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次の場所はダイニングルームだった。
さっき、お腹が鳴ったから連れてきたのだろう。
長いテーブルに椅子が多く置いてある。でも、一番奥の椅子だけ豪華な装飾がされてあった。
あの子は豪華な椅子の隣に座らせ、本人は豪華な椅子に座った。もしかして、あの子用に作られたのか…それにしては背に合わず大きすぎる椅子だったちゃんと実際俺にとっても大きく座るのにも一苦労した。
じー
あの子は俺を見ると頷きながら、俺達が入ってきた扉とは違うもう一つの扉へと入っていった。
一時するとと戻ってきた。その手には大きな肉が乗っていた。
「こ、これは」
大きな肉の塊。大きな骨。
めっちゃいい匂いがするし、焼かれたばかりなのかじゅうと…焼けた音がする。
「ま、漫画肉!!」
異世界に行ったら食べてみたいとは一度思っていた漫画肉が目の前にある。
肉は目の前に置かれた。もう一度戻りフォークとナイフも置かれた。
「これ…食べていいの」
コク…
こんなデカい肉を一人で食べていいのだと!そんな贅沢していいのか!
ゴクッ…
喉が、
ぐぅぅぅ…
腹が、今すぐに食べたいと欲している。
めちゃくちゃ美味しそうな匂がするけど色が紫色に近い。普通お肉はピンク色が焼けて茶色になるはずだけど…
(…これ何の肉だ)
俺がそんな事を考えていたら…
じー
あの子はお肉を一口サイズに切って食べた。
「え!?」
その後、もう一度切って俺に…
アーン
している。ちょっと恥ずかしいが…
「い、いただきます///」
パクッ…
「ん!うまい!!」
お肉は柔らかく噛み応えもあり、脂が乗っているがしつこくない。味はコショウだと思うがそれが絡み合っている。焼き加減も丁度よくアッツアツで美味い。これは堪らん!!白飯!白飯がほしい…
グッ…
「うまい!!」
親指を立て美味しいといいねを意味する手振りをする。これなら、相手にはっきりと伝わるかもしれない。
「???」
伝わってない!!
残念ながら伝わってはいなかった。
「ありがとう…次は自分で…」
自分で切って食べようとしたが
アーン
また、あの子が切って食べさせる。
「…ありがとう///」
それを繰り返し、結局全部食べさせてもらった。恥ずかしいと嬉しかったの感情がごちゃ混ぜだ。それにしても、
「ふぅ…美味しかった」
久しぶりに満腹になるほど食べた。それにこんなデカく美味しいお肉は食べたことがない。肉も毎日食べているわけでもないし…
(満腹で感謝しかない…)
食器はあの子が下げていった。次からは自分で片付けをしよう。風呂もそうだがあの子にさせてばかりだ。
料理はとても美味しかった。あの子が作っているのかな…それともキッチンに誰かいるのか…
今のところあの子以外には誰も会うことがなかった。もし、この広い場所で独りは寂しすぎる。というか、どう見てもここで働いている人には見えない。椅子に座るときも、肉を切るときも、礼儀作法が貴族並みだった。
う~ん、、、
(よし…今日は考えないでおこう!)
俺は一旦考えるのをやめた。
ガチャ…
扉からあの子が戻ってきた。
グイッ…
手を繋ぎまた移動した。廊下はロウソクを灯していなかったので暗く月の光が明かりとなっていた。暗い廊下は不気味に感じたが、この子がいることで安心感があった。
進んでいった先には部屋があった。その部屋はどう見ても広く客用の部屋とかではなかった。ベッドから全ては黒色をしていた。普通部屋は明るさや安心感を出すために白色、クリーム色などを使う。だが、ここは他とは違い真っ黒に染まっていたがこの城らしいと思ってしまった。部屋には窓だけではなく広々としたベランダ付きだった。気になったので扉を開けて外に出る。風が涼しかった。今の空は真っ黒だった。
「夜は一緒なんだなぁ」
てっきり、夜空も紫とか他とは違う色をしているのかと思っていた。それにしても夜の月がとても綺麗だ。雲が一切なく、月の周りにある星も輝いている。
部屋にいるあの子は特に気を止めておらず、俺の様子を見守っている。
「ねぇ…月が綺麗だね」
俺は呟くように言った。すると、あの子はベランダに出てきた。そのまま俺の隣に来て、
「—————-」
「えっ…」
何か伝えた。
小さくなんて言っているのかは分からなかった。でも、初めてあの子の声を聞いた。きれいな声をしていた。この子には恩がたくさんある。この子がいなければ今頃森の中で餓死していただろう。うん、俺のことだから絶対死んでいた。
そういえば、名乗っていなかったな。
「えっ、と改めて助けてくれてありがとう…俺はヴェリタ」
「…!!」
「ヴェリタ…ヴェリタ…」
俺は、聞き取れていなかった時のために繰り返し言った。
「…ベリタ」
「おしい!!ヴェリタだよ」
俺の名前を言った。
「ベリタ…」
ヴェだから難しいのかな…
「ん~…まぁいいか」
これを期に名前がベリタになった。
「ベリタ…ベリタ」
何度も繰り返してい言っている。これはこれで覚えやすいならいいのかもしれない。
「それで、君の名前は…」
この言葉が通じるか分からないけど…
「???」
「な・ま・え!」
「…ミオ」
ミオ!
