なんも変わらん、いつもと同じ、そんな毎日は、めっちゃ退屈やねん。
稽古場の端っこで小さくあくびをしていると、俺に声をかけてくれる子がいた。
「ねぇ、練習しないの?」
そう聞いてくれたその子は、大きな瞳で俺を見ていた。
「…ぁ、や、やる、やるて…」
「じゃあ一緒に頑張ろ」
「…ぉん…。」
それがめめと初めて会った日。退屈な日常が色付いた。
あれから、ずっと一緒に頑張ってきた。
辛い時も楽しい時も、ずっと二人で乗り越えてきた。
いつの間にか、どちらともなく惹かれあって、お互いに大事な存在になった。
めめが「特別」になって随分経った。
でも、いつも漠然とした疑問が心の中にある。
俺はめめといるの好きやし、いつだって新鮮な感じがすんねんけど、めめはどうなんやろ?
どんだけ特別なもんかて、見慣れてもうたら、全部おんなじに見える時あるやんか。
思わずため息をつく。
ネガティブになってもうても、たまにはええやん。それも俺や!
「誰か」の声が聞こえて、ちょっとだけ元気になる。
「いつも」の明るさ、「普段」の面白さで着飾った俺を全部脱ぎ捨てたら、ガチャガチャした五月蝿いもん、なんもかんも、全部どっか飛んで行った。
めめの瞳の中で、ずっと「俺らしさ」を探してる。
めめは、俺のどんなとこが好きなん?どんな時に俺といて楽しいって思ってくれるん?もっと好きになってほしい!!
ちょっと泣いてみたりして、かわいこぶってみたりしたら、めめはきゅんってしてくれんねやろか…?
でも、やっぱりそんな女々しいのは嫌いなんかな?
迷ってまう……。
めめの瞳に映ってる俺は、今、俺らしくいられてるんかな?
多分、かっこつけようとして、めめともっと近づきたくて、めめと過ごす夢みたいな毎日の中で、ずっと迷子になってる。
めめが好きそうな服、好きそうな話し方、好きそうな性格、目一杯綺麗ぶって微笑むけど、なんやぎこちなくて疲れる。こんな感じやあらへんわ、これやない。
「なんか今日の康二変じゃない?」
「そ、そんなことないで!?」
「そう? まぁ、悩んでばっかりでも、たまにはいんじゃない?悩んで見つかるもんもあるじゃん?」
俺はめめとのことで悩んでんのに!なんも知らんくせに!知ったような顔せんといて!
でも、そうやって、悩んで笑って、そのまんまの俺でいた時、めめと巡り合って、二人で恋に落ちたんよ。
めめの瞳に映る俺は、アリスみたいやなぁってたまに思うねん。
やって、めめとおると、なんもかんも全部不思議で楽しくて、想像つかんくて、ドキドキする。
それにめめの瞳の中で揺れてる俺は、いっつも子供みたいやねん。
俺の方が年上やのに、なんやめめの方がいつもクールで大人っぽくて、カッコよくて、俺は背伸びばっかり、めめに届きたくってしゃあないねん。
グダグタでふらふらの俺やけど、めめの隣におれんなら、なんも怖くない。
「康二、俺は元気で、いつも楽しそうなありのままの康二が好きだよ」
俺が悩んでんの気付いてたんかな?
急にそんなこと言われて、めちゃめちゃびっくりしたんやけど、途端に俺の心ん中には陽が差し込む。
嬉しい、幸せ、めめ好きや!
めめの瞳が映す世界で、いつだって俺らしくおりたい。
せや、俺は俺や。
めめが好きっ言ってくれた「俺」のままでええ、背伸びしたり、無理したり、そんなんする必要あらへん!
めめが見ててくれる俺、そいつはどんな姿をしてるんやろか。
いつだって「めめが好きな俺」になりたい。
どんな時でも「めめが愛してくれる俺」を探しとる。
たまに空回って、かわい子ぶって泣いてしまう時もあんねんけど、そんな時、めめは優しく抱き締めてくれる。全部受け止めてくれる。
めめの前で、これからも俺は俺らしくいられるんかな?
いてもええんかな?
そんなアホみたいな俺の質問に、
「いいよ。どんな康二も、俺はずっと見ていたい。」
って答えてくれた。
心の中が晴れ渡って、虹がかかる。
その大きな瞳で、俺を見つめてくれる時間がずっと続きますように。
お借りした楽曲
瞳の国のアリス/小倉 唯 様
コメント
1件
素敵…🖤🧡