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『タイムトラベル』
——夏。
照り返しが強い午後。
中学生のドズルとみるくは、公園のベンチで並んでいた。
みるく「今日、ほんっと暑いねぇ」
ドズル「だな。外出る気なくなるレベル」
みるく「でもアイスは美味しいとよ〜」
ドズル「それは分かる」
他愛もない会話。
ゆるい時間。
それが、普通だった。
みるく「帰ろっか」
ドズル「うん」
立ち上がって、歩く。
いつもの帰り道。
歩行者通路。
そのとき——
音。
異常なエンジン音。
ドズル「……?」
振り向く。
次の瞬間。
車が、一直線に突っ込んでくる。
ドズル「……は?」
理解が追いつかない。
ブレーキ音もない。
ただ、迫る。
ドズル「みるく——!」
手を伸ばす。
間に合わない。
衝撃。
赤い飛沫。
音が消える。
ドズル「……っ」
目の前で、
みるくが倒れる。
動かない。
ドズル「……嘘だろ」
声が震える。
駆け寄る。
抱き上げる。
軽い。
ありえないくらい軽い。
ドズル「なんで」
返事がない。
ドズル「なんでだよ……!」
喉が裂けるような声。
ドズル「みるく、起きろ」
揺らす。
反応がない。
ドズル「やめろよ……」
ドズル「こんなの……」
受け入れられない。
受け入れたくない。
腕の中で、現実が崩れていく。
ドズル「……っ」
そのとき。
視界が、強く光る。
ドズル「……?」
何も見えない。
白い光。
音も消える。
やがて——
光が収まる。
ドズルは、ゆっくり目を開ける。
そこにあったのは、
腕時計のような機械。
見たことのない形。
静かに光っている。
ドズル「……何だこれ」
震える手で拾う。
画面に文字が浮かぶ。
〈リセット〉
〈帰還〉
〈ループ〉
ドズル「……」
意味は分からない。
でも、本能的に理解する。
これは普通じゃない。
ドズル(さっきのは……)
みるく。
血。
倒れた身体。
ドズル「……戻せるのか?」
画面を見つめる。
〈リセット〉
——過去に戻る。
——だが、行動は“なかったこと”になる。
〈帰還〉
——過去に戻る。
——行動は未来に反映される。
そして——
〈ループ〉
説明が表示される。
——過去に戻る。
——結果が望ましくなければ、何度でもやり直せる。
——成功するまで、“最初”に戻る。
ドズル「……」
息が止まる。
ドズル(何度でも……?)
つまり——
失敗してもいい。
間違えてもいい。
救えるまで、
やり直せる。
ドズル「……ふざけてる」
小さく呟く。
でも、手は震えている。
ドズル(これがあれば)
助けられる。
みるくを。
さっきの未来を、なかったことにできる。
ドズル「……」
画面を見る。
三つの選択肢。
その中で、
迷いなく視線が止まる。
〈ループ〉
ドズル(絶対に)
助ける。
一回じゃ足りないなら、
何回でもやる。
何十回でも、
何百回でも。
ドズル(成功するまで)
終わらせない。
指を伸ばす。
震えは止まらない。
でも——
迷いはなかった。
カチ。
世界が、巻き戻る。