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『 エリート 』

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『 エリート 』

1 - # 00 . 僕が世界で一番 、

♥

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2024年07月05日

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『 エリート 』



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ボクはママに望まれた人間に育った


いや、そういう風に育てられた


「 言うこと聞かなきゃいけません 」って

まるで暗示のように言われ続けた


この言葉を聞いたら僕は

頭がぼーっとしてきて机に向かう


毎日学校が終わってから三時間の勉強と

二時間の筋トレ等の運動


テストは全ての教科で一位


一位を取れないテストがあれば

ママは僕の髪を引っ張って前後に揺らす


それは痛くて嫌だから

ボクは必死に勉強して一位を取る


それでママが笑ってくれるなら

ボクはそれでいいんだ


でもパパは「 大人も大体間違えてる 」

なんてこと言ってた


だから疑ってたんだけど

やっぱりあの言葉には勝てなくて

抵抗しても勉強机に向かう毎日


誕生日の時にはたくさん

「 おめでとう 」って言ってくれて

ボクはそれに応えるように

「 ありがと 」を絞り出す。


そうしないと、

また引っ張られちゃうかもだからね


痛いのは嫌なんだ



学校では生徒会長で

みんなから頼られる優等生。



他のみんなは常識も良識も

仕込まれてないようなバカだから

ボクが引っ張っていかないとな



学校の中ではボクが一番の優等生だ。



けどそれを鼻にかけたりしないし

態度に出したりもしない


それこそバカのすることで

常識外れだ


ボクはそんな人間じゃないから

みんなと同じ立場で接するし

謙遜だってする


それがママの望む『 ボク 』だから


ボクはそれに頑張って応えて

頑張って結果を残してバカなことはしない


校内で制服を晒して動画を撮って

先輩の虎の威を借りて後ろで野次飛ばして

虚栄心だけは一人前にあって


偏差値の高い高校で

普通の人から羨ましがられるのに

バカなことして退学して

人生の先は真っ暗な人間に

先生は毎日悩んでた


先生は素晴らしい方々なのに

勝手なことして炎上して困らせて


許せなかった。


だからみんなのお手本になるために

ボクは生徒会長になって

髪も染めず、ピアスも開けず、

先生から毎日褒められていい感じ


でもその分、明るいはずの未来が

黒く染っていくような気がした


僕の未来は何かあるのかな、って


愛情に飼いならされて

僕はママに反抗する心が無くなって

僕の言の葉は枯れてしまった


ママが塵箱に捨ててしまった光は

何処にあるのかな


それを見つけたら僕はまた

ヒカリに包まれて過ごせるのかな


でも、もう忘れてしまえ


ボクがそんなの持ってたら

ママの望んだ人間になんてなれない


そんな時、一人の編入生が来た


前の学校ではテストは全科目一位で

運動もできる方だったらしい


だからその人に会ってみた



黄「 …君が編入生、ですか? 」



ボクは、にこやかな表情で近づいた


その時に目を閉じて笑っていたから

目を開けた時、びっくりした


ボクを軽蔑するような、同時に

心配するような顔で見てきたから


初めてそんな顔を向けられて

僕は少し戸惑ってしまう



黄「 どう、したんですか? 」


「 君からは昔の俺と同じ感じがする 」

「 自分を押し殺して親の期待に応える顔 」


黄「 …どう、して… 」


「 君、本当は勉強も運動もしたくないでしょ 」

「 もっと遊んだり音楽聴いたり作ったり 」

「 たくさん色んなことしたい、でしょ? 」



全てを見透かされてしまった。


ママにさえバレたことないボクの僕


ボクは、期待に応えたいし

あんなヤツらと同じになりたくないし

勉強も運動もしたい


でも、でも何か足りなかった



いやそんなはず無い。



ボクはママの望んだ人間で

ちゃんと立派な優等生で

先生たちにも褒められて

いい感じのはず、だよね



黄「 …赤、くんですよね? 」


赤「 ” 赤 ” でいい 」

「 よろしくね、生徒会長 」


黄「 よろしくお願いします 」

「 いきなりなんですが、放課後… 」


赤「 なに?校舎裏呼び出し?笑 」


黄「 嫌なら別にいいですよ 」


赤「 いいよ。受けて立つ 」


黄「 殴ったりするつもりは無いですし、 」

「 僕はそういうことが苦手です 」


赤「 そんな風には、見えないけどなぁ 」

「 まぁいいや。また後で 」


黄「 えぇ。また後で 」



全部わかったような顔して

