「ねぇ、しょっぴー」
「ん?」
「覚えてる?」
大好きで大好きで仕方ないしょっぴーに、まだ片想いをしていた頃のこと。
あの日、珍しく落ち込んでいるしょっぴーに、内緒話をするように耳打ちした。
「どんなしょっぴーも世界一かわいいよ」って。
しょっぴーは真っ赤になって、ちょっと困ったような顔をしていた。
この恋が報われるかなんてわからなかったけど、しょっぴーにはいつでも元気で、幸せでいて欲しかった。
俺にできる精一杯の励ましのつもりだった。
「いつだってからかってばっかのくせに、そういう時だけ格好良いことしやがって。あれはマジで良くなかった、マジ心臓に悪かった。」
「でも、ちょっと嬉しそうな顔してたよ?」
「るせ、、」
あの日、どうしようもなくヘコむことがあって、一人で膝を抱え込んでいたら、ラウールが俺に 「世界一かわいい」なんて言ってきた。
毎日ラウールから、好きって言われるような生活をしていた頃のことだった。
なんでそんなこと言ってくるのか、からかわれているんだろうと思っていた矢先、そんなことを言われたもんだから、心底驚いた。
それに、掠れ混じりのあいつの甘い声は、俺にラウールという人間を意識させるのに十分すぎるくらいの何かがあった。色気だとか、そんな安っぽいもんじゃない。
俺のことが世界で一番好きで、大切にさせて欲しいと言っているような、そんな響きだった。
それまでは、「好き」「付き合って」と言われても、俺みたいなのがコイツと一緒にいることなんかできないって思ってた。
でもその時、「コイツと幸せになりたいかもしれない」なんて気持ちが生まれて、簡単に揺らいでしまったことも、今思い返せばなんだか懐かしい。
あの時、声をかけてくれてありがとう、元気付けてくれてありがとう、ずっと忘れない。
なんて、思ってても絶対コイツには言ってやんねぇ。
「あの時は必死だったから言えたけど、今思い出すと照れるね」
思ったそのままを、しょっぴーに伝えた。
しょっぴーの好きが俺に出逢ってくれるまで、たくさん喧嘩もしたね。
好きになって欲しくて必死だった俺、好きになってくれなくても、せめてしょっぴーに幸せでいて欲しかった俺、その時の俺に伝えてあげなくちゃ。
「そのままで大丈夫」だよって。
「お前が好きになった」って言ってくれた時、本当に嬉しくて、信じられなくて、
「俺でいいの?」と聞くと、しょっぴーは目を逸らして
「お前がいい」と答えてくれた。
照れくさくて、嬉しくて、二人で笑い合った。
「そうだ、あの日はマジで驚いた」
「あの日?」
去年の俺の誕生日に、ちょうどパリでファッションショーに出ていたラウールが急に家を訪ねてきたことがあった。
「お前、なにしてんの!?今パリじゃなかった!?」
「これ渡したくて。今日はしょっぴーの誕生日だから、どうしても会いたかった。それにショー以外の時間は暇だから!」
とかなんとか言ってたけど、忙しい仕事の合間を縫って来てくれたんだろ?
俺を騙そうなんざ、百年早ぇわ。
「あの時は本当に必死だったんだよー!仕事とはいえ、しばらくの間遠距離になっちゃうし、まだ片想い中の頃だったし、、、一丁前に彼氏みたいなことして、かっこつけたかったんだもん!」
「はいはい、どうもね。」
なんて、俺の口からはいつも捻くれた言葉ばっかり出てくる。
でも、ちゃんと思ってるよ。
嬉しかった。ありがとう。
俺の気持ちは、あっちへ行ったり、こっちへ行ったり、逃げ出したり、遠回りばっかりしてた。
こんな俺より、もっと素直で可愛げのある奴の方がいいんじゃないかって悩む日もたくさんあった。
でも、そうやって一つ一つ大切に悩むことができたから、今、ラウールと過ごせる時間がある。
あの頃の俺に言ってやんないと。
「そのままでいい」って。
「しょっぴー、俺、絶対にしょっぴーを幸せにするから」
真面目くさった顔で、 そんなことを言うラウールの額を中指で弾いてやった。
十分幸せだよ、ばーか。
絶対離れてなんてやるもんか。好きにさせた責任取れ。
「あの時はすごくびっくりしたんだよ?」
「あ?」
「ほら!楽屋での待ち時間!」
しょっぴーとお付き合いできることになって、少し経った頃のこと。
しょっぴーは、突然メンバーのみんなに
「ラウールと付き合ってる」
って言ってくれた。
みんなには内緒にしたいかなと思ってたから、本当にびっくりした。
俺の好きに、しょっぴーの好きが出逢ってくれるまで、たくさんのことがあったね。
プリンの取り合い、仕事での衝突、伝わらないもどかしさ、だんだんと俺の気持ちを受け入れてくれるようになっていった時の高鳴り、その全てが俺にとって大事な思い出だよ。
あの日の俺たちに教えてあげよう。
「今のままで大丈夫」って。
「しょっぴー」
「ん?」
「大好きだよ」
「お、おれだって……」
「ん?なぁに?」
「っ、なんでもねぇ!!」
恥ずかしくて言葉にできなくても、しょっぴーの気持ち、ちゃんと伝わってるよ。
ありがとう。好きになってくれて。
なんだかくすぐったくて、笑っちゃうね。
お借りした楽曲
選んでくれてありがとう。/HoneyWorks 様
コメント
2件
素敵すぎた…🤦🏻♀️🤍💙