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朝、リンデェンが目を覚ますと、横にロンレイの姿は無かった。
驚いて思わず起き上がると、奥にリンシィーがまだ眠っているのが見える。
 ̄ロンレイはどこへ行ったんだ……?
内にはロンレイはいなかった。
少し心がざわつき、扉を開け周辺を見渡すも
ロンレイは見当たらない。
心配ではあったが、そこまで緊急だとは思わなかった。
 ̄ロンレイの事だ。きっと何処かへ出かけたのだろう。
少々不安は残るものの、気を正し、近くの川で顔を流しに向かった。
着いたこの川は、少し歩いたところに滝と泉があり、空気がよく澄んでいる。
鳥の囀りや、滝水の音がいい具合に響き渡り、
木漏れ日が実に神秘的だ。
そこからすぐ近くに花畑もあった。
朝一、ここへ顔を洗いに来ると気持ちがどこか安らかになる気がしていた。
他の2人もそうなのだろうか。
これからの事も少し考えるため、顔を洗ったあと周辺を歩いた。
歩き回り、泉縁に腰を下ろした。
すると、肩に1羽の鳥が止まる。
野生にしては毛並みの揃った、綺麗な白色の子鳥だった。
「おっと……こんちには。」
頭を優しく撫でてやった。
鳥は身体全体をうねらせ、肩に座る。
2つの瞳が朝日に照らされ、それから泉とも重なり美しい限りだった。
しばらく小鳥と時間を過ごしていると、何やら後ろから音がした。
リンデェンが振り向く前に、それは目の前に現れる。
「2羽目……ここの近くに巣でもあるのか。」
肩に乗った小鳥とよく似た鳥が、今度は膝の上へ座る。
顔部分も似ているが、後に来た小鳥の方が少しばかり凛々しい顔立ちだった。
それからそよ風に揺られ、長い間時を忘れて、
そこへ座っていた。
考え事をしてみたり、鼻歌を歌ってみたり。
久しぶりにゆっくりとした時を過ごした。
 ̄ここ最近、忙しいばかりだったな……
何だかしみじみ思う。
すると突然、遠くから微かに コーン という、
鐘の音が聞こえた。
ただ、音の聞こえる方向はよく分からず、どこか遠くの街からの音であろう。
その音が鳴った途端、2匹の小鳥たちは、一気に森の中へと帰って行った。
その驚いて後ろへ手を着く。
ふと何か擦れる音を聞いて、上をむくと鳥の群れが小鳥たちと同じ方向へ羽ばたいている。
何十匹…何百匹もいるように見えた。
黒くて翼の大きな鳥たち。
慌てて森の奥の方を向くと、何の動物なのかまでははっきりしないが、
四足歩行の動物たちが、奥へ奥へと走っていくのが見えた。
「何だ……?」
思わず立ち上がり、辺りを見渡した。
まだ鐘は鳴り響いている。
1度体制を整えると、突然、強風がリンデェンの周りを荒吹く。
森の木々の音が、周りの音をかき消した。
リンデェンが立っているのも困難になってきている。
強風が促す方向は、鳥たちが進んで行った森の奥の方向だった。
このまま流されるのだけは避けたい。
この場で踏ん張っているものの、そこで経ち堪えるのも長い間は無理そうだった。
もう長い時間、こうしている。
鐘の音は段々重くなっている気がした。
一向に鳴り止む気配もない。
足も限界が近づいていた。
最近は、しっかり休めていなかったため、身体が万全の状態ではない。
何かが怒っているのは間違いないが、なにかは分からないし、考える余地もなかった。
そうこうしている内、体の限界がきた。
本当の最力で踏ん張ったものの、とうとうリンデェンは恐風により、
吹き飛ばされてしまった。