テラーノベル
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誰かに必要とされるから、生きていたいと思う。誰かを好きになるから、幸せだと思う。絶望を知るから、大切なものを守りたいと思う。幸せでいたいから、誰かとともに生きる明日を願う。そのはずなのに。
「どうして。」
__自分の手は、こんなに汚れているのだろうか。
「総隊長!!おはようございます!」
駐屯所に響く聲。鳳凰隊_伝説の鳥の名を関する部隊の朝は早い。総隊長、と呼ばれた黒髪の青年が振り返る。
「やぁ皆、おはよう。」
若手が基本で少年兵も多く、最年長である総隊長と第二部隊長兼副隊長、そして第七部隊長の三人ですらまだ26歳。だが、実力で見れば、この国_いや、ここら一体の国の中でも右に出る部隊はない。八つの小隊、六名の隊長で構成される、総員三千二百名の部隊。その中でひときわ目を引く総隊長_それが、やや茶色がかった黒髪長髪、朱紫眼の青年、アスカ。気さくで、一見女ともとれる美貌、すらりとした長身。そしてどこからともなく感じる気品と気高さ。そして不器用な優しさをも併せ持つ。それが彼だ。
「おはようございます。総隊長。」
副官であり、第二部隊隊長のルークが声をかける。総隊長と同じ26歳。アスカの双子の弟で副隊長を担う彼は、先陣を切る第二部隊の隊長でもある。アスカにとっては右腕であるこの青年はいつもアスカと阿吽の呼吸で、その才を彼のために遺憾なく発揮してくれる人物でもあった。
「全員、揃ったね。今日は特に変わったことはないから、いつも通り訓練かな。第七部隊、第八部隊の隊長だけ後で僕のところに来てくれ。確認したいことがある。」
「了解しました。この前の件ですね。書類をまとめて_そうですね、9時ごろお伺いいたします。」
「ああ。助かるよ。」
冷静沈着で鳳凰隊唯一の女性隊長第七部隊隊長アザミも、総隊長と同い年である。隠密や奇襲を専門とする彼女達は、言わば鳳凰隊の「影」のような役割をしていた。
「たぁ~いちょ~!来たよ~」
「やぁアギト。早かったね。」
角の椅子に腰を掛けた少年_否、青年は情報収集・トラップの設置・調略・偵察を専門とする鳳凰隊の「便利屋」第八部隊の隊長、アギト。アスカの末の弟であり、鳳凰隊部隊長の中では最年少の22歳。かわいらしい見かけによらず、知略と謀略に長けている。少年のような幼い見た目で、何度か子供に紛れて敵地に潜入もしている。
「資料、こちらです。」
アザミが資料を手渡し、書斎の中央寄りの椅子に腰かける。冷静なアザミと子供らしいアギト。並ぶとかなりの温度差が目に見える。
「…成程、密輸の件、隣の王国は白か。いよいよ迷宮入りだね。」
「ええ。かの国の密輸船の出入りはありませんでした。ですが先日妙な噂を聞きまして。どうも_南西に新しく独立した共和国があるのですが、その国に怪しげな船が幾度も出入りしているらしい、と。」
「成程…南西、ね。」
ここ最近、この近隣の国々でとれるような草を調合した薬_と言っても劇薬の方だが_の密輸が相次いでいる。近隣に国が多いので一概にどうこうできないのだが、この国に魔の手が及ぶ前に処理をしたい。という訳で政府から諜報専門の部隊がある鳳凰隊へとお鉢が回ってきたのだ。一番怪しいと睨んでいたここ最近めきめきと力をつけている隣国に偵察を回したが、結果は白。しかし、ここ最近大国から戦争の末独立した国が新たに候補として出てきたのだ。
「商戦組織か何かの援助をいただければ偵察に行けますが。」
「商戦に偽装するって事ね。」
「クルハに聞いてみる?うちの海上専門部隊_第五部隊の隊長でしょ?アイツならいい手が立てられそうじゃない?」
「悪くない手ですが_アギト第八部隊長、うちの第五部隊はあくまで”海上警備・海上戦専門”です。さすがに無理があるのでは」
「いや、アギトの案でいいと思うよ。うちの持ち船の中に何艘か商戦に偽装できそうなのがある。クルハのところ隊員にも何人か実家が商船の船乗りだったのがいるはずだし。」
「…でしたら、偵察には行けそうですね。」
「ああ。ただ、すぐは動けない。本国にクスリが流出する前に間に合うかどうか_」
「北方の作戦ですね。…相手の性質上、短時間で終わらせられる確証はないです。」
「そうだね。本格的に戦争が長引いてきた以上、あんまり一つのことに構ってられないし。」
