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『 雪 』@夏休み期間毎日投稿
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成瀬りん
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引き続き、エイバス近くの森の中。
他の冒険者も魔物も寄り付かない開けたエリア。
「いよいよ本題いくか」
「だね!」
俺とテオは、ほど良い大きさの切り株にそれぞれ腰を据える。
1週間後のダンジョン再戦に向け、【光魔術】の強化方法を考え始めた。
さて、魔術の威力を上げるには、たくさんの方法がある。
ゲームにおける定番は、以下の4つだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1、自身の『LV』を上げ、魔攻をアップ。
2、魔術の『スキルLV』を上げる。
3、威力アップ効果を持つ『武器』等に頼る。
4、より強い威力の『術式』を使う。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それとなくテオに確認したところ、これらの方法はこの世界でも共通らしい。
「……1と2は、今回却下だな」
「俺もそー思う!」
手元の紙にメモをしながらつぶやくと、間髪入れずにテオも同意した。
1つめは、自身の『LV』を上げ、魔術攻撃力をアップすること。
だが俺のLVを上げると、さらにボスまで強化される可能性がある。
スキル【魔王の援護】の仕組みが読めない以上、今回は避けておきたい。
2つめは、【光魔術】の『スキルLV』を上げること。
長期的には有効な方法だと思う。
だけど熟練値を貯めるには、1週間だけじゃ時間が足りない。
「……次は3か」
魔術の威力を上げられる武器・魔導具などは、ゲーム内だと多く存在した。
「エイバスの街だと、魔術攻撃強化系の武器とかってどんなの買えるんだ?」
俺がたずねると、テオは難しい顔になった。
「ん~……正直、大したものは売ってないと思う」
「なんで?」
「ほら、魔王が現れるまで平和な時代がずっと続いてたじゃん? エイバス辺りの魔物はそんなに強くないし、しかも拠点にしてる冒険者も少ないからさ……」
「売れないんじゃ、取り扱う店も少ないよな」
「強力な武器が欲しいなら、強い魔物が出る街の武器屋がいいよ。そういうとこで戦う冒険者は良い武器を惜しみなく買うから、品揃えもすごいんだよねー。ま、そのぶん値段も張るけどさ!」
「なるほど……」
確かにゲームでも、魔王城に近づけば近づくほど強力な武器を売っていた。
あれも需要と供給の問題があったのかもな。
「ってことは3も難しいか……じゃ、4を試すしかないな」
「だねっ!」
4つめは、より強い威力の『術式』を使うこと。
現状、俺が使える攻撃魔術は『光球』のみ。
ゲームと違い、この世界の魔術はイメージを固めないと発動できない。
この仕様に慣れるため、あえて俺は『光球』の練習だけをほぼ毎日続けてきた。
攻略サイトには、強力な術式も多数載っている。
だが、俺のMPは正直なところ、最強クラスの術式を唱えるには心もとない。
この間のテオの【魔術合成】の大爆発もあったしな。
いきなり冒険するより、できる範囲を少しずつ広げたほうが安全だろう。
とはいえ威力がある程度はないと、そもそもボスに通用しないし……。
……つまり、選べる選択肢は、自然と限られてくるというわけだ。
「まずは『矢系』を試すつもりだ。単体攻撃の魔術の基本だから、これさえ出来ればステップアップしやすい気がするんだよ」
魔力を鋭い矢の形に固めて具現化する『矢系』。
攻撃特化の術式で、球系より威力は高い。
だが今の俺の魔攻では、小鬼の洞穴のボスに通用するほど威力は出ない。
俺の狙いはあくまで、そこから派生する強力な術式だ。
矢系の派生には、一回り大きい強化版術式の『投槍《ジャベリン》系』をはじめ、伝説の武器・空想の動物等をモチーフにした術式がたくさんある。
そのためにも、まずは『矢《アロー》系』を習得しないとな。
「いいじゃん!! 1週間しかないし、単体攻撃に絞るのはありだと思う!」
テオもすぐに賛成してくれたってことは、方向性は間違ってないだろう。
早速、矢系の【光魔術】を試してみるか。
ペンと紙は、いったん【収納】に放り込んだ。
ゲームでの矢系術式の動きとエフェクトを頭に浮かべる。
自分が弓と矢を持っているところを強く想像していく。
イメージをしっかり固めたところで、おもむろに詠唱を始めた。
「……光よ集え…………そして……」
詠唱に導かれるよう、俺の手に、白く細身な光の弓矢が現れた。
少し遠くに生えた木に狙いをつける。
矢をつがえ、弓の弦をゆっくりと引く。
その動きに合わせるように、徐々に輝きが増していく光の矢。
右手を引いて引いて、これ以上は無理だという段階まで引き絞る。
今だ、と思ったその瞬間。
俺は叫び、魔力の矢を放った!
「貫け! 光矢」
――ヒョウッ!
白く輝く光の矢が一直線に飛んでいき、木の幹へと突き刺さる。
そして、パッと散るように消えた。
「おっし!」
俺が喜びの声をあげると、テオが嬉しそうに駆け寄ってきた。
「決まったなっ」
「ああ! じゃ次は……投槍系でも試してみるか!」