TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

今日は日本の大学に通う初日だ。

前回、私はこの最初から完全にビビってしまっていた。

自分のような人間は、日本では上手くいかないと縮こまっていた。


周りと入学時期が違い、新歓時期も終わっていた。

私は日本の大学はサークルに入るものだと思い込んでいた。

その誘いと共に下心を持って私に近づいてきた藍子を受け入れたのは間違いだった。


私は彼女が善良な人間ではないと気がついていた。

彼女の目線、言葉遣い全てが人を利用しようとする人間のそれだった。

しかし、中学時代の日本での失敗のトラウマから誰かの助けを借りたいと思ってしまったのだ。


私は文学部のフランス文学科に入った。


理由は母がフランス文学が大好きだからだ。

思えばなぜ、住む場所も選ぶ学科も母に気を遣っていたのだろう。


前回、私は事故的とはいえ母に殺されている。

あの時だって、母は父に裏切られた恨みばかりだった。

彼女は私がどのような気持ちになっているのかなんて、少しも考えていないだろう。


私は心の奥底で母が愛しているのは、父だけだと気がついていたのだ。


自分は父の気持ちを繋ぎ止める付属物にすぎないと分かっていた。


語学のクラスは少人数に分けられてる。


授業が終わるとすぐに、私に最初から話しかける気だっただろう藍子が話しかけてきた。


「初めまして、藍子って呼んで。今日、帰国子女の子が来るって聞いて楽しみにしてたんだ。フランスにも住んでたんでしょ、勉強教えて。私、テニスサークルに入っているんだけど、良かったら一緒にどお?」


藍子には自分のこの時の歪んだ顔を鏡で見て欲しい。

彼女はこの後、授業の和訳や宿題を全て私にやらせる。


「藍子さん、私が勉強を教えたら、あなたは何をしてくれるのですか? サークルには興味ありません。あと、私は仲良くする相手は選ぶ主義なので、今後話しかけないで頂けますか?」


「何をしてくれる? なんて、友達ってそのようなものではないでしょ」


藍子がまるで私に傷つけられたような表情を作って返してくる。


周りが心配したような表情で、彼女を見つめている。


本当にみんなこんな下手な芝居に騙されているんのだろうか。


「友達ではないので、全てはギブアンドテイクです。それから、今日の授業のプリントはフランスでは幼児が読む漫画が教材です。この程度のもので助けが必要では、旅行するにも困りますよ。あなたは、私以上に日本語が弱いようですね。話しかけないで欲しいと先程も言ったはずです」


日本の大学は思っていた以上に授業もテストも適当だった。


私の入った大学は日本では就職にも強い有名私大らしい。


しかし、学生は大学に入ったら遊ぶのに夢中だ。


「なんか、感じ悪っ!」

藍子はわざと聞こえるように呟くと、私を睨みつけて去っていった。


彼女は私を利用して、自分が楽をすることを考えて私に近づいた。


彼女が今後私に嫌がらせをしてこなければ、彼女への復讐はこれで終了だ。


私は回帰前にブログへ誹謗中傷を書き込んだのが、藍子ではないかと睨んでいる。


もし、今回も同じようなことをするなら、彼女が一生忘れられないレベルの復讐を決行する。


「木嶋さん、初めまして。川田舞と申します。私、交換留学制度を検討しているんです。やはり、授業の内容だけはフランスでの生活は苦労しますよね。もし、宜しければフランスでの生活など聞かせて頂けますか?」


私は思っても見なかった川田さんからの申し出に嬉しくなった。

彼女はこの教室で、唯一本気で勉強を頑張っていた人だ。


そして彼女は、2年次には交換留学制度を利用してフランスに行ってしまう。


私はずっと彼女を応援していた。


「アオって呼んでください。私も舞ちゃんの話が聞きたいです」


いつも先生を捕まえて必死に質問をしてた彼女は明らかに周りから浮いていた。


みんなが髪を染めて巻き髪にしてしている中、彼女は黒髪のおかっぱにメガネ姿だ。


周りに合わせようとせず、自分の夢に向かっている彼女が眩しかった。


私も恐れず自分を貫けばよかったと、彼女の姿を見て何度後悔したことか。


「アオちゃん、実はパティシエになるのが夢なんです。それでフランスでお菓子の勉強が本格的にしたいと思っているんです。よければギブアンドテイク用の手作りマカロンがあるので食べてみてくれますか?」


私は彼女とは友達となりたかったので、ギブアンドテイクは成立しなくて良いと思っていた。

しかし、茶目っ気たっぷりな顔でタッパーから色とりどりのマカロンを出してきたのが嬉しくて一個つまんだ。


「美味しいです。プロですか? 今まで食べた中で一番かも知れません」


私が思わず言った言葉に彼女が微笑む。


日本で初めて本当の友達が作れそうで私は嬉しくなった。


loading

この作品はいかがでしたか?

28

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