぁぁあ!(コイツのパワー、普通やない…一発もらえば死ぬな)」
だが、振り終わりを狙われやすくなるという弱点もある…。
「でも、振り終わりに隙ありや!」
「クソが!」
ザシュッ
振り終わりのところを狙われた犬飼はかわすことができず、斬撃を片方の肩に喰らってしまう。
しかし…
「う…うおっ!?(なんや!?抜けへん!)」
「痛えな、この野郎…だが不意打ちじゃねえ限り、俺は倒れねぇ」
犬飼の筋肉はこれでもかというほど分厚い…。
海瀬の兄貴レベルのタフネスも持っているんだ。
そして犬飼が、肩に柳葉刀が刺さったままハンマーを振りかぶる!
「胴体もらったぁああ!」「クソッタレぇえ!」
その薙ぎは苅米の胴体にクリーンヒットした…。
苅米は吹き飛び、力なく倒れ伏す。
「ゴブッ…(あかんわ…骨が内臓に刺さりすぎてる)」
「おい、誰の差金だ?関西弁なんだから、天王寺組関連か?」
「ガバ…これだけ、言うわ、…俺の兄貴分が…グブッ…あんたの同期を、襲っ、とうで…」
その言葉を最後に苅米は死んだ。
「待てよ…てことは、久我が…!」
犬飼は俺が襲われてることを察した。
「ダメだ、ここからだと距離がある…!あ!」
一方、俺と韮沢の戦いは長期戦にまでもつれ込んでいた。
「クソッタレ…舎弟分でもこんなにクソ強いのかよ!」
「どんなに上手に隠れても♩」
絶対圧勝できる、と思っていた俺が間違いだった。
奴は切り傷が少し見えるぐらいで、俺は全身ズタボロにまで追い込まれていた。今はその場にあった車の陰に隠れているところだ。
「(まずい、早く打開策を見つけねぇと…。血を流しすぎてる、このままだと本当にやばい!)」
「久我はん、よう粘ったわ。でも、京極の天才…大したことなかったわ」
奴は勝利を確信したんだろう、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
その時…通りに一台のタクシーがやってきたんだ。
なんの変哲もないタクシー…
「早よいけボケ」
韮沢はやり過ごすつもりでいた。
だが…それが大きな間違いだったのだ。
「オラァァアア!相棒に何してくれとんじゃぁぁぁあ!」
なんと運転席に乗っていたのは、犬飼!
「なぁ、犬飼!?苅米が襲っとったんちゃうんか!?」
これは奴にとっては予想もしていないことだった。
だが…そっちに気を取られれば…
「おい、どこ見てんだクソ野郎」
俺は車から顔を出し、チャカの照準を合わせていた。
「なぁ!?」
韮沢も一流…俺の殺気に気づいた。
そして俺は奴の脳天目掛けてチャカを弾く。
「オラよ!」
「当たるかぁあ!」
しかし奴は間一髪でそれをかわしやがった。
まあ…そっちに避けてもらうのが…
「うお…あ…」
狙いだったんだけどな。
次の瞬間
「うぉおおおお!死ねやぁああ!!」
「ゴォオオオオ!?」
俺のチャカに気を取られ、タクシーへの対応ができなかった韮沢は、モロに轢かれた。
「ぐぉぉお…(あかん…内臓が痙攣しよる… )」
「じゃあな、あんためちゃくちゃ強かったぜ」
「クソおおおお!!」
そのまま俺は、奴に鉛をひたすら撃ち込んだ。
数分経つと、奴の息の根が止まった。
犬飼がタクシーから降りる。
「久我!大丈夫か!? 」
「どう見ても大丈夫じゃねぇ…お前も傷あんじゃねえか、急いで闇医者行くぞ」
幸い、犬飼は入院ほどの怪我ではなかった。
だが、俺は片足をチャカで撃ち抜かれたりと重症なため一日入院、当分は後方支援することになった。
「韮沢って奴はそんなに強かったのか?」
「ええ、鍛え抜かれている感じがしました。犬飼が駆けつけてなかったら、俺は今日が命日でした 」
天王寺組城戸派…幹部クラスでなくてもあの実力だ。この戦争、一筋縄では行かない。
俺は改めて、命を懸けて戦おうと思った。
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次回、守若の兄貴が活躍します(もしかしたら佐古かも?)