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#主人公最強
ウサギ様
431
麗太
513
5,470
「……チッ、しぶといな。神代の出来損ないの分際で、これほどの精神的耐久力があるとはね」
水無瀬の三白眼に、初めて明確な焦燥の光が混ざる。数秒で終わるはずだった洗脳は、遼太の執念に近い抵抗によって、泥沼の膠着状態へと引きずり込まれていた。
キィィィィィィィン!!!!
共鳴ノイズがさらに一段、高音へと跳ね上がる。奪おうとする水無瀬と、極限の淵でふみとどまる遼太。妖界の巨大なアジトの中に、張り詰めた弓の弦のような、恐ろしい静寂と緊迫感が満ちていく。
――その時だった。
「……あーあ。うるさいなぁ」
どこか眠たげで、ひどくマイペースな声が、重苦しい空間にふわりと響いた。
「なっ……! 誰だ!」
水無瀬が驚愕して視線を巡らせる。遮断結界に守られたこの最奥のアジトに、誰も侵入できるはずがない。水無瀬の背後、暗闇の中にぼんやりと浮かび上がったのは、見事な九つの尾。月明かりを宿したかのような美しい白銀の毛並みが、闇の中で静かに揺らめいていた。しかし次の瞬間、その姿は完璧な人間の少年の姿へと擬態していく。星宮星蘭。水無瀬の計画に協力する、もう一人の冷酷な協力者。裏の世界で恐れられる高位の妖――「九尾の狐」である彼は、今の遼太にとっては絶望の上塗りでしかない存在だった。星蘭は大きなあくびを噛み殺しながら、めんどくさそうに頭をかいた。
「せっかく静かな夜だから寝ようと思ってたのに。こんなところまでノイズを響かせないでよ、水無瀬。僕、起こされるの、一番嫌いなんだけど」
「星宮……! 貴様、なぜ勝手にここへ入ってきた!」
水無瀬が呪具を握り直したまま、鋭い視線で睨みつける。いくら身内とはいえ、自分の極秘アジトに音もなく侵入されたことが気に食わないらしい。星蘭は気分良さそうに、懐から取り出した三色団子を一本ぱくりと口に含むと、もぐもぐと咀嚼しながらマイペースに呟いた。
「ん、このお団子おいしい。……そんなに怒んないでよ、別に手伝いに来てあげただけ。君がいつまで経っても終わらせないからさ、様子を見に来たの」
星蘭の優しい、けれど感情を完璧に読み取る怜悧な瞳が、椅子に縛り付けられたまま極限の状態で耐え続けている遼太へと向けられた。その眼差しは、哀れみでも感心でもない。ただ捕食者が獲物の価値を品定めするような、冷徹で無機質なものだった。
「ふ、ざけ……るな……。お前、たちの……思い通りに、なんか……っ」
洗脳の濁流に飲まれそうになりながらも、遼太は消え入りそうな声で、しかし確実に二人を拒絶する。完全に孤立無援。水無瀬だけでも絶望的なのに、さらにその仲間である最強の九尾の狐までが敵として目の前に立ちはだかっている。限界を超えた重圧。頭をかきむしりたくなるほどのノイズが脳を焼き、いつ自我が崩壊してもおかしくない最悪の闇。それでも遼太の心は、ただ「自分であり続ける」ためだけに、奇跡的な執念でギリギリの踏みとどまりを見せていた。
「……フン、手伝うと言うなら、今すぐ君の幻術でこの神代の防壁を粉砕してくれ」
水無瀬が冷酷に言い放つ。星蘭は残ったお団子をのんびりと口に放り込み、スッと細い指先を突き出した。その周囲に、青白い「狐火」が美しく、そして冷酷に燃え上がる。
「えー、めんどくさいなぁ。僕、気分屋だからさ……。でも、早く終わらせて寝たいし、いっちょ壊してあげるよ。その頑固な心」
気だるげに微笑む星蘭。彼から放たれるのは、明確な敵意と圧倒的な妖気のプレッシャー。星蘭が味方になる兆候など、今のこの絶望的なアジトのどこにも存在しなかった。ただ二人の強大な妖に挟まれ、遼太はさらなる悪夢の深淵へと引きずり込まれようとしていた――。
コメント
4件
凄い!うまい!ありがとう!新庄さん
うわ、星蘭、めちゃくちゃ強そうだけど掴みどころのないキャラしてますね……「寝てたのに起こされた」って三色団子食べながら言うのがもう恐ろしい(笑)。水無瀬一人でも絶望的なのに二人目が出てきて、遼太くんほんとピンチすぎて心臓に悪いです。でも、あの状態でまだ“自分であり続けよう”としてる執念、応援したくなりますね。九尾と人型の切り替え描写が幻想的で好きです。続き、気になりすぎます……!