「せんせっ…好き、だよ、」
『わたし、も、』
放課後の保健室、毎日のように鳴り響くいやらしい水音。
生徒と先生の禁断の恋。
あの頃は何も要らなかった。君が求めてくれる、それだけで嬉しかったのに、
“先生、ちょっと休んでもいいですか”
『もしかして月経かな?』
“はい”
『わかった、寝てていいよ』
私は高校の養護教諭をしている。
今日はもう仕事が終わったので、横になっている女子生徒と少しお話をして暇をつぶすことにした。
勉強の事、部活の事、そして恋の事。この子の恋は純粋でピュアで、とても初々しい素敵なものだった。
気づいたら時計の針は一周していて、一時間が経ったことを示した。
“ありがとうございました!”
『はい!またいつでも来てねー』
と、手を振って保健室の外まで見送った。
足りなくなったガーゼを補充して、スマホを見て暇を持て余していた。
下校の時間になると、外から楽しそうな笑い声がちらほら聞こえる。
そろそろ来る頃かな、
と考えていたら、扉が開く。
「せんせー!お待たせ」
少し明るい髪の毛が目立つ男の子。彼は入ってきてそのまま私に後ろから抱きついた。
それから肩に顔を乗せ、待った?と聞いてきた。
彼の吐息が私の少し露出した肩から胸元までにあたる。
『ううん』
そう言い、頭だけ振り向かせて、そっと、触れるだけのキスを彼にした。
そして、改めて正面を向いてから抱き締め、離れては再びキスをする。
そのキスはどんどん深くなっていき、そのまま二人でベットに倒れ込んだ。
彼は慣れた手つきで私のブラウスのボタンを外して、熱い唇を今度は首や鎖骨に運ぶ。
田中樹、愛おしくてたまらない人。
なんでこんな関係になっちゃったんだろ、
彼はまだ高校二年生。こんなに若いのに、もっといい人がいるはずなのに、
でも樹くんは他の男とは違った。彼は、私の顔も身体も中身も全てが好きと言ってくれた。
最初はもちろん、本気で好きになんかなるとは思わなかった。
けれど、好き、愛してると言ってくれた彼の瞳を見て、私も惹かれていった。
『じゅり、くん…』
「っ、なに、?」
『好き、』
だから、今日は私から言ってみた。
一緒に果て、肩で大きく息をしながら抱き締められた。
「俺も、」
最後に私のおでこに口付けをし、彼は帰っていった。
『おはようございまーす!』
次の日、学校へ行くといつも通り明るく笑顔で挨拶をして、職員室に入った。
だが、誰一人返事はしてこない。そして冷たい視線を向けられる。
なきかあったのかな、それとも、私がなにかしちゃったのかな、
嫌な予感がして焦ることしかできなかった。
それから校長先生に呼び出された。
話が済み、校長室へ出て自然と涙が出る。
勘が当たってしまった、樹くんとはもう会えないんだ。
どうやら昨日の放課後に、私たちが服を脱いで抱き合ってるところを見た生徒がいたらしい。
私はさっと退職願を書き、荷物をまとめ、先生方へお辞儀をして学校を出た。
なぜかその行動に迷いはなかった。
校門を出る時、樹くんとすれ違った。遅刻寸前で急いでたのか私を通り越して行った。
だけどすぐに引き返してきて、
「え、〇〇先生、どういうこと、?」
私の姿を見て、気になる事だらけなんだろう。
『ごめんね、もう会えない、』
簡潔に伝えたはずなのに、彼は理解ができないという顔をしていた。
「は、?」
『ごめんね』
今まで堪えていたものが溢れる前に去りたかった。
『あのね…』
彼は涙目になりながら、私の話を聞いてくれた。
『だから会えない、』
「わかったよ、」
そう言って、抱き締めた。
「卒業したら、結婚しよ、?」
『うん』
私は彼の腕の中で大きく頷く。
『さよなら』
そして最後は笑顔でお別れをした。
二年後、
私は新しい仕事を始めた。
いまだに彼を思い出す。
細いのに程よくついている筋肉、ときどき漏れる暖かい吐息、全てを鮮明に覚えてる。
仕事場へ行く途中、桜の花びらがひらひらと舞っていた。
樹くん覚えてるかな、あの約束。
そんなことを思いながら、ヒールをコツコツと鳴らし会社へ向かう。
『あ、』
私は忘れ物に気づいてしまい、急いで家に戻った。
家に帰ると、玄関の前にひとりの青年が立っていた。
その人が誰なのか、すぐにわかった。
『樹くん?』
彼は振り向くと、こちらへ歩いてきた。
そのまま私の体を強く抱き締めた、あの頃のように、
「先生、迎えにきたよ」
にこっと笑う彼は前と変わらない。私の大好きな彼。
「〇〇、俺と結婚してください」
それに、はい!と笑顔で答え、キスをした。
彼といつまでも幸せに暮らせますように、
~fin~
コメント
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さあいこぉぉぉ!あぁぁぁ田中ぁぁぁぁぁ‼️好きだぁぁぁぁぁ‼️
素敵✨
…短編なの?これ?え、?短編じゃないほどの作品…二年も二人の思いが通じ合ってるってエモいし、田中一途すぎ、好き…。 なおなすごいよ!連続やん!!((ヨシヨシ