テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
こんちゃ小説作るの楽しいですでも自分だけが楽しいじゃなくてみんなにも楽しんでもらえるやつを作りたいっす
第三話「おにぎりで得た新たな絆」
――幻想郷。
博麗蓮が幻想郷へ戻ってから、数日が経っていた。
しかし、蓮はまだ博麗神社へ戻っていなかった。
霊夢に会った。
だが、すべてを話したわけではない。
母・優奈の死。
自分が追放された理由。
そして、あの日に何が起きたのか。
蓮には、まだ話せないことがあった。
蓮「…………」
森の中を歩きながら、蓮は小さく息を吐く。
蓮「腹……減ったな」
長い旅のせいで、まともに食事をしていなかった。
蓮は財布を確認する。
蓮「……ない」
当然だった。
幻想郷を離れてから長い年月が経っている。
戻ってきたとはいえ、蓮には居場所もなければ金もない。
蓮「どうするかな……」
そのとき。
森の奥から、何かの匂いが漂ってきた。
蓮「……?」
蓮が匂いを辿っていく。
木々の間を抜けた先。
一人の少女が座っていた。
その少女の手には――
おにぎり。
少女「…………」
少女はおにぎりをじっと見つめていた。
蓮「……何してるんだ?」
少女「ひゃっ!?」
少女が驚いて振り返る。
少女「だ、誰!?」
蓮「悪い。驚かせたな」
少女「人間……?」
蓮「ああ」
少女「妖怪じゃないの?」
蓮「たぶんな」
少女「たぶんなの!?」
少女は少し警戒しながら蓮を見る。
蓮は少女のおにぎりを見る。
蓮「……それ」
少女「これ?」
蓮「ああ」
少女「食べたいの?」
蓮「……いや」
蓮は目を逸らした。
蓮「腹が減ってるだけだ」
少女「…………」
少女はおにぎりを見る。
そして蓮を見る。
少女「……半分あげる」
蓮「え?」
少女「お腹空いてるんでしょ?」
蓮「いや、でも……」
少女「いいから」
少女はおにぎりを半分に割る。
少女「はい」
蓮はしばらく黙っていた。
そして、受け取る。
蓮「……ありがとう」
少女「どういたしまして」
蓮はおにぎりを一口食べる。
ただの塩むすびだった。
けれど――
蓮「……うまい」
少女「本当?」
蓮「ああ」
少女「よかった!」
少女は嬉しそうに笑った。
蓮も、ほんの少しだけ笑う。
蓮「……名前は?」
少女「私は――」
少女は名乗った。
それは、蓮がこれから長く関わることになる名前だった。
だが、その出会いが何を意味するのか。
二人とも、まだ知らない。
――その頃。
博麗神社。
霊夢「……お兄ちゃん、どこにいるのかしら」
魔理沙「まだ見つからないのか?」
霊夢「ええ」
魔理沙「まあ、あいつも色々考えてるんだろ」
霊夢「……そうね」
霊夢は空を見上げる。
霊夢「でも、今度は逃がさない」
魔理沙「お前、本当に蓮を追いかけるつもりなんだな」
霊夢「当然でしょ」
魔理沙「……何だかんだ言って、兄貴が心配なんじゃないか?」
霊夢「そ、そんなわけないでしょ!」
魔理沙「へぇー?」
霊夢「……うるさい」
霊夢は顔を背ける。
しかし、その表情は少しだけ柔らかかった。
――森。
蓮と少女は、並んで座っていた。
少女「ねえ、蓮」
蓮「ん?」
少女「どうして一人で旅してるの?」
蓮「……色々あってな」
少女「色々?」
蓮「ああ」
蓮は少し考える。
蓮「昔、大切な人を失った」
少女「……」
蓮「それから、ずっと一人だった」
少女「寂しくないの?」
蓮「……慣れたよ」
少女「私は、慣れないと思う」
蓮「……そうか」
少女は残ったおにぎりを見つめる。
少女「じゃあ、これからは一人じゃなくてもいいんじゃない?」
蓮「……え?」
少女「私がいるから」
蓮は驚いた顔をする。
そんなことを言われたのは、いつ以来だっただろう。
蓮「……変な奴だな」
少女「よく言われる!」
蓮「ふっ……」
蓮は笑った。
ほんの一瞬。
長い間忘れていた、自然な笑顔だった。
その日。
たった一つのおにぎりが――
一人で生きてきた男と、一人の少女を繋いだ。
それは、まだ小さな絆。
しかし後に、その絆は――
幻想郷を揺るがすほど大きなものへと成長していく。
そして同じ頃。
遠く離れた場所で、一人の妖怪が蓮の存在に気づいていた。
???「……博麗蓮」
その声は、静かに森へ響く。
???「帰ってきたのね」
運命はまた一つ、動き始めていた。
第三話「おにぎりで得た新たな絆」――完
#東方Project
つばさ
98
#東方奏明録
コメント
1件
つばささん、第3話読ませていただきました! おにぎりを半分こするって、すごくシンプルなのに心が温かくなるシーンでしたね。蓮が「うまい」ってつぶやくところ、長い旅路の孤独がちょっとだけ溶けた感じがしてじーんと来ました。少女の「私がいるから」という言葉も、蓮の長く忘れていた自然な笑顔を引き出したのが素敵です。 霊夢が「今度は逃がさない」と言ったのも気になります。兄妹の関係性がこれからどう動いていくのか、続きが楽しみです!