船を降りたクラピカ、クロロ、ゴン、レオリオの4人。そこで船長からハンター試験会場へ向かうように指示された。ザバン市に向かえ、との事である。そこが今回のハンター試験の会場であるらしい。
出発しようとしたタイミングでゴンは、船長の男に呼び止められた。何やらヒントを貰ったらしく、ザバン市とは逆方向にある山の頂上の一本杉を目指すらしい。
クラピカはゴンの行動について観察したいと思い、同行を願い出た。当たり前だが、クロロもセットである。
レオリオは、ザバン市行きのバスが出ているため、それに乗って向かうと言っていた。
「お前が人に興味を持つなんて珍しいな」
クロロは目を細めてクラピカに話しかける
「そうだな…何となく気になるんだ」
クラピカも自分の行動が理解できなかったが、言ってしまったのだから仕方の無い。
レオリオと別れ、3人は一本杉を目指して歩き出した。しかし、数分後には4人に変わっていた。何やら住民の会話を盗み聞きしてこちら側に戻ってきたとのことだ。
…自由な奴だな。とは
クラピカとクロロの感想である。
そして、この2人はある事に気付いていた。
先程からこちらと一定の間隔を開け、着いてくる一人の人間。しかし、害はないようなので放っておくことにした。ゴンとレオリオは気付いていない様子である。
暫く歩くと、寂れた町に出た。
人の気配は感じるのだが、姿は見えない。
不思議に思いつつも進み続けた4人の前に、老婆が現れた。
そして突然『ドキドキ2択クイズ』と叫び出したのだから心臓に悪い。なんなのだ…。
後ろから声がした。先程から後ろに着いてきた男である。
男は4人よりも先にクイズに挑みたいようだ。
それもそうだろう。先に進めば、待ち伏せが出来るのだ。邪魔なライバルなど排除したいのが人間である。こちらとしても、クイズがどのような物なのか知っておきたかったので男を先に行かせることにした。何せ、チャンスは一度きりらしいからな。レオリオは最後まで騒いでいたが…。
老婆が男にクイズを出した。
『お前の母親と恋人が悪党に捕まり、1人しか倒せない。①母親②恋人 どちらを助ける』
という内容であった。もはやクイズでも何でもない。心理ゲームと言った方が正しいと思う。
男は①母親と答えた。そしてこちらを振り返ると、ニヤリと笑った。
「こんなもん、相手が好きそうな答えを言うのが1番良いんだよ。」
癪に障るなコイツ。とゴンを除いた3人は思った
そんな事はさて置き、一同は正解か不正解かを知るために老婆を見つめた。
老婆は特に何を言うでもなく、この先の道を進むように促す。
そして男は指示された道へと姿を消して行った。
「クロロ、今のはどういう事か分かるか?」
クラピカはクロロに聞いた。
「さぁ?だが、正解か不正解かを言わなかったところが気になるな。」
クロロは、クラピカも引っかかっていた部分を指摘する。
「あぁ…。私もその部分が気にかかっていた。」
レオリオが老婆にクイズを促した事で、2人は思考の渦から顔を上げた。
クイズの内容は先程と変わらないようだ。制限時間は30秒。それまでに答えを出さなくてはならない。
そして、レオリオがキレた。
「こんなの、答えられる訳ねぇーだろ!!」
と今にも殴り掛かる勢いで老婆に食い下がった。
…ナイスなのだよ、レオリオ
クラピカとクロロはお互いに顔を見合せ、お互いが正解である事を確認するかのように、1度だけ頷いた。
そして制限時間の30秒がやってきてしまった。
レオリオは限界に達して、老婆に殴りかかろうと腕を振り上げたところで、クロロに止められてしまった。
「何すんだ!てめぇ!!」
レオリオは興奮冷めやらぬ状態でクロロを睨みつける。その様子を見たクロロはに溜息を吐いた。
「少し落ち着けよ、せっかくの正解を無駄にする気か?」
と告げたことで落ち着きを取り戻したレオリオは腕を元の位置に戻し、説明を促した。
クラピカはその様子を見ると説明を始めた。
「沈黙こそが正解。そうですよね?この質問に答えを出す方が間違っているのだよ。分かったか、レオリオ」
その答えを聞き、老婆は、深く刻まれたシワをより深くして笑った。
「正解じゃよ」
すると、老婆の後ろにあった扉が開いた。
「この先を進み、2時間歩けば一本杉まで到着する。」
説明を受けて歩き出そうとしたその時
「うーん、やっぱり分かんないや!」
ゴンは未だに考えていたようだった。
3人は笑いを堪えた様子でゴンに話しかける。
「ゴン、私たちは正解したのだよ」
「うん、でもいつかこの選択をしなくちゃいけない日が来るかもしれないんだ。でもオレにはどっちを選択すればいいか分からないや。」
ゴンのその言葉に、3人も「そうだな」と頷いた。
このクイズの真の意図は、きっとこういう事なのだろう。
クラピカは一人、思考の渦に沈む。
私もいつか似たような決断を迫られた時、どのような答えを出すのだろうか。後悔のない選択はできるのか。そんな未来は来て欲しくないけれど、ゴンの言った通りに来るかもしれない未来なのだ。
ふとクロロの顔を見つめる。
コイツの隣は気持ち良いと最近気付いた。そんな存在が居なくなってしまったら、私はどうそれば良いのだろうか。
…考え出したらキリがないな。
そう思い頭を振る。今はまだその時じゃない。
同胞の目を集め、復讐をする。それが終わったら考えよう。でもその時にはもう、私の傍にきっとクロロは居ないかもしれない。汚れきった私とは関わるべきではないのだ。
…クロロが離れていくまでは傍に居ることを許して欲しい。
小さな我儘を肯定する人は居ない。
クラピカは一本杉を目指し、3人と共に進んで行った。
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