本国_アスカ達の国は、たった今、北側に位置する列強国との戦争をしている。連合国側_国数も強さもある方だが、だからと言って油断はできない。アスカ達は比較的南の赤道近くに位置するため、暖かい気候で暮らしてきた。だから冬場の長期戦は向いていない。しかし、相手はかなり北方で、冬場や雪の上での長期戦も慣れている。いつ仕掛けてこられるかわからない_これほどまでに相性の悪い相手はなかなかにいなかった。
「…出立は明後日の明朝です。準備を始めますか?」
「あぁ。準備しようか。行くよ。」
朝日が駐屯所を照らす。いつもここから鳳凰の翼は空を翔ける。
character&creation
鳳凰隊 ‐ 伝説の鳥の名前を冠する部隊。実力は近隣国の中で見ても最強と名高い。ほとんどが少年兵で構成され、最年長は26歳、最年少は14歳までの総員三千二百名・八つの小部隊で編成される部隊。第一部隊は総隊長が第二部隊は副総隊長が率いるが、それ以外の六部隊は各小隊長五名によって編成される(第三・第四の部隊長が兼任のため)。すべての部隊にそれぞれの役割があるため、いい意味で特徴がない。結束力と個々の実力も確かである。
本国 ‐ アスカ達の所属する国。二つの半島と周辺の島々の集まった国であり、文化や歴史、生活に地域差がかなりある。周りに様々な国があるため敵も多い。アスカ達鳳凰隊は本国の政府の直属運営の部隊だが、軍部もちゃんとある(たいていの場合軍部だけじゃどうにもならないことと軍部の手に負えないことは鳳凰隊に流れる)。
アスカ ‐ 主人公。齢26にして政府直轄の鳳凰隊の総隊長を務める、やや茶色がかった黒髪長髪、朱紫眼の青年。ちなみにこの仕事は十年目。弟が三人いる(うち一人は双子、一人は養弟)。「鳳凰」・「禁断の猛毒」という二つの異名を持つ。
第一部隊 ‐ アスカ直属の小隊。戦場での本陣や伝達伝令を受け持つ。全400名。部隊最年長は隊長のアスカのみで26。最年少は21。
ルーク ‐ アスカの双子の弟で副総隊長兼第二部隊隊長。兄と同じく茶色がかった黒髪に赤紫眼だが、髪は短い。鳳凰隊結成時の十年前から所属している。双子の兄のほかに弟が二人いる(一人は養弟)。「迅風」という異名を持つ。
第二部隊 ‐ ルーク率いる小隊。鳳凰隊の中でも先陣を切る役割を任されている部隊。火力と統率力のある「主砲」。全550名。最年長はルークのみで26。最年少は20。
クルハ ‐ 第五部隊隊長。アスカを恩人と思っている。褐色で茶髪、碧眼の青年。海の男らしい体格だが、とてもやさしい性格でたれ目の24歳。軍服の代わりにセーラー服のようなマリン服を着ている。風向きや天候を読むのが得意で、時々一人で天気予報のようなことをしている(とてもよく当たる)。
第五部隊 ‐ クルハ率いる小隊。海上警備・海上戦を専門とする。いかなる状況でも天気と相手を読む、鳳凰隊の「目」。陸上戦ができないわけではない。全員が軍服の代わりにセーラー服のようなマリン服を着ている。
アザミ ‐ アスカの幼馴染、第七部隊長。鳳凰隊唯一の女性隊長である。冷静沈着で耳がいい。紫がかった黒髪、まさにアザミの花のような色の目。鳳凰隊結成時の十年前から所属している。「黒子」という異名を持つ。
第七部隊 ‐ アザミ率いる小隊。暗躍や隠密、奇襲を専門とする、鳳凰隊の「影」。全400名。最年長はアザミのみで26。最年少は21。
アギト ‐ アスカたち一家の末弟で第八部隊隊長。兄達と同じく茶色がかった黒髪に赤紫眼で髪は短く、前髪がない。鳳凰隊が結成して二年後から所属。鳳凰隊小隊長最年少の22歳。兄が三人いる(うち一人は養兄)。背が低く童顔のため、よく子供に間違われる。本人はそれを諜報に使っている。
第八部隊 ‐ アギト率いる小隊。情報収集・トラップの設置・調略・偵察を専門とする。鳳凰隊の「便利屋」。全100名。戦闘もできるが普段は裏方専門。最年長はアギト達22。最年少は14歳。
コメント
1件
おお、第2話読んだよ!部隊の朝の風景から始まって、それぞれの隊長たちのキャラがしっかり立ってるのが良いね。アスカの気さくな雰囲気と、双子のルークとの阿吽の呼吸、アザミの冷静さ、アギトのちゃっかりした感じ——もうチームとしての空気感が伝わってくる。密輸ルートの調査、北の戦争との板挟みみたいな展開も気になるし、「鳳凰隊」としての誇りや結束を感じる描写が熱かった!続きが楽しみだ🔥