鍵を開け、暗闇の中で手探り、指先で電気のスイッチを押した。
パッと明るくなる玄関で窮屈な靴を脱ぎ捨て、フローリングに足を着ける。
ストッキング越しに触れた、どこかひんやりとした自宅の感触に、どうにか一週間を乗り切れたことを実感した。
ほう、と胸を撫で下ろしながら、ひたひたと廊下を歩き、リビングに向かう。
ソファの脇に鞄を置いて、ジャケットを脱ぎ、そのまま放る。
腕時計を外しながら洗面所に向かい、手洗いうがいを済ませてから顔を上げると、鏡に映った自分を見て、小さく苦笑が零れた。
「疲れた顔……」
とても結婚を控えた女の顔じゃないわね。
百年の恋も冷めてしまいそう。
笑えもしない冗談が、真新しい記憶の中の声色と重なった。
「――むしろ、お前が俺を責めるべきだな」
そう、彼が苦笑とともに言った。
決して、そんなことを言わせてはいけなかったのに。
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