TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

脱衣所から出てきた羽理うりは、薄手の灰色長そでチュニックに、一〇分丈の黒いレギンスを合わせていた。

チュニックにはお約束と言うべきか。

吊り下げられた魚に釘付けの可愛い黒猫が描かれている。


一応ルームウェアだけれど、いわゆる楽ちんスタイルの服装なので、ちょっとコンビニくらいまでなら余裕で行けてしまうコーディネートだ。


ただ――。


(すまん。下着がなかったなっ!?)


所在なさげに胸の前で不自然に手を組んだ羽理うりを見て、そう確信した大葉たいようだ。


恐らく下もノーパンだろう。


(早いトコ、家に連れて帰ってやんねぇと)


歩き方がぎこちない羽理を見ていると、何故か大葉たいようの方が落ち着かない。


(そうだ。羽理の家に行くときはサツマイモも持って行こう)


今日、会社の軽トラ荷台に乗せて持ち帰ったサツマイモ三箱は、れ立てではないけれど、植え付け作業を手伝った礼として大葉たいようが農家から個人的にもらえたものだ。


総務部所属の人間だけに絞れば、数個ずつお裾分け出来る程度には沢山もらえたので、帰ってすぐ羽理とワイヤレスイヤホンで通話しながら荷台から下ろした。

本当は社から小袋を取って来て小分けにしてから、今日中に部下たちへ配ろうと思っていたのだが、柚子ゆずの突然の訪問で予定が崩れて。


受付で社長と、自分と同フロア内にいる財務経理課長の倍相ばいしょう岳斗がくとには直帰せねばならなくなった旨を伝えたのだけれど、とりあえず持ち帰ったイモは箱のまま自分の車――エキュストレイルの荷台へ移し替えておくことにしたのだ。

社用車の軽トラは他の人間が使うことも考慮して荷台を空けておきたかった。


連絡もせず急に訪問してきた迷惑料代わり。本当は一人でも楽々出来る作業だったが、柚子ゆずにも箱の移動を手伝わせたのだが。


柚子ゆずと一緒に積み荷を移動させながらいきなり何をしに来たのかと問うてみれば、旦那と喧嘩して家を飛び出してきたから泊まらせて欲しいだの、丁度そのタイミングで大葉たいよう自身の見合いの話を伯父から聞かされたんだけど、どうなってるの? だの……相変わらず柚子は口うるさかった。


挙げ句、作業で汚れたから風呂へ入らせろだのと騒ぐ始末。


さすがに身内とはいえ社外の人間に会社のシャワー室を使わせるわけにはいかなかったから、自宅の風呂へ入らせることにして。

ふと、荒木あらき羽理うりとのワープ事情が頭に浮かんだ大葉たいようだったけれど、まだ就業時間内だし大丈夫だろうと見定めて、柚子を入浴させることにしたのだ。


なのに。

結局何の因果かどんなに時間をずらして入浴しても、羽理と大葉のバスルームは繋がるようになっているらしい。



***



風呂上がりの羽理うりに、寝室からブランケットを一枚取って来て被せてやってから、大葉たいようは電気ポットのお湯と、電子レンジでぬくめた牛乳で溶いたホットココアを出してやる。


(あのままの格好じゃ、色々と想像しちまってヤバすぎるからなっ。――主に俺の息子がっ)

と心の中で付け加えつつ。


ブランケットで冷えた身体を温めながら下着の不在を感じさせないようしっかり隠してもらえると大変有難いんだが、と思ってしまった大葉たいようだ。


それでも――。


「羽理、何でソファこっちに座らねぇんだ?」


姉の前で羽理の身体に反応してしまうかも知れないと言う最大級の危険をおかしてでも、好きな女性の傍にはいたいと思ってしまうのだから恋心と言うやつは度し難くて面倒くさい。


何なら姉を押し退けてでも羽理の隣に座りたい大葉たいようなのに、羽理はソファに腰かけた柚子ゆず大葉たいようとはローテーブルを挟む形。まるで大葉たいようからなるべく距離を取りたいみたいにふかふかの座布団の上に小ぢんまりと収まってしまう。


そのことに異議を申し立てた大葉たいようだったのだけれど。


そのタイミングを推し測ったみたいに柚子の足元からテトテトと離れたキュウリが、羽理うり股座またぐらへやけにご執心になって。

羽理が懸命にブランケットでカバーするも、執拗しつようにその上からフンフンと羽理の股間の匂いを嗅ごうとするから。


結局、余りのしつこさに羽理が困ったように眉根を寄せて大葉たいようを見上げてきた。


(ひょっとして羽理がノーパンだからそんなに反応してるのかっ!?)


「こらっ、ウリちゃん!」


言って、キュウリを抱き上げて羽理から引き剥がした大葉たいようだったけれど、内心(うらやましいでちゅよ、ウリちゃん!)とか思っているのは内緒だ。


そのまましれっと羽理の横へ座った大葉たいようは、キュウリを抱き抱えたまま「――でな、……、こいつが言うんだ。ワープするようになっちまった原因があるんじゃねぇか?って」と柚子にちらりと視線を投げ掛けて本題に入った。


羽理がさり気なく座布団の端っこに寄って、大葉たいようから距離をあけたすぐそばで、大葉たいようの手をキュウリがペロペロペロペロ……しつこいぐらいにエンドレスで舐め始める。

あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

131

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