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『 雪 』@夏休み期間毎日投稿
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成瀬りん
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数十分後。
「……うまくいかねぇ……」
練習に疲れた俺は、ぐったりと切り株に座っていた。
俺が試すことにしたのは、【光魔術】の光投槍。
消費MP15の割には威力が高く、コストパフォーマンスが良い術式だ。
ゲームで術式を研究し続けている有名プレイヤーいわく、理由は単純。
魔力を『発動時の見た目』『動きの優雅さ』などの余計な部分に使わず、「相手にダメージを与える」というシンプルな目的に特化しているからとのこと。
――魔力で細長い槍を作り、それを投げて対象にぶつける。
それが『投槍系』発動時のイメージだ。
俺の場合は「光魔力で槍を具現化する」という手順までは何とかなる。
だけど、その後がどうにもうまくいかず。
何度やっても、どう投げても、狙った的に当たってくれない。
昔TVで見た、陸上競技の槍投げの動きを思い出して投げてみたり。
テオに『風投槍』を実演してもらい、その動きを真似したり。
できる限りの試行錯誤はしたのだが……とうとう集中力の限界が訪れた。
「はい、MP回復薬」
「悪ぃな」
疲れ切った俺に、テオが小瓶を手渡してくる。
瓶の蓋を開けて中身を一気に飲み干し、ぷはぁと一息。
MP回復薬は、栄養ドリンクをさらに濃縮した感じの強烈な味。
正直なところ、味わって飲むようなもんじゃない。
息を止め一気にグイッといかないと、喉につかえて飲み込めなくなる。
救いは、量が少ないところ、後味が悪くないところ。
喉さえ通れば意外とさっぱりしてるから、水での口直しまでは必要ない。
「……見てて思ったんだけどさ、タクトは、自分で槍を投げるイメージでやってるんだよな?」
「うん。なかなかイメージ通りにいかないけど、努力はしてる」
「あぁ……原因それだっ!」
「え?」
俺の試行錯誤を見ていたテオは、どうやら何かに気付いたようだ。
「ん~……そもそもタクトは『槍』って投げたことある?」
「いや、無い」
「やっぱり! 投げ方見てて何となく分かったぜ」
テオは納得したらしく、1人でウンウンとうなずいている。
「何が分かったんだ?」
「OK、ちゃんと説明する! そもそも魔術とは何かって説明は覚えてるよね?」
「えっと……『精霊の力を借りて、魔力を自由に扱う技』だよな」
「そのとおり。でも今のタクトの『光投槍』は、光の槍を具現化するとこまでは魔力を使ってるんだけど、投げる段階では魔力を全然使ってないんだ」
「……?」
テオによれば、精霊は『術者のイメージ』を汲み取って魔力を動かしている。
だから基本的に、その範囲でしか魔力は働かない。
「だからタクトみたいに『自分で投げよう』って強く意識してイメージしてると、精霊は『あ、投げる時は手伝わなくていいんだ!』って解釈しちゃうんだよ。しかもタクトは元々槍投げが上手いわけじゃないだろ?」
「正直……自信ない」
「だったら自力で的に当てられるわけないじゃん!」
そういえば、元陸上部だという知り合いから聞いたことがある。
――槍投げは意外と難しい。
――真っすぐ投げられるようになるだけでも時間かかる。
これまでの術式が何とかなっていたのは、おそらく偶然の産物だ。
光球《ライトオーブ》のときは、俺が球状のボールを投げ慣れていたから。
光矢《ライトアロー》は、魔力の弓で矢が飛んでいく姿を無意識にイメージできていたから。
「もう分かったよね?」
「ああ……自動で的に当たるようイメージすればいいんだな」
テオは満面の笑みで「その通りっ!」と答えた。
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ほんの少し休憩を挟んでから、俺は光投槍の練習を再開。
「タクト、どんなイメージで投げるか決めた?」
「おう。何となくは固まったよ」
発想を変え、投げる段階で『魔力を利用』する。
標的となる木をもう一度見据えてから、イメージを固めつつ詠唱を始めた。
「……煌めく光達よ、鋭く尖れ。その穂先を研ぎ澄ませ……」
詠唱に応えるように、俺の手へと白い光が集まる。
それから徐々に力強い槍へと姿を変えていく。
ここまでは何度も成功済み。
問題はこの後だ。
「そして……」
手の中の槍が、自ら真っすぐ的へと飛んでいくよう……。
しっかりイメージしつつ、詠唱を仕上げる!
「貫け! 光投槍!」
――ビュウンッ!
俺の手を離れた瞬間、白い光の槍は自ら加速。
轟音を立てて的にぶつかり、小さく爆発して消えた。
標的にしていた木に、ゆっくりと近づく。
「……すげぇ」
木の幹には、『光矢』の時とは違い、大きな大きな穴が開いていた。