僕のこと何も知らないくせに

ズカズカと僕の中に入ってきて

本当に何なんだよ



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放課後の校舎裏。


部活をしている人の声が

響いて、よく聞こえてくる



黄「 ……… 」



僕は怒りが限界に達しそうだった


教室にいる時は常に笑顔を絶やさずに

一人だと思っている時も

笑ってはいないけど

怒ってもないような表情を作っていた


だからその笑顔が崩れそうだったんだ


全て、赤のせいで



赤「 すいません、遅れました 」


黄「 …っ゙、… 」



僕は人生で初めて人の胸ぐらを掴んだ


そして赤を壁に押しつけた



赤「 喧嘩、っすか? 」



赤は冷酷な表情と声色で

僕を睨みつけてきた


その瞬間、僕の怒りは頂点に達した



黄「 あなたに…あなたなんかに、ッ゙… 」

「 何がわかるって言うんですかッ゙!! 」


赤「 わかりますよ。少しは 」


黄「 あなたには到底わからないですよ…笑 」



怒りのあまり、笑いまでもが出てきて

僕は初めて僕の本音を人に言い明かした



黄「 僕は、ッ゙…母親がッ… 」

「 母親が望んだ人間になるために苦労してきたッ゙!! 」

「 今だって苦労してるんだッ゙…!! 」


赤「 それは昔の俺も同じです 」


黄「 …そんなはず無いッ゙… 」

「 ボクが学校内で…いや、… 」

「 世界で一番真面目なんだッッ゙!!! 」



ボクは世界で一番真面目で

しっかりしてて優等生で

常識人で、良識も仕込んでて

こんな苦労を誰かがわかるはずわけない


僕だけが抱え込んで、ボクだけが真面目で

僕だけが偉くて、ボクが正しい


ボク以外の人間は、ダメダメな人間で

ボクが引っ張っていくしかないんだ


それが正しい形なんだ



赤「 あなたの苦労は痛いほど分かる 」

「 俺も少し前まではそうだった 」



赤の表情を見ると、目元を真っ赤にして

目尻には涙が溜まっていた



赤「 俺は父親がうるさかった、 」

「 勉強も運動も人付き合いも、全て 」

「 けど母親が助けてくれた 」



僕の父親は気づいてくれないし

気づいたところできっと見て見ぬフリだ


争い事が嫌いな性格だし

母親の尻に敷かれてるような人だから



黄「 僕はきっと助けてもらえない、ッ゙… 」

「 赤には…助けてくれる人がいた… 」

「 …っそんなひと、僕にはッ゙…! 」



僕が赤の胸ぐらを掴んでいた手を緩めると

赤は僕の腕を掴んでこう言った



赤「 生徒会長は俺が助けるよ 」

「 時間がかかっても、絶対に。 」



強い目だった


僕じゃ敵わないような物凄く強い目


僕はこのまま赤に身を任せたかったけど

ボクがそれを許さなかった


それと同時にママの言葉が頭に浮かんだ



「 言うこと聞かなきゃいけません 」



僕は迷ったけど、ボクが

ダルいから考えるのをやめた


常識は守って、良識は仕込んで

優等生で過ごして、ママの波風を立てないで

勉強をして、運動もして、

場合によっては笑って



そんな日々で構わない。



そっちの方がきっとボクの為になるんだ


僕の為にはならなくても、きっと

いつか救ってくれる人がいるはずだから


だからボクは赤の手を振り払って

いつもの笑顔でこう言った



黄「 ありがとう。 」

「 けど、大丈夫だよ 」


赤「 …っ、… 」



この幸福感がいつか終わってしまっても

ボクはそれで構わないんだ


それが正しい選択だし

ママがきっと安心して喜ぶから



赤「 黄、くん… 」



見たことある顔だけど

別にいい


ボクには関係ない



赤「 …戻ってきてよ、っ… 」


黄「 ボクは何処にも行ってないよ 」



きっと今のボクが一番いい気分でいられる


赤が泣いてるのを見て

ボクの胸は締め付けられた気がしたけど

きっと気の所為だよね


でも泣いてみたいな


けど涙なんて出ないから

涙すら忘れてしまうくらい

今のボクは幸せなんだな


うん。やっぱり良い気分



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だれか、ぼくをみつけて。


たすけて。



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いつか、俺と同じあの子を救えたら

俺はきっと報われるんだろうな。


父さんが残した俺への呪いも

解けたりするのかな。



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るとさんの

『 エリート 』好きすぎるんですよね


ラスサビ前の

「 僕が世界で一番真面目真面目真面目真面目真面目真面目 」

って部分が一番好きです


そして自分はかなりの不真面目です



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