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….まぁなんやかんやあって弦とタッグ組むことになったんだけど….
「…..なぁ弦、それ痛いだろ」
事情は分かったが、弦の体に無数に刻まれた生傷を見て見ぬふりはできなかった。
「うーん….痛くないことは無いけど…もう慣れたよ」
その言葉を聞き、俺は鼻で笑って弦にデコピンした。
「はっ、強がんじゃねーよっ!人が痛みに慣れることなんてそうそうないんだし、俺ン前で強がんの禁止な!これタッグ組む上でのルール!」
「強がらないことがルールって、赤峙にメリットがない」
….こいつぼんやりしてンのに頭かってぇ〜…
「メリットとかじゃねぇの!あんま1人で苦しまないでよ、こっちも辛くなる」
「……ん。」
無愛想な返事のように思えたが、意外にもその表情は穏やかで、目を輝かせながら微笑んでいた。
(面がいい。っつーかあんだけ人気者なんだから、こいつの顔にでも傷がついたら女子達倒れんじゃねーか?)
「…赤峙、そろそろ学校戻る?」
「だな!……あ!!!!!!!!!何ッで俺すぐ思いつかなかったんだろ!!弦、早く早く!!」
そう言って俺は弦の腕を掴んで学校に向かった。
あ、ちなみに俺らは同じクラスだ。
「ちょ、赤峙っ….待って待って」
(そうだ….今まで通り戦って弦の傷を増やさない方法があるじゃねぇか!!)
「っつーかお前スマホ触りながら歩くんじゃねぇよ!!」
___教室。
全力疾走で校舎へ戻ってきた俺らは肩で息をしながら教室のドアを開けた。
「すいません道に迷ってました!!!!!」
「…すいません」
俺らがそう挨拶をすると担任含めクラスメイトがこちらを向く。
「びっくりしたなぁもう、君たち初日から目つけられないようにね?」
比較的小柄で気が弱そうな先生がそう言う。
「すいません!!!!」
「….ッス」
「お前愛想ねェなぁ、こういう時は謝り続けたら許されんだから声張っとけ!!」
「いやあの聞こえてるからね?そういうの普通耳打ちで言わない?….まぁ危ない目にあってなくてよかったよ、自己紹介終わってないの君たちだけだからこの場でしちゃいな。」
「はい!!赤峙 真です!!!!運動が得意で勉強ができません!よろしく!」
パチパチパチ…と拍手の音が聞こえて安堵する。
「ねぇ赤峙くんよく見るとかっこよくない?」
「わかる、ちょっとちっちゃいけど親しみやすそうでかわいいっていうか….」
「綺麗な目……」
(…おっ意外に好感触?!ッつーかちっちゃいとか聞こえてっからな….!)
クラスメイト(主に女子)が好き勝手批評する中、罵詈雑言が飛んでこなくて良かったと心底安心する。と同時に弦が話し始める。
「..弓矢 弦です。運動が嫌いです。..よろしく。」
弦が話し終えると、2秒程沈黙が流れた後女子たちから悲鳴…というか黄色い歓声が上がった。
『『きゃぁぁあっ!!!』』
「え、あの美形とスタイルで運動嫌いって何?意外に文学系ってこと?ずるすぎるよね?」
「背たっっか…..細いけど肩幅広いし意外にちゃんと筋肉ついてるタイプだ….やばい…」
「さっき赤峙くんが話してる時密かに微笑んでたし…何?え、どういう関係?え?」
(すげぇな女子。そして弦。なんでこいつこんなスンってしてんだ?こんだけべた褒めされたら普通少しはにやけねぇ?)
すると快活そうな男子が声を上げた。
「よっ凸凹コンビっ!!!」
クラス中が笑いに包まれる。
「だーれが凹だとこらぁ!!」
と冗談混じりに言うと、またもやクラスメイトが笑う。
「よかったよかった、このクラスは一人一人の相性が良さそうで安心したよ。」
担任が力の抜けた笑い方をするので、こっちまで気が緩む。
そうこうしてる間に時計の針は12:00を指し、入学最初のHRは終わった。
「よー!赤峙っ!さっきはごめんな!」
俺と弦のことを凸凹コンビと言った男子だった。
「いいっていいって!馴染みやすくしてくれたんだろ?ありがとな!」
「やだっなんていい子なのっ!」
とオネエ口調で肩を組んできた。こいつとは絶対仲良くなれる。絶対良い奴。
「あーてか、聖ちゃんどこかわかる?」
「聖…ってあれか、あのちっちゃい可愛い子!」
「そうそう」
「なんか式典中はいたらしいけど、その後貧血で早退したってさ」
「あー….そっか!」
(聖ちゃんに協力してもらえれば弦の生傷問題も解決すると思ったんだけど…いやそれより、体調悪ぃのにおれに親切してくれてたのかよ…天使すぎるだろ)
「凹ちゃん水上サンに用だったん?」
「いや大丈夫….っつーか凹ちゃん言うな!!お前も俺とそんな背ェ変わんねぇし!」
「あ、言ったなこら!まぁでも赤峙クンとお揃いなら…アリ♡」
そこはナシであれよ、と笑い合うと、まだ名前を聞いてないことに気づいた。
「あぁ悪ぃ名乗んの忘れてた!!刃垣 裂(はがき さける)!変異は血ぃ舐めたらその傷口から刃が生える!野蛮だからあんま好きじゃねぇけどな」
めちゃくちゃ強ぇな….!!!なんとなく弦の変異と似通ってる部分もある気がするし、傷が多いほど有利、、、な感じか。..何にせよ…..
「めっっっちゃくそかっけぇな!!!?」
「へ?」
「いやだっってさ?!そんなん男子全員一度は妄想するヤツじゃん?!」
「え….いやぁでもさ、やっぱ危ねぇんだよな。そのせいで昔は避けられることもあったし」
…確かに、変異が現れてから使いこなすのには数年鍛錬が必要と言われている。その上攻撃力の高い裂の変異なら、怖がられることも沢山あっただろう。
「…んー。横暴で、もっと我の強い奴がその変異を持ってたら確かに危険視しちまうかもだけど。裂は優しいから野蛮でも危なくもねーよ!」
「….?」
「だって、少ししか話してねェけど、もしこの世界に法律がなくてそれこそ自由で野蛮な世の中だったらさ。裂はその変異を、守るために使うと思うんだ。そういう姿が一番しっくりくる、あったけぇ奴。」
出会って一日目で知ったような口聞いて、引かれてしまうだろうか。それでも、俺と弦が浮かないように輪に入れてくれた裂が、悲しい鉛を抱えるのは嫌だから。
「もっかい言うけど!!裂の変異は野蛮でもなんでもねェから!裂が持ってんだからしぬほど優しい力だろ!」
「….赤峙…お前…..入学早々1時間以上遅刻してくるからどんなヤンキーかと思ったけど…しぬほど良い奴….」
「正直すぎだろ!!いやまぁ俺らが悪いけど!!」
「ありがとな、赤峙。あんだけ恨んだ力、ちょっとだけ誇りになったわ。」
「ん!!よかった!」
「…てか赤峙って付き合ってる奴いんの?」
「突然の恋バナかよ?!」