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「んん〜、疲れた。」
今日も夜中まで仕事が続く。
数時間前にぼくの家に泊まり来ている若井が入れてくれたホットココアも既に冷めてしまっていた。
若井は明日は別仕事で早い為、もう寝ているはず。
一区切りついたし、ぼくも寝ようかなと欠伸をしながら立ち上がり、寝室に向かった。
「…またなんか言ってる。」
寝室のドアを開けると、いつもの寝言が聞こえてきた。
笑いをこらえながら、寝ている若井の隣に腰掛ける。
そして、なんて言ってるんだろう?と若井の寝言に耳を傾けた。
「んん、元貴…わかれ…よ。」
一瞬で目が覚める。
わかれよ?
別れよって言った?!
心がモヤモヤする。
なんか悪いことしたかな?…とか、
もしかして好きな人が出来た?…とか、
ぼくの事嫌いなったの?…とか、
寝言だって事は分かってる。
分かってるけど、考えてしまう。
「やだ…」
ぼくは、寝ている若井をそのままに寝室から出ると、作業部屋に戻りモヤモヤを考えないように仕事を続けた。
「元貴、おはよー。」
起きてきた若井が部屋に顔を出す。
集中しすぎていて、若井が部屋に来たので朝だと自覚した。
「寝てないの?」
「うん。」
昨日の件がある為、なんか気まずくて若井の顔を見れない。
そんなぼくに、若井はあまり無理しないでねと言いながら後ろから抱きしめた。
若井の体温と匂いに少し心が満たされる。
「じゃ、仕事行ってくるね!」
若井はそう言うと、ぼくの頬に軽くキスをして部屋を出て行った。
待って。
今、キスしたのって頬っぺただよね?
いつもは唇にしてくれるのに!
少し心が満たされたのも束の間、またモヤモヤが広がっていった。
それから数日間、ぼくはずっとモヤモヤしている。
何度も言うけど、寝言だって事は分かってる。
分かってるけど、モヤモヤしちゃうんだもん!
今日はメンバーとの仕事の為、若井も一緒だ。
若井を常に目で追っているけど、特に変なところはないし、ぼくに対する態度もいつもと一緒だ。
そして今日はまた若井がぼくの家に泊まりに来る日。
とくに何事もなく仕事を終えると、一緒に帰宅した。
「はぁー元貴ん家の匂いがする。」
人の気も知らないでぼくの家に来て嬉しそうな若井。
少しくつろいでからお互い寝る準備をして、今日は一緒にベッドに入った。
「おやすみ。」
若井はそう言うと、ぼくの唇におやすみのキスをした。
唇にしてくれた!
こんな些細な事でもモヤモヤが消えていくのだから、ぼくは意外と単純な人間なのかもしれない。
それでも全てのモヤモヤが消えた訳ではないぼくは、中々寝付けにいると、若井の寝息が聞こえてきて、しばらくするとムニャムニャと寝言を言い始めた。
「もと…き。」
ぼくの名前を呼ぶ若井。
今度は何を言ってくるのかと耳を澄ますぼく。
「元貴、だいすきぃ。」
慌ててベッドから起き上がり若井の顔を見る。
しっかり寝ているように見える。
「ぼくも大好きだよ。」
寝ている若井に呟くと、唇にキスをした。
「ぅへへー、ありがとー。」
寝ているのに会話出来た事に笑いを堪え、ベッドに横になり目を閉じる。
前言撤回。
ぼくは“とても”単純な人間なようだ。
ただし、若井に限りね!
-fin-
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