「君は本当に不運だった。あんなに酷い扱いを虐げられて」
私は許せなかった。
彼が一人で、私の村を訪れたときの記憶がこびりついている。彼は、今まで数十年を共にして過ごした村人から、何の兆候もなく反発されたようだった。彼自身は抵抗しなかったのか、彼の全身は傷まみれの状態だった。
「いえ、僕が悪いのかもしれない。今までこんな事はなかったのだから。ですから、真相を知らないまま悲劇を語るのは間違っている」
「君が仮に何かを仕出かしていたとして。何か咎められるような事も無かったのだろう?」
「ええ、あまりにいきなりでしたので。言葉より拳を交える方が早かったかと」
ドルリアンは悲痛な表情をしている。それを見て、私も心が苦しくなってしまう。
「それで、妹さんは無事だったの?」
チタニーは尋ねた。
「え…あぁ…そうだね。妹は無事、だったかな」
「そう…」
チタニーの顔色は晴れていなかった。その逆に、曇天がかかるような表情になっていく。
「コリエン、貴方まで顔をしかめる必要はない。君はいつも僕に同情してくれるが、君が怒る理由にはならない」
「しかし…」
ドルは私の肩をたたく。
「僕は妹さえ見れれば良かったんだ。もう僕の拠り所がない場所に、それ以上の用事は無いのですから」
「君が良いとしても、私にはそんな運命を理解する理由はできない」
だって、あまりに不遇ではないか。ドルはとある日の悲劇が起こるまでは、不自由などなく、妹と平穏に暮らしていたというのに。それが突然、彼を異質な部外者も同然に扱い、力任せに居場所を奪ったのだから。私は、そこまで考えてとある事を思い出した。
「私たちも集落を追い出されたようなものか…」
「そういえば、コリエンがチタニーと一緒にいるのは珍しいですね」
「コリエンヌとティニールは、移動してきたの」
足元で私の手を握っていたチタニーは、説明をしてくれた。
「なるほど、他部族との抗争に巻き込まれないようにですか」
私は頷いた。
「最近の世間はなんだか、血気盛んな気がする。まるで、何かを取り合うような守り合うようなそんな…」
私は黙っていた。この話を広げても誰のためにもならないと冷静になっていたからだ。チタニーの私の裾を掴む手に、意識が戻っていたから。
「ドル、それより楽しい話をしよう。こんな暗い話をしても何も生まれない」
「ええ、それはその通りだな。っとその前に一つ、君たちに伝えることがあるんだ」
ドルは、一つの写真を差し出してきた。それは、覆面をした黒服姿の集団を盗撮したようなものだった。
「この覆面たちは一体…」
「これは、不名誉なことに僕の村人たちだ」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!