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はは……
だれか、
だれか、たすけてよ……!!
誰か…………
声にならん声が、のどの奥でぶるぶる震える。
涙も、もう出ない。
泣き疲れて、なーんも感じんばってん、ただ助けてほしい気持ちだけが胸の奥で熱う渦巻いていた。
そのときやった。
「、!? 大丈夫……?」
どこかくぐもったような、でもあたたかい声が耳に届いた。
――誰?
音の方を見上げると、逆光の中に人の影が立っていた。
ほこりと灰の中でも目立つ、紫がかった髪が、わずかに光を反射して揺れている。
ぼんやりとした視界の中で、その人が一瞬こちらを見たと思えば――すぐに駆け寄ってきた。
しゃがみ込むと、こちらの顔をのぞき込むようにして、そっと問いかける。
「……声が出ない、のかな? うん、いいよ。無理しなくて」
やわらかく笑ったその人は、少し息を切らしていた。
軍服じゃない。大人でもない。
けれど自分よりも少し大きくて、何より――人間の匂いがした。
「……傷、けっこうあるね。ひどくはないけど、手当てしたいから……良かったら、こっち来てくれる?」
その手は、灰で汚れているのに、どこか優しいぬくもりがあった。
久しぶりに感じた“体温”だった。
ふらふらと身体が動く。なにも考えずに、その手を取った。
手を握りながら歩くと、瓦礫を避けながらの小さな道があった。
その先に、半分こわれた古いバスが横たわっていた。
「ここ、今はぼくたちの避難場所なんだ。あまり安全じゃないけど……屋根はあるし、寝られるよ」
バスの中には、毛布が数枚と、缶詰の空き箱がいくつか転がっていた。
壁には子どもが描いたような絵が貼ってある。
夕焼けと、鳥と、家族の絵。
「……あ、俺? 俺は……」
その子は言い淀んだ。
でもすぐに、少し笑って名乗った。
「💜だよ」