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#山中柔太朗
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舜太side
柔太朗さんが復帰して数日。
また、あの訓練の生活が戻ってきた。
大変だけど、それ以上にやりがいがある。
初出勤の現場で、あの小さな女の子に、
「先生ありがとう」と言われたのを今でも鮮明に覚えている。 こんな俺でも、誰かの役に立てるのが嬉しかった。
「〇〇さん、おはようございます」
「体調はどうですか?」
「それは良かったです、また来ますね!」
11時からまた訓練。
それまで、患者さんの対応をしたり、隙間時間には本を開いて色々勉強したり。
やることが多いけど、毎日充実してるなぁ、なん感じていた。
「曽野くん、〇〇さんの採血って?」
「終わりました!体温も測ってあります!」
「良かった!ありがとうね!」
「いえいえ!」
通りすがりの看護師さんとそんなやり取りをしていた時のこと。
『_工事現場にて、クレーンの誤操作による鉄骨落下事故が発生!!』
『登校中の小学生が下敷きになっている模様!』
『EBiSU MERの出動を要請する!!』
『繰り返す_』
「…俺行ってきます!すみません!」
こうして出動するのにも少しづつ慣れてきた。
今までは柔太朗さんに手を引かれて行ってたのが、自分一人でも体を走らせることが出来るようになっていた。
駐車場に行き、全員で車に乗り込む。
「現場の様子は?重傷者は?」
仁人さんが答える
「現在確認できてるだけで数名、複数が下敷きになっており今レスキュー隊が鉄骨を退かしている最中だと」
「了解、太ちゃん今のうちに麻酔の準備」
「了解!」
「降りたら、全員で状態確認」
「全員で?」
「今回は、大人じゃないから」
「太ちゃんはMERカーの準備だけ出来たらすぐにこっちの応援を」
「俺ら4人はすぐ処置できるように準備」
「これ、渡しとくから」
「舜太も手伝って」
「はい!」
現場に到着した。
「こちらです!!」
レスキュー隊員に案内される。
現場には、まだ工場の資材が散乱していた。
その向こうに、小学生たちがいる。
レスキュー隊が鉄骨を慎重に退かしていく。
「救出!」
鉄骨が退かされた。
俺らは一斉に子供たちの元へ駆け寄った。
太智side
MERカーでオペ室の準備を終える。
佐野さんに言われたように、俺も子供たちの状態確認の応援へ走った。
「大丈夫?」
俺が声を掛けたのは、まだ1年生ぐらいの小さな男の子。
ランドセルも背中に比べて大きく見えた。
「先生……」
「うん、どこが痛いかな?」
「ここ…いたい」
そういって胸の辺りを抑える。
「胸?」
「うん……」
俺は表情を引き締めた。
近くにいた舜太くんを呼び止める。
「舜太くん!」
「はい!」
俺が呼ぶと、舜太くんが駆け寄ってくる。
「この子、胸の痛みを訴えてる」
「分かりました」
俺たちはすぐに状況を確認する。
明らかに、他の子とは違った。
「……太智さん」
「これ…かなりまずいかもしれません」
「搬送を急がなきゃ、間に合わないかも…」
「時間がかかるならオペするしか……」
「俺もそう思う」
「今すぐ、搬送先を……」
「舜太ー!!」
「こっち、もう1人!!」
「えっ…でも、」
「俺が探しとくから、行ってきな」
「……すみません、お願いします!!」
舜太くんは、柔太朗の所へ走って行った。
俺はもう一度男の子を見る。
「大丈夫やからな」
「……」
「…聞こえるか?」
「……せんせい」
「おうち、かえりたい…」
「…帰れるよ、絶対帰れる」
「ほんと……?」
「うん、先生に任せな!」
そうは言ったものの、正直時間がない。
俺は無線を手に取った。
「こちら塩﨑!」
「小学生1名、胸部症状。大動脈解離の可能性あり、緊急オペをお願いします!」
「至急お願いします、!!!」
