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「静かにしててほしいってことね。分かったわ。そんなに行きたいんだったら止めないわ。あなたのことはどうでもよくなったわ。私ももう、他の場所へ行くから」
僕は何も言わない。
「言いたいことを言ったら、満足かしら?まただんまりだものね。ええ、いいわ。私もそうやって選択を受け入れたくなくて、答えない時も本当はあった気がするわ。ただ、人は人の選択肢外からは逃れられても、自分だけは常に選ばなければならないわ」
同情なのか諦めなのか。けれど、言葉のトゲは落ちたように感じる。
「私があなたを引きとめようとしても逃げられちゃうみたいにね」
「え?」
聞き間違いかと思った。彼女の目はなぜだか寂しそうだった。
「寂しく見える?この私が」
彼女はどこか不器用に笑っている気がした。
「貴方がいなくなったかと思って、すごく寂しくなった…って。選択をしてても、一人なら選ぶ理由がないんですもの」
いつになく弱気な少女になっていた。手に拳を作っているのは、彼女自身の気持ちを押し殺しているようだった。
「じゃあ、一緒に行けばいい」
彼女は足にツタでも取り巻きついているのか、歩もうとしない。
「行かないの?」
「どういうつもりなのかしらって…」
僕は枯れた花のような彼女の言葉を待った。
「私を哀れに思っているのかしらって。私を許してくれたのかしらって。まだ言いたいことがあるのか、それとも私と一緒にいたいと思ってくれているのかなって…」
花から零れたのは、他人を縛るような選択肢ではなくなっていた。そして、今度は彼女が僕の言葉を待つ側になる。
「僕の理由は、君に関係のない事だから」
突き放したつもりないけど、自分の心を軽くするつもりで言葉を投げた。
「ちょっと、待ってよ!選択した理由は聞きたいんだけど!あなたが私を…」
花がほころんだのを見届けてから、僕は歩き出す。
「ちょっと?勝手に歩き出さないでくれないって言ってるのよ?」
彼女は気付いていないかもしれないが、ちゃんと彼女が歩み出せば追いつける距離で足を止めている。
「私が決めていいのよね…」
花はもう言葉に出さずとも選択しているように見えた。
「ちょっと、だから言葉の途中に進んでいかないでよって!」