「ミオ!!ミオだね」
ミオか…日本人みたいな名前をしている。もし、漢字にするなら音系かな…もしくは美しい桜だったりして…
久しぶりに日本名らしき名前を聞いたなぁ。俺がそんなことを考えていたら、
パサッ…
ミオは被っていたフードを脱いだ。
そこには紫寄りの長い髪を持ち蝶の髪飾りが付いていた。顔は仮面で隠れているが口元だけ見えるような形だった。それだけの情報でも分かるほど…綺麗だった。月の光が反射して目を離せないぐらい綺麗だった。あっ、ミオが着ている服…
「着物…」
全身を隠すようなフード付きの外套を着ていたのでみえなかったが、この世界で見ることのない服装。あの子は着物を着ていた。もしかして、同じ日本から来たのかと思った。だが、
「・・・・・」
「やっぱり…分からない」
この子は何か言ったのかもしれないけど…言葉が違うのか何を言ったのか分からない。この子が話した言語は日本語じゃないみたいだし日本人じゃないのか。日本人じゃないなら、外国人!なら、英語がチンプンカンプンな俺には無理!!
でも、俺はミオのことを知りたいし…
何より恩返しがしたい。
「ミオ!俺と友達になってほしい」
俺を救ってくれたミオと、友達になりたい。恩人にいきなり『友達』になって!!なんておかしい話だ。でも、俺はこの子ことを知りたい。この|言葉《想い》が伝わるかわからないけど…
コク…
頷いてくれた!
「よろしく…ミオ」
俺は手を向ける。
「あっ!えっ、と、」
つい握手の手を伸ばしたが、伝わるだろうか。元いた国では握手をする文化があったが、ここにはあるのだろうか。どうしようかと考えていたら、
ギュッ…
ミオは分かるのか手を伸ばした。握手をするその文化は同じだった。
「ベリタ…」
その時、月の光によってミオの髪色が輝いているようだった。とても美しく儚い色合い…
好きになったとかそんな感情を無しに見惚れてしまう。
その後、部屋に戻り
「おやすみ…ミオ」
「・・・・…ベリタ」
たぶん『おやすみ』って言ったんだと思う。俺達は寝ることにした。ミオは自分の部屋に戻っていった。部屋は近いのかな。
部屋を貸してもらった時にパジャマも貸してもらった。ほんとうに感謝しかない。パジャマのサイズはブカブカで大人用だが貸してもらえてよかった。
「それにしても…久しぶりの布団だ」
馬車の中で寝たり…地面の上で寝たり…枝の上で寝たり…そんなところで寝ていたから体のあちこちが痛い。
ベッドは柔らかく埋まってしまいそうだ。このまま…ここで住みたいなぁ。明日、から…生きる為にできる、ことを、探していかないとぉ…
俺は考えながら寝た。その日の夜は警戒などをせずにゆっくりと眠ることができた。
その頃城内のどこかでは…
「姫様が連れてきたあの者は…」
「姫様…」
あの人間について話していた。姿をあまりさらさぬ者たちからしては、珍しいことだった。
本人に聞きたい。敵か味方か確かめたい。敵ならば殺す。中には確かめずに殺そうと考える者もいた。
だからといって姫様のお気に入りに無断で近づき、傷つけては怒りを買ってしまう。そのため、誰もまだ手出しをしていなかった。
「ヴァレラ…側近であるお前が聞いてこい」
「敵か味方か…」
皆が一人者に向けて言った。この者ならと期待の目を向けている。
彼女は、この事に興味を示さない。
「私は…姫様の御心のままに」
そう言い、部屋を出ていった。
「あの者はできるのか」
「わからん」
「だが、誰よりも姫様に近い存在だ」
敵を厳粛に定めるもの…人間を放置しない。
魔王様に仇なす者には死を…