『太ちゃん!』
「佐野さん!」
『ごめん、今手が離せない!!』
『こっちにも重症患者がいる!他を当たってくれ!!』
「でも、この子…!!」
『分かってる!!』
『でも、俺も今無理だ!』
通信が切れた。
俺はすぐに吉田さんに繋ぎ直す。
「こちら塩﨑!」
「この子、かなり危ないです、搬送を待っていたら間に合わない…!」
「緊急オペを……」
『すみません…こちらも今手が……!!』
『救急隊員に引き渡すか、曽野くんに頼んでいただけませんか?』
「引き渡してたら、もう時間が…!!」
『申し訳ない、終わり次第すぐ向かいます』
再び通信が切れてしまう。
俺は当たりを見渡す。
舜太くんは、今柔太朗と別の患者を処置している最中だった。
誰も、動けない。
「…せんせぃ、くるしい……」
「……」
俺は目の前の男の子を見る。
小さな身体に、不安そうな目。
「いたいよ…せんせいたすけて……」
「……」
俺は唇を噛む。
誰も、来られない。
ここにいるのは自分だけだ。
俺は無線を取った。
「…こちら塩﨑」
「小学生1名、MERカーで緊急オペを行います」
『…太ちゃん!!執刀医は?』
勇斗さんの声。
俺は少し怖くなった。
でも、やるしかなかったんだ。
「……僕がやります」
俺はその子をMERカーまで運んだ。
麻酔を入れた所で、舜太くんが戻ってきた。
「……太智さん?」
「何を…」
「この子、今すぐ手術する」
「……!でも……!!!」
「搬送待ってる暇ない」
「手伝ってくれる?」
「……はい、任せてください!」
「ありがとう…!」
「何すればいいですか?」
「いつも通りでええよ」
そこからは 時間との勝負だった。
俺はできることを最大限に行う。
そして、 この子を助けるために。
自分にできる限りの判断をする。
「……」
時間の感覚がなくなっていた。
舜太くんがそばで動いている。
「…血圧安定してます」
「脈拍も異常ありません」
「………よし」
「…完了……!!」
ようやく。
「終わった……」
俺は大きく息を吐いた。
舜太が男の子を見る。
「……状態、落ち着いてます」
「よかった……」
俺はその場に座り込みそうになった。
「成功、した……」
「はい」
舜太くんも笑った。
「よかったです……!」
俺は男の子を見る。
「……頑張ったな」
その後、片付けをして戻る。
「…太ちゃん!!」
「ごめん、行けなかった」
「…全然大丈夫やで!」
「みなさん、本部から連絡です」
柔太朗が一息ついて、口を開く。
「今回の出動、軽傷者8名、重傷者3名。」
「死者は………」
「………0です!!」
その言葉に、5人で顔を見合わせた。
「よかったぁ…」
「そんなことより……あの男の子、塩﨑先生が執刀したんです?」
吉田さんが問いかける。
俺は少し固まってしまった、と思う。
「……おん!まぁな…笑」
「そうじゃん、すんなり受け入れたけど、太ちゃん執刀できんの?」
「…医者の免許持ってるんですか?」
「…いや、まあまあまあ!!全員助かったからええやんか!!」
「ほら、帰るでみんな!!」
誰も、 何も言わなかった。
俺が麻酔科医であること。
本来なら執刀を担う立場ではないこと。
そんなことを口にする人はいなかった。
ただ、 一人の子どもの命が助かった。
それだけだった。
「帰ろっか」
佐野さんが言う。
「はい!」
5人でMERカーへ向かう。
俺は最後に、一度だけ振り返った。
救急搬送された男の子。
きっと。
またランドセルを背負って学校へ行ける。
そう思うと。
胸の奥が少しだけ温かくなった。
「……」
今日も 死者は、ゼロ。
それでいい。
今は、それだけで十分だった。
病院に着く。
みんなで疲れたなぁ、なんて言い合いながら廊下を歩いていた。
「塩﨑先生」
「……?」
振り返ると、病院職員が立っていた。
「教授がお呼びです」
「……俺?」
「はい」
「…了解です」
「みんな先行っとって!」
「太智さん、大丈夫ですか…?」
「大丈夫大丈夫!」
