次の場所はダイニングルームだった。さっき、お腹が鳴ったから連れてきたのだろう。
長いテーブルに椅子が多く置いてある。でも、一番奥の椅子だけ豪華な装飾がされてあった。
あの子は豪華な椅子の隣に座らせ、本人は豪華な椅子に座った。もしかして、あの子用に作られたのか…それにしては背に合わず大きすぎる椅子だったちゃんと実際俺にとっても大きく座るのにも一苦労した。
じー
あの子は俺を見ると頷きながら、俺達が入ってきた扉とは違うもう一つの扉へと入っていった。
いっときするとと戻ってきた。その手には大きな肉が乗っていた。
めっちゃいい匂いがするし、焼かれたばかりなのかじゅうと…焼けた音がする。
目の前に置かれた。もう一度戻りフォークとナイフも置かれた。
「これ…食べていいの」
コク…
めちゃくちゃ美味しそうな匂がするけど色が紫色に近い。普通お肉はピンク色が焼けて茶色になるはずだけど…
(…これ何の肉だ)
俺がそんな事を考えていたら…
じー
あの子はお肉を一口サイズに切って食べた。その後、もう一度切って俺に…
アーン
している。ちょっと恥ずかしいが…
「いただきます///」
パクッ…
「ん!うまい!!」
お肉は柔らかく脂が乗っているがしつこくない。味はコショウだと思うがそれが絡み合っている。焼き加減も丁度よくアッツアツで美味い。白飯がほしい…
グッ…
「うまい!!」
親指を立て美味しいといいねを意味する手振りをする。これなら、相手にはっきりと伝わるかもしれない。
「ありがとう…次は自分で…」
自分で切って食べようとしたが
アーン
また、あの子が切って食べさせる。それを繰り返し、結局全部食べさせてもらった。恥ずかしいと嬉しかったの感情がごちゃ混ぜだ。
「ふぅ…美味しかった」
こんな美味しいお肉は家では食べたことがない。肉も毎日食べているわけでもないし…
(満腹で感謝しかない)
食器はあの子が下げていった。次からは自分で片付けをしよう。風呂もそうだがあの子にさせてばかりだ。
料理はとても美味しかった。あの子が作っているのかな…それともキッチンに誰かいるのか…
もし…この広い場所で独りは寂しすぎる。というかおもてなしとかどう見てもここで働いている人には見えない。
(よし…今日は考えないでおこう)
俺は一旦考えるのをやめた。
あの子が戻ってきてまた移動した。廊下は暗く月の光が明かりとなっていた。
その後は、部屋に行った。部屋はどう見ても広く客用の部屋とかではなかった。ベッドは黒っぽい色をしていた。普通とは違う色だがここらしいと思ってしまった。窓だけではなくベランダ付きだった。扉を開けて外に出る。風が涼しかった。それにしても夜の月がとても綺麗だ。雲が一切なく月だけではなく星も輝いている。
部屋にいるあの子は特に気を止めていないが…
「ねぇ…月が綺麗だね」
俺は呟くように言った。あの子は俺の隣に来て
「—————-」
「えっ…」
小さくなんて言っているのかは分からなかった。でも、初めてあの子の声を聞いた。きれいな声をしていた。この子には恩がたくさんある。そういえば、名乗っていなかったな。
「改めて助けてくれてありがとう…俺はヴェリタ」
…!!
「ヴェリタ…ヴェリタ…」
俺は、聞き取れていなかった時のために繰り返し言った。
「…ベリタ」
「おしい!!ヴェリタだよ」
俺の名前を言った。
「ベリタ…」
ヴェだから難しいのかな…
「ん~…まぁいいか」
これを期にあだ名がベリタになった。
「ベリタ…ベリタ」
何度も繰り返してい言っている。これはこれでいいのかもしれない。
「君の名前は…」
この言葉が通じるか分からないけど…
「…ミオ」
「ミオ!!ミオだね」
ミオか…日本人みたいな名前をしている。もし、漢字にするなら音系かな…もしくは美しい桜だったりして…
ミオは被っていたフードを脱いだ。
そこには紫寄りの長い髪を持ち蝶の髪飾りが付いていた。顔は仮面で隠れているが口元だけ見えるような形だった。それだけ手も分かるほど…綺麗だった。目を離せないぐらい綺麗。あっミオが着ている服は…
「着物…」
この世界で見ることのない服装。あの子は着物を着ていた。もしかして、同じ日本から来たのかと思った。
「・・・・・」
「やっぱり…分からない」
この子は何か言ったのかもしれないけど…言葉が違うのか何を言ったのか分からない。この子が話した言語は日本語じゃないみたいだし日本人じゃないのか。
でも、俺はミオのことを知りたいし…
「俺と友達になってほしい」
俺を救ってくれたミオと、友達になりたい。伝わるかわからないけど…
コク…
「よろしく…ミオ」
俺は手を向ける。ミオも分かるのか手を伸ばした。握手をするその文化は同じだった。
「ベリタ…」
その時、月の光によってミオの髪色が輝いているようだった。とても美しく儚い色合い…
その後、部屋に戻り
「おやすみ…ミオ」
「・・・・…ベリタ」
たぶん『おやすみ』って言ったんだと思う。俺達は寝ることにした。ミオは自分の部屋に戻っていった。部屋は近いのかな…近いならそのうち会いにいきたい。
パジャマのサイズはブカブカで大人用だが貸してもらえてよかった。
「それにしても…久しぶりの布団だ」
馬車の中で寝たり…地面の上で寝たり…枝の上で寝たり…そんなところで寝ていたから体が痛い。
ベッドは柔らかく埋まってしまいそうだ。このまま…ここで住みたいな。明日から…生きる為にできることを探していかないと…
俺は考えながら寝た。その日の夜は警戒などをせずにゆっくりと眠ることができた。
その頃城内では…
「姫様が連れてきたあの者は…」
「姫様…」
あの人間について話していた。姿をあまりさらさぬ者たちからしては、珍しいことだった。
本人に聞きたい。敵か味方か確かめたい。
だからといって姫様のお気に入りに無断で近づいては怒りを買ってしまう。
「ヴァレラ…側近であるお前が聞いてこい」
「敵か味方か…」
皆が一人のメイドに言った。この者ならと期待の目を向けている。
彼女は、この事に興味を示さない。
「私は…姫様の御心のままに」
そう言い、部屋を出ていった。
「あの者はできるのか」
「わからん」
「だが、誰よりも姫様に近い存在だ」
敵を厳粛に定めるもの…人間を放置しない。
魔王様に仇なす者には死を…
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