テラーノベル
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「夜風が気持ちいね、お兄さん。」
リンデェンに微笑みかけた。
顔がぐっと近くなる。
「ああ、そうだね。」
少し顔を背け、平然を装った。
ロンレイは間を与えず、リンデェンに聞いた。
「どうして夜の散策なんて? 危ないのは、分かってるでしょ?」
ロンレイはリンデェンの行動を不思議に思っていたのか。
だから、着いてきた……ということか?
実際のところ、散策なんてのは別の理由で本来の理由は違っていた。
まさか、会ったばかりの少年に当てられてしまうとは。
「ロンレイは心が読めるのかもしれないね。」
冗談混じりに言う。
ロンレイは、真に受けてしまったそうだ。
「俺は心なんて読めないよ。」
真剣に答えるその表情が可愛かった。
 ̄冗談だったんだけどな……
「本当のところ、最近夜中に風鈴の音を聞いていたんだ。青光りの鹿と何か関係があるのかもしれないって思ってて……
時系列があまりにも同じだったから。」
偶然が重なったのだろうが、なにかが引っかかっていた。
「それから、足音も聞いたから。もしかしたら鹿に会えるかもしれないと思って。 自分から会いに行ってみようかと……」
馬鹿らしいかな、と付け加えた。
自分でも、まさか会えるとは思っていない。
ただ、ロンレイはどうこう言う事無く、リンデェンの乱暴な考えを受け止めてくれた。
「もしかしたら、本当に関係あるかもしれない。何もせずに決めつける奴よりも、行動できるお兄さんの方が合ってると思う」
真剣に答えてくれたのに、面食らってしまった
 ̄本当にいい子だ…。
「ロンレイ……君はほんとうに…、」
言葉を詰まらせ、思わず頭を撫でた。
最初は驚いていたが、嫌がることなくされるがままに撫でられる姿は愛らしい。
しばらくの間、ロンレイに構っていた。
「お兄さん。」
しばらく撫でられたあと、ロンレイがさすがにと言葉にした。
「ごめん、ロンレイ。つい。」
少し笑って、先に歩きだした。
続きにロンレイもついてくる。
「その鹿と会うまで歩くの?」
ロンレイは軽い足取りで、後ろで腕を組んでいた。
そこそこの坂でありながら、余裕そうだ。
「まさかね。そもそも、確実に会えるとは思っていないから。」
前に進みながら答えた。
そうだね と返事をしてから、2人は話すのをやめ、静かになる。
辺りの木々が風に揺れ、髪を揺らす。
もうしばらく歩き、リンデェンがロンレイに言った。
「もう帰ろうか。リンシィーを長く1人にするのは心配だし。」
そう言うと、方向転換し、少し曲がった道を歩いていく。
「彼女は心配されるほど、弱くないと思う。」
ロンレイが本当に微かな声で呟く。
ただ、リンデェンの耳には届かなかった。
「何か言ったか?」
振り向いて言う。
「いいや、何も言ってないよ。 それより、下り坂は滑るから前を見て、危ないから。」
リンデェンを心配するロンレイを見て、何とも言えない感情になる。
こんな青年に心配されてしまうものなのか。
いいのか、悪いのか……なくに泣けず笑うに笑えずだった。
古屋につくと、静かにそうっと扉を開けた。
そこそこの音がってしまったが、リンシィーの方を見ると、構わずに眠っている。
 ̄疲れているのか。
申し訳なくなり、立ち尽くしていると、ロンレイが小声で話した。
「俺たちはあそこで寝るの?」
指を指すところは、空いた穴に近い床だ。
「少し狭いけど……大丈夫かな?」
ごめんね と付け足す。
ロンレイは何も言わずに床へ入った。
続いてリンデェンも、隣へ静かに座る。
すると、ロンレイは優しい口調で言う。
「十分な広さだよ。お兄さん、本当にありがとう。感謝しきれないよ。」
面と向かって、心からの感謝をはっきり受け取ったのは久々だった。
真っ直ぐなロンレイの思いが、嬉しくて意味もなく顔を逸らしてしまう。
それから、横になった。
「ロンレイ、君は本当に優しいから、何か悪いことに騙されないか心配だよ……
何か私に出来ることがあれば言ってくれ。手を貸したい。」
親心のような気持ちからの言葉だった。
ロンレイは照れたように少しそっぽを向く。
「手を貸したいと思うのも、心配なのも俺と一緒だ。お兄さんこそ、いい人過ぎる。
こんな怪しい男と、一緒に寝るだなんて。」
冗談混じりに言う彼は、やっぱりまだ幼いと感じた。
それから、少し雑談をし、リンデェンがいつの間にか眠りに落ちていた。
眠ったリンデェンを見て、ロンレイはそっと自分の分の布も被せる。
小声で何かを言ったあと、反対を向いて眠りについた。
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