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樹木の覆われた大自然の中、心地の良い草原のベッドで僕は目を覚ました。
身体に異常はない。自分の名前も覚えている。
一つ不明瞭なことは、何故ここで寝ているのか。
僕は、普段通り自室のベッドで寝ていたはずだ。
場所が全く分からなかった。
夢の中、という感覚でもない。意識は鮮明としていた。
「お目覚めですか。大和ヤマト様」
すると、明るいオレンジ色の髪をした少年が、僕の目覚めを待っていたかのように話し掛けてきた。
「誰ですか……どうして僕の名前を……」
「貴方は選ばれたのです」
ニコリと微笑むと、彼の背景に聳える大自然が、先程よりも鮮明に目に映り、鮮やかにその世界を見せた。
「申し遅れました。私の名は大天使ミカエル。この世界の神の遣いになります」
「て、天使様!? な、なんで神様が!?」
「驚かれるのは無理もないでしょう。貴方には、この世界を救って頂きたいのです」
「世界を救うって……僕はただの日本の高校生ですよ!? 何も力なんて持っていません……」
「いいえ、日本人の貴方にしか出来ないことなのです。この世界では、大地から溢れるエネルギーを魔法に変換して生活をしています。一人に与えられる属性は一つ。でも、異郷の星から来た貴方であれば、全ての属性が使えるのです」
「別世界の人が選ばれた理由は分かったんですけど、どうして僕が……」
「それはですね」
ミカエルは、またも笑みを零す。
「たまたまです」
「たまたま!? 僕にだって、学校や……将来の夢があるんですよ! 死んだらどうするんですか!? そんな……神様だからって身勝手すぎます……」
すると、ミカエルは遠くを見遣り、哀愁な表情を浮かべながら応えた。
「そうです。神は身勝手なのです。そして、この世界の神も身勝手が故に封印されてしまった。その封印を解く為には、全ての属性を身に宿した貴方が鍵となるのです。神は横暴で身勝手です。貴方に拒否権はありません」
分かった。
もう何を言っても解放はされないだろう。
「分かりました……。協力します……」
「物分かりが早くて助かります! この世界で旅をするにあたり、僕は貴方のサポート役になります! ミカエルだとバレたら困るので、エンジェルサポートから取って、アゲル・サポとでも呼んでください!」
とてつもなく適当だが、ドヤ顔を見せ付けるアゲルに僕は何も突っ込まなかった。
「僕は大和ヤマトだと変ですよね……?」
「はい。予め名前は考えてあります。この世界で貴方は、旅人ヤマト・エイレスと名乗ってください!」
「わ、分かりました……」
どうせ適当なネーミングなのだろうと思ったが、本名のヤマトも入っていることだし素直に頷いた。
「それでは改めましてヤマト様。今から目指して頂くのは目の前に聳える自然の国になります! 人々もとても温厚なので、最初の国はとても満喫できると思います!」
最初の国は、ねぇ……。
そう、反論したくなったが、グッと抑えた。
そして僕は、寝心地のよかった草のベッドから立ち上がり、アゲルの跡を追って自然の国へと向かった。