俺は笑った。
「ちょっと教授とお話してくるだけやから」
そう言って 一人で教授室へ向かった。
「失礼します」
「入ってくれ」
扉を閉める。
教授は机の前に座っていた。
その表情は。
いつもの穏やかなものではなかった。
「……座りなさい」
「はい」
椅子に座る。
教授はしばらく俺を見ていた。
「今日の現場についてだ」
「報告は受けている」
「小学生の患者に対し、君が執刀を行ったそうだな」
「……はい」
俺は小さく頷いた。
「なぜだ?」
「君は麻酔科医だろう」
「……」
「なぜ執刀した?」
分かっている。
当然の指摘だ。
「他に担当できる医師がいなかったからです」
「それだけか?」
「……」
「塩﨑くん」
教授の声が低くなる。
「それは、君が執刀していい理由にはならない」
「……はい」
「本来、麻酔科医が執刀を担当することなど想定されていない」
「……」
「今日の判断は、医療体制上、極めて異例だ」
俺は俯いた。
「……申し訳ありません」
「謝れば済む問題ではない」
「はい」
「もし手術がうまくいかなかったら?」
「もし患者に重大な問題が起きていたら?」
「君は責任を取れたのか?」
答えられない。
「……」
教授の言っていることは正しい。
俺だって分かってる。
「今回、患者が助かった」
「それは結果だ」
「……はい」
「結果が良かったから、判断そのものが正しかったことにはならない」
「……」
「救命隊だからといって、何をしても許されるわけではない」
「君たちは医療チームだ。役割分担がある」
「……はい」
「それを君自身が崩してしまった」
「……申し訳ありません」
教授はしばらく黙っていた。
「なぜだ」
「……え?」
「なぜ、そこまでして執刀した?」
「……」
あの子の顔が浮かぶ。
「……俺は、今回の判断を正しいとは決して思っていません」
「でも、あのまま搬送を待てばあの子はもう二度と家に帰れないかもしれなかった」
「新しいランドセルも、背負う機会のないまま終わってしまうかもって……」
「……そう考えてしまいました」
「……」
「目の前の子を、”俺は麻酔科医だから”と見捨てることも出来ませんでした」
教授が黙り込む。
少し考えたような表情を浮かべる。
「……本当に申し訳ございませんでした」
「塩﨑くん」
「…はい」
「君がなぜ、”麻酔科医として”この病院に移動したかは…分かっているだろう?」
「……はい」
「それを踏まえた上で、君はその判断を?」
「……」
「…まぁいい、今回は特別に見逃すとしよう」
「緊急時に誰が何を担当するのか。その体制自体に問題があった」
「今後の対応は隊全体で考える」
「今日はもういい」
「…はい 」
「すみません、失礼しました……」
立ち上がる。
扉に手をかけたところで。
「塩﨑くん」
「はい」
「患者を救いたいという気持ちまで否定しているわけではない」
「……」
「その気持ちは忘れないでほしい」
「……はい」
俺は頭を下げた。
「ありがとうございました」
廊下に出る。
俺は、思わず壁にもたれかかってしまった。
分かってる、 俺だって。
今の俺は、麻酔科医だ。
東京都渋谷区恵比寿総合病院のB棟。
それが今の俺の居場所。
でも。
「……」
俺は、本当は。
コメント
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えっやばめっちゃ気になる…!! 続き楽しみです💞ありがとうございました✨
**美月ゆめか🌸です〜!!** 第6話読んだよ〜〜〜!!😭💕 太智さんが「俺がやります」って言った瞬間、マジで鳥肌立った…!!麻酔科医なのに目の前の子を助けるために執刀する覚悟、かっこよすぎる…!でも教授に怒られるシーンは胸がギュッてなったよ…「役割を崩した」って正論だけど、あの状況で他に誰もいなかったのも事実だし…。最後の「俺は、本当は」のところ、なんか過去がありそうで気になる〜!!次話も絶対読む!!🫶✨