キィ………ドンッ………!
『ら、う、くん、?』
その時の私には何が起きたのかさっぱりわからなかった。
目の前の大きなトラック、叫ぶ人々、立ちすくむ自分、そして、倒れたままビクともしない彼の姿。
これは、全て私のせいだ、
「おはよう!〇〇ちゃん」
『おはよ!』
ラウくんは私の彼氏、一学年下だけど部活を通して仲良くなった。
毎朝一緒に登校して、一緒に帰る。それからすれ違ったら手を振って、お昼になると二人で屋上へ行く。それだけで幸せだ。
「あ、今日って放課後用事ある?」
『うん、空いてるよ!』
デートかな、と期待して明るく答えた。
「最近できたスイーツ屋さん行ってみたいな」
『そうなの!じゃあ行こっか!』
そう言えば、彼はうん、と笑った。この時はこの笑顔がいつまでも見られると思ってたのにな、
それぞれの階で別れ、教室へ入ると、なにやら女子たちがヒソヒソと話していた。
とうやらラウくんの話しみたい。まぁ、あのルックスじゃ先輩からでもモテるものか。そして、その会話に耳を傾けた。
“ラウールくん山下さんって子と付き合ってるらしいよ”
“え!〇〇じゃなかったの”
“なんか二人でいるところを見た人がいるんだって”
“しかもその女の子の家から出てきたんだって”
“えー”
その女子たちは私の視線に気づくと、黙って自分の席へ戻った。
そうなんだ、やっぱそうだよね。私なんかが釣り合うわけなかったんだよ、
今日のお昼は友達になることになったと連絡をし、流れていく時間を待ち続けた。
放課後になり、玄関の下駄箱で待っていると、遠くからラウくんが走ってくる姿が見えた。
彼を見ると、朝に話してたことを思い出す。でもラウくんがそんなわけ、ないよね?
だけど、やっぱり気になっちゃう。
「〇〇ちゃん?」
『あ、ごめん!行こ!』
「うん!」
お店へ向かう間、ラウくんは今日の出来事を話してくれた。
数学の小テストで満点だったとか、お昼は久しぶりに友達と食べてすごく楽しかったとか、バスケでゴールがなかなか決まらなかったとか。
そうやって話してくれるのがすごく嬉しかった。
だけど、
「〇〇ちゃんはどうだった?」
私は何も言えない。もしこの質問であの噂について聞いたら、どうなるのかな。
でも、このまま曖昧にしておくのはやだ。言わないで後悔するなら、ちゃんと気持ちを知りたい。
『あの、ラウくん』
「なに?」
『聞きたいことがあるんだけど、』
「うん」
さっきまで楽しそうに話していた彼も、私の顔の表情を見て何かを察し、真剣な顔つきになった。
『聞いたんだよね、山下さん?って子と付き合ってるの、?』
その言葉に黙ったままの彼。やっぱりそうだったのか、
『私よりその子の方がいいよね、』
「ちがっ、!」
『だって、あの子は可愛いし、優しそうだし、私なんかよりずっとお似合いだった、』
「そんなこと、」
『それに私、年上だし、』
「それ以上言わないで!僕は、〇〇ちゃんが好き」
『っ、』
そんなこと言うなら、じゃあ、あの噂は何?
『なら、その子とどんな関係なの、?』
「ただの幼なじみだよ」
『そうなんだ、教えてくれてありがと』
なんで言ってくれなかったのだろう。ことは解決したはずなのに、その疑問だけが募る。
“ただの”幼なじみなのにそんな相手の家に行ったりするものか?よく考えれば普通のことでも考えてしまう。
なんか、考えれば考えるほど、自分に苛立ってきた。
『もし、ラウくんが別れたかったら別にいいよっ、』
思わず考えていたことを口に出してしまった。
言った直後にすごく後悔した。
「なに、それ、」
少し涙ぐんだ声の彼の顔を直視できない。
「もういい、帰る」
そう言って私の横を通りすぎ、早い足取りで去っていった。
『待って…!』
その頃には遅かった。
キィ………..ドンッ………!
大きなトラックが聞いたことのないような音を立て、歩道に乗り上げた。
それは私の背後、ラウくんが歩いていった方に。
私は急いで人混みを抜け、彼を探した。だけど、見つからない。
そんなわけ…!
大きな音が聞こえた方へ行くと、たくさんの人たちが立ち止まり言葉を失う人もいれば、友達とヒソヒソ話したりしている。
急いでその人集りの中に駆け込んだ。
『ぇ、』
そこで目にしたのは、制服を着た、背丈が大きい綺麗な金髪の男の子、私の彼氏だ。
嘘だと思いたい。
近くにいた人が呼んだ救急車が来た。
そして、その場で死亡が確認された。
私はその場に立ちすくみ何もできなかった。重い足を一生懸命動かし、来た道を戻った。
なんで、こうなっちゃったのかな?
もし、私があんな事を言わなきゃ、今頃楽しくパフェでも食べて笑っていられたのかな?
それか、無理やりでもそこで呼び止めれば何も起こらなかったのかな?
家に帰って、崩れ落ち、今まで一粒も出なかった涙が初めて溢れる。
さりげなく歩道側を歩いてくれるところ。寒そうにしてると、手を握ってポケットへいれてくれるところ。私の小さな歩幅に合わせてくれるところ。
ラウくんって呼ぶと笑顔で駆け寄ってくるところ。それから…
今になって彼への想いが止まらなくなる。
全部全部大好きだよ。
たぶんこれから先、君以外を好きになることはないと思う。
確かに、ただの幼なじみと答えた君の瞳には迷いも嘘もなかった。
なんで気づかなかったのかな。
それによく考えれば、いつも好きって言うのも、手を繋ぐのも、キスをするのもラウくんからだ。
ごめんね。
無意識に取り出していた白紙に想いを書いていた。何枚も何十枚も、
今まで伝えられなかったこと、全てを書き留めた。
こうすれば彼に届くかな、
いつの間にか涙は乾いていた。
最後に。
ラウくん、ずっと好きだよ。
~fin~
コメント
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え、なんか、目から、めっちゃ光出てくるんだけど、え、?
好きだったよ。じゃなくて、好きだよ。っていう現在進行系の好きは 好きだわ。お!3連続投稿!!頑張ったの?偉いね(*‘ω‘ *)((ヨシヨシ
まじで、涙目になった…