「…ただいま、お爺ちゃん…!」
ー沈んだ気分で、学校から、帰ってきた私は、真っ直ぐに、
「朝日 神社」
ーの、本殿に向かい、着物姿の、男の人に、声を掛けた。
「……おぅ、お帰り、未羽菜!」
ー本殿を、箒で掃除していた、お爺ちゃんは、その手を止めて、私に、微笑みかけてきた。
ーお爺ちゃんは、此処、
「朝日 神社」
ーの、神主さんだ。
70歳には、見えないくらいの、丸顔の、可愛らしい、男の人、という感じ。
ーそして、お爺ちゃんは………、
…家族の中で、私と同じく、悪霊や、怨霊が、「視える」人でもある。
「ーお前が、制服姿で、着替えもせずに、此処へ駆け込んでくるのは、珍しいなぁ………。」
ー何か、あったんだな……?
ー不意に、真剣な顔になって、そう尋ねてきた、お爺ちゃんにーー、
「……うん、
………ーあのね、実は…………」
ー私は、今日の、学校での、出来事を、順を追って、話し始めた。
「……と、いうことがあったの。」
『……信長に、縁し者よ……
ー………ーこのままでは、済まぬことを、覚えておけ………』
ーそう告げて、消滅した、あの、悪霊の
ー1人の女性のー
………その声を、姿を、思い出した私は、だんだんと、怖くなってきて、小さく身震いする。
「……ーそうか、そんなことが……。
ー怖い思いをさせたなぁ、未羽菜……。」
ーお爺ちゃんは、そう言って、手を伸ばすとーー、
………私の頭を、ぽんぽんと、優しく、撫でてくれた。
「……有り難う、お爺ちゃん……、
ーでも、怖い思いをしているのも、悪霊を、退治するのも………」
ー私にとっては、当然のことだから………!
ーそう結んで、私は、本殿の石段に、そっと、腰を下ろして、彼を、上目遣いに、見つめた。
「……それでーー、
ーお爺ちゃんは、この件について、どう思う………?」
………私ね…………、
…正直、何だか、嫌なことが、起きそうな予感が、するんだけど……………。
ー私の問いに、お爺ちゃんは、暫く、
「うーん、
……そうだなぁ………」
ーと、考え込む。
………一体、どんなことを、考えているんだろう……………?
(………もしかしてーー、
お爺ちゃんには、何か、良い考えでも、あるのかな………?)
ーー私が、思わず、息を呑んで、勢い良く、身を乗り出すとーー、
「ーまぁ、良い考えは、浮かばんが………、
ー何とか、なるだろう…………!」
ーお爺ちゃんが、にこにこと、笑って、そう言った。
ーーずっこーっ!!
(ー浮かばない、のおおおおおおおおお……………っ……………!?)
ードタン!
ー私は、思いっきり、石段から、ずっこける。
「ーおや、どうした、未羽菜?
…………物凄く、落ち込んでいるようだけど……………?」
「……………。」
ー落ち込んでいるのは、貴方のせいです……………!
ーと、言いたかったけれど……………、
ーその気が、失せてしまって……………、
ー私は、黙って、唇を結ぶ。
「……大丈夫だ!
ー人生、何とかなるなる……………!」
ーと、楽しげに、宣言する、お爺ちゃんに、
(ー何とかなるわけ、無いでしょおおおおおおおおお…………………っ…………………!?)
ー私は、思わず、心の中で、大きく、突っ込んだ。
………学校のことがあって、すっかり、忘れていたけれど……………、
ーお爺ちゃんは、物凄く、楽観的な人、なんだった……………!
「………ううーー、
ー私としたことが……………!」
ーそれを、すっかり忘れて、お爺ちゃんに、相談してしまうなんて……………………。
ーこれからのことが、思いやられてーー、
私は、首を傾げる、お爺ちゃんを、置いておいて、ため息を、吐くのだった………………。
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