テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
らい
43
『タイムトラベル』
——夏。
照り返しが強い午後。
中学生のドズルとみるくは、公園のベンチで並んでいた。
みるく「今日、ほんっと暑いねぇ」
ドズル「だな。外出る気なくなるレベル」
みるく「でもアイスは美味しいとよ〜」
ドズル「それは分かる」
他愛もない会話。
ゆるい時間。
それが、普通だった。
みるく「帰ろっか」
ドズル「うん」
立ち上がって、歩く。
いつもの帰り道。
歩行者通路。
そのとき——
音。
異常なエンジン音。
ドズル「……?」
振り向く。
次の瞬間。
車が、一直線に突っ込んでくる。
ドズル「……は?」
理解が追いつかない。
ブレーキ音もない。
ただ、迫る。
ドズル「みるく——!」
手を伸ばす。
間に合わない。
衝撃。
赤い飛沫。
音が消える。
ドズル「……っ」
目の前で、
みるくが倒れる。
動かない。
ドズル「……嘘だろ」
声が震える。
駆け寄る。
抱き上げる。
軽い。
ありえないくらい軽い。
ドズル「なんで」
返事がない。
ドズル「なんでだよ……!」
喉が裂けるような声。
ドズル「みるく、起きろ」
揺らす。
反応がない。
ドズル「やめろよ……」
ドズル「こんなの……」
受け入れられない。
受け入れたくない。
腕の中で、現実が崩れていく。
ドズル「……っ」
そのとき。
視界が、強く光る。
ドズル「……?」
何も見えない。
白い光。
音も消える。
やがて——
光が収まる。
ドズルは、ゆっくり目を開ける。
そこにあったのは、
腕時計のような機械。
見たことのない形。
静かに光っている。
ドズル「……何だこれ」
震える手で拾う。
画面に文字が浮かぶ。
〈リセット〉
〈帰還〉
〈ループ〉
ドズル「……」
意味は分からない。
でも、本能的に理解する。
これは普通じゃない。
ドズル(さっきのは……)
みるく。
血。
倒れた身体。
ドズル「……戻せるのか?」
画面を見つめる。
〈リセット〉
——過去に戻る。
——だが、行動は“なかったこと”になる。
〈帰還〉
——過去に戻る。
——行動は未来に反映される。
そして——
〈ループ〉
説明が表示される。
——過去に戻る。
——結果が望ましくなければ、何度でもやり直せる。
——成功するまで、“最初”に戻る。
ドズル「……」
息が止まる。
ドズル(何度でも……?)
つまり——
失敗してもいい。
間違えてもいい。
救えるまで、
やり直せる。
ドズル「……ふざけてる」
小さく呟く。
でも、手は震えている。
ドズル(これがあれば)
助けられる。
みるくを。
さっきの未来を、なかったことにできる。
ドズル「……」
画面を見る。
三つの選択肢。
その中で、
迷いなく視線が止まる。
〈ループ〉
ドズル(絶対に)
助ける。
一回じゃ足りないなら、
何回でもやる。
何十回でも、
何百回でも。
ドズル(成功するまで)
終わらせない。
指を伸ばす。
震えは止まらない。
でも——
迷いはなかった。
カチ。
世界が、巻き戻る。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!