テラーノベル
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翌朝、シャオロンはベッドで目覚めてすぐに異変に気づいた。
「あれ……?」
いつものように腕を伸ばして探ろうとした瞬間、自分が寝ている空間の狭さに違和感を覚えた。枕元には柔らかなウサギのぬいぐるみ。クローゼットには新品の衣類が所狭しと吊り下げられている。どれもシャオロンが好きそうなデザインばかりだ。
(昨日までこんなのなかったはずやのに……)
ドアが静かに開く音がした。振り向くと、トレイを持ったロボロの姿があった。雑面はつけておらず、代わりに真新しいエプロンをつけている。
「おはよう」
彼が微笑みかける。その優しさがあまりにも眩しくて、シャオロンは思わず目を逸らした。
「あの……これ全部……」
「うん、プレゼント」ロボロは当たり前のように答えた。「もう離さないって決めたからね」
シャオロンの頬が赤くなる。嬉しさよりも混乱の方が大きかった。
「食事はできたよ。あとシャワー浴びたら学校行こうか」
「え? 一緒に行くん?」
「当然でしょ。昨日も言ったじゃん」ロボロが真面目な顔で雑面を整え直す。「もう二度と離れないって」
* * *
授業中もロボロの過保護ぶりは続いた。廊下ですれ違うだけで彼は必ず振り返り、スマホをチェックするとシャオロンの居場所通知が届いていた。
「お前のストーカー行為やんけ!」
休み時間に思わず抗議すると、ロボロは眉をひそめた。
「心配なんだよ。だってお前、すぐ迷子になるし」
「小学生ちゃうぞ!」
「でも本当に危なっかしいし」彼が突然シャオロンの手を掴んだ。「こんな可愛い顔してるんだから」
教室中に注目が集まる。慌てて手を振り払うと、ロボロは少し傷ついた表情を見せた。
* * *
放課後、ついに我慢の限界がきた。シャオロンは帰り道で突然立ち止まった。
「ロボロ、正直迷惑なんやけど」
「え?」
「いちいち監視みたいなことされるのキライ。もっと普通にしてほしい」
「でも……」ロボロの声がかすれる。「お前を失うのが怖いんだ。あの別れ話の時みたいに……」
シャオロンの脳裏にあの日の記憶が蘇る。冷たく背を向けられた感触。でも今はそれ以上に強い感情が胸を占めていた。
「だからこそや!」
シャオロンがロボロの胸倉を掴んだ。「束縛されて、自由奪われて、それで幸せになれんのか!? お前は俺の何が見えてるん!?」
初めて見るシャオロンの激昂に、ロボロは息を詰まらせた。
「ごめん……でも、どうすればいいかわからんから、」
その弱々しい声に、シャオロンの中で何かが砕ける音がした。
「じゃあ俺が教えてやる」彼は深呼吸をして続けた。「まず自分の時間を大事にする。次にお互いを尊重する。最後に――」
シャオロンが思い切ってロボロの手を取った。
「ちゃんと二人で向き合うこと。わかったか?」
夕陽に照らされたロボロの瞳が揺れた。
「うん……」
* * *
その夜、ベッドに入るとロボロが恐る恐る尋ねた。
「今日のこと……おこっt?」
「怒ってるわけやないけど」シャオロンが小さく笑った。「正直、お前がそこまで依存症になってるとは思わんかったわ」
「治すよ、これから」ロボロが布団をかけ直してくれる。「でも一つだけお願いしてもいい?」
「何?」
「明日の朝、起こしてくれないかな」
その些細な願いが、シャオロンの胸を暖かくした。
「もちろん」
初めて自分からロボロの腕に頭を預ける。
この夜、二人は同じ夢を見た。もう一度始められる関係の輪郭を確かめるような、穏やかな夢を。
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