テラーノベル
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「あ、こんばんは!」
「甲斐田さん、こんばんは」
「今日も帰り遅かったんだね。いつもこの時間?」
「‥‥まぁ」
何度か出勤や帰宅が重なることがあった
その度にロウ君は疲れた顔で僕に挨拶してくれる
仕事が上手く行かないのか、人間関係が上手く行かないのか
人それぞれではあるが、なんだかこの子は特に気になる
「病院には行ってみた?」
「いえ‥‥まだ時間が無くて」
「ロウ君が良かったら僕も飲んでるサプリメントあるんだけど、あげようか?」
「いえ、そんな」
「気休めに飲んでみるのも良いんじゃない?待ってて、今取ってくるから」
そう言って鍵を開け、部屋に入ろうとした
ふとロウ君の手元を見る
晩御飯とか買って来ないのかな?
それとも自炊して家にあるのかな‥‥
「ロウ君晩御飯は食べた?」
「まだです」
「良かったら一緒に食べない?今日鍋作ろうと思ってたんだよね」
「‥‥いえ」
「一人でいても暇でしょ?」
「‥‥‥‥」
何気なく発した言葉にロウ君の顔が曇る
何か気に触ること言ったのかも
「僕が一人じゃ寂しいからさ、良かったら来てよ」
「‥‥‥‥じゃあ」
ロウ君の顔を見ていると放っておけなくなる
危なっかしいと言うか消えてしまいそうと言うか
元からお節介な性分な僕はいくらでも手を貸してあげたくて仕方ない
「ご馳走様でした」
「お粗末様でした。ロウ君は少し休んでて。僕片付けちゃうから」
「いえ、手伝います」
空になった食器をシンクに運び始める
「じゃあ僕洗っちゃうから持って来てもらうと助かる」
「分かりました」
「そこに置いといて。終わったらテレビでも見ててよ」
皿を片付け終わると素直にソファーに座り、テレビを見ている
皿洗いを済ませ、ロウ君を見るとずっとテレビの方を見ている
かのように見えるけど、きっとテレビなんて見ていない
心がここに居ない
その証拠にテレビを消してもなんの反応もない
「‥‥ロウ君?」
「‥‥‥‥え?」
「何か話したい事ある?言葉にしたら心が軽くなるかも」
まだ出会ったばかりの僕に話す訳は無いか
でもあまりにもロウ君が苦しそうに見えるから
「僕じゃなくても話せる人に聞いてもらったら‥‥」
「‥‥‥‥たんです」
「え?」
「‥‥振られただけです」
「あ‥‥」
なるほど
そう言うことか
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コメント
7件

2人の居る部屋が想像できます。 なんなら間取りも想像できます。 晴さんの表情も想像できます。笑 蒼月様の生み出す作品が本当に…良きッ! ありがとうございます。