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聞き慣れた、朝のぴーちゅんの鳴き声がする。
「あ、ぴーちゅん。おはよう」
私は窓を開け、彼に挨拶をして空を見上げた。眩しい光がさしている。
もう朝だ。
コンコン
誰かがドアをノックする音がして、ルーシーかな? と思っていると正解だったみたいで彼女の声がした。
「リサ様、カナ様がお帰りになる儀式を始めます。ご用意を」
「はい」
ルーシーに、髪を結ってもらい私はここに来た時の服を着る。
あぁ、普通の私の服達は、とてもとてもホッとする。
ーーー
「カナは帰さない! 私は、私は!」
「カトル様!!」
紫色の髪をなびかせて、メリエルがカトル王子のもとに走ってきた。
そして、その勢いのままカトル王子の頬を思いっきり叩いた。
ビターンと、とてもいい音が響く。
「死んだものは戻ってきません。カナ様は、マナエではありません! 今は忘れてしまっているけれど、貴方が愛を誓ったのは、私の妹、マナエルです!」
「メ……リエ……」
勢いにのまれたのか、カトル王子はびっくりした顔で、少し小さな彼女を見る。
「カナ様には、愛する人がいらっしゃるのです! 貴方はそれを引き離すおつもりなのですか!! 誰よりも引き裂かれる苦しみを知っている貴方が!」
紫色の大きな瞳からポロポロと涙が溢れ落ちる。
「私は、二番目でもかまわない。けれど、それはカナ様ではありません。私の許すのはただ一人、妹のマナエだけです」
「…………」
「足りない魔力は、私が支えます! 強くなります! だから、どうかお願いします。愛する者を引き裂くような真似は――――」
ーーー
ということが、私の知らないところで繰り広げられたらしい。
メリエルの手には、手紙がぎゅっと握りしめられていたそうだ。
コンコン
「リサちゃん、一緒に行こう」
外からアリスの声がする。迎えにきてくれたみたい。
「うん、もうすぐ出来るよ」
アリスのエスコートで、私が落っこちてきた部屋、魔法陣の場所へと向かう。あの日から、そんなに日にちはたってないのに、色々あったなぁ。
私は不安に思っていることを口に出す。
「ねぇ、一緒に戻っちゃわないよね――」
「スペードの言うことが違っていたことはないから」
「そうだけど――」
最初の一回とかだったら――、と考えて私はプルプルと頭を振る。
魔法陣の部屋につくと、制服姿のカナちゃんが立っていた。
「リサさん!」
その顔には、嬉しそうな笑顔が浮かぶ。
「ありがとうございました。メリエルさんや、ミュカ君、キーヒ君達に私の友達になってって言ってくれてたそうで――」
「あ、うん」
「とても、助けてもらってたんです」
私の知らないところで第二段! でも、よかった。助けになってくれたんだね。私もあとで彼らにお礼を言わなくちゃ。
メリエルはそこにいるし、このあとで――。
そうだ、ミュカとキーヒはボスに成れたのかな?
そう考えていたら、カトル王子が声をかけてきた。
「始めてもいいかな?」
「はい!」
くるりと、魔法陣の上に戻っていくカナちゃん。
カトル王子の横には、メリエルが凛と立っている。なんだろう、彼女凄くかっこよくなった? 手紙になんて書いていたんだろう。
後ろには、リードとルードが並んでいる。何故か、リードの表情が寂しそうに見えた気がした。
「カナ、呼んでしまって、すまなかった」
カトル王子が頭を下げ、謝っている。一国の王子様の謝る場面を目撃するなんて、今後絶対にないだろうな。
そもそも王子様に会うこと事態がこんなことがなければなかっただろうけれど。
「カトル……様、国の為にと行ったことです。それに、私は彼のことがどれほど好きか、再確認出来ました。もう会うことはないと思いますが、どうかお幸せに……」
そう言って、彼女はぺこりとお辞儀をした。二人の間でどんなやり取りがあったかなんて私は知らないけれど、関係は悪いものではなかったのかな。
こくりと頷くと、カトル王子はそっと片方の膝をつき魔法陣に触れた。
その時、アリスが手をとりぎゅっと握ってくれる。大丈夫、心配ないよと言って。
「召喚を行いし、魔法陣よ、その役目を逆転しろ――」
呟くと同時に、魔法陣が光り、カナの姿が粒子になり浮かび上がる。
「さようなら! あ、リサさん、向こうのせ――」
そこで彼女の声は途切れた。きっと、向こうの世界で伝えたいことや伝えたい人がいるかを聞き忘れていたのだろう。
彼に会えるからと慌てて頭の中がいっぱいだったんだろうな。可愛いなぁ、そう考えてクスクスと笑ってしまった。
「ちゃんと戻って、彼氏と仲良くしてね」
これで彼女との約束は、果たせたよね。
カトル王子、メリエル、リード、ルード、それから私達は彼女の消えた場所をしばらくじっと眺めていた。
コメント
1件
ああ、帰ってしまうんですね……。メリエルがカトル王子の頬を叩いて「カナ様には愛する人がいる」と言い切った場面、すごくかっこよかったです。あの手紙には何が書いてあったんだろう。リサさんの「ちゃんと戻って、彼氏と仲良くしてね」という一言に、彼女の優しさが全部詰まっているみたいでじんわりきました🌷