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「あのさ、さっちゃん」
スクリーンに映し出された映像を眺めながら、俺は沙耶に声をかけた。
「うん?」
「このカップル、なんか見覚えない?」
映し出されているのは見慣れた通学路。制服姿の男女が立ち話をしている。よく見ると二人とも俺たちの高校の制服だ。
「あっ、知ってる。山本健一くんと椎名美咲さん!」
沙耶が身を乗り出す。確かにそうだ。健一は俺のクラスメイトで、美咲は沙耶のクラスメイト。この二人、廊下でよく話しているのを見かける。
「健一、美咲のこと好きみたいだけど、なかなか言い出せないんだよね」
「えー、知ってたの?」
「まあ、同じクラスだし。でも美咲の方はどうなんだ?」
沙耶は少し考え込むような表情を見せた。
「美咲さん、健一くんのこと気になってるみたい。この前、『山本くんって優しいよね』って言ってたし」
なるほど。お互い想いはあるけど、一歩を踏み出せないカップルか。
『この二人には純粋な想いがあります。しかし、お互いの気持ちに気づいていない』
スクリーンに文字が浮かび上がる。
「じゃあ私たちが背中を押してあげればいいってこと?」
沙耶が呟く。その瞬間、映像が切り替わり、健一が一人で悩んでいる様子が映し出された。
『運命の赤い糸は、二人の純粋な愛情があってこそ成立します。打算や計算では紡げません』
「なるほど…」
俺は立ち上がり、沙耶に手を差し伸べた。
「え?」
「赤い糸を紡ぐには手をつながないといけないんだろ?」
「あ、うん…」
少し照れくさそうに沙耶が手を伸ばしてくる。小さな手が俺の手のひらに収まった。暖かい。
「なんか、変な感じ…」
「そ、そうだね」
幼なじみとはいえ、こうして手を繋ぐのは初めてだ。妙にドキドキする。
『二人で詠唱してください。「運命の赤い糸よ、純粋な想いを結び合わせよ」と』
「じゃ、じゃあ…」
「せーの」
「運命の赤い糸よ、純粋な想いを結び合わせよ!」
二人の声が重なった瞬間、手がほんのり赤く光る。そして映像の中、健一と美咲の間に赤い光の筋が現れた。
『カップル成立です。おめでとうございます』
「やった!」
思わず沙耶が飛び跳ねる。その勢いで、まだ繋いでいた手が強く握られた。
「あ、ごめん…」
慌てて手を離す沙耶。頬が少し赤くなっている。
「気にすんな。それより、健一と美咲がどうなるか見てみようぜ」
スクリーンには、翌日の学校の様子が映し出されていた。
「あの、椎名さん」
健一が美咲に声をかける。
「どうしたの、山本くん?」
「放課後、ちょっと時間ある?話したいことがあって…」
「う、うん。大丈夫だよ」
「よし!じゃあ、放課後図書室で」
「図書室…うん、わかった」
映像はそこで消えた。
「この後どうなるんだろ」
「きっと、上手くいくよ。二人とも素直だし」
沙耶が確信を持ったように言う。
『残り時間は46時間です。次のカップルの映像をお見せしましょう』
「まだまだ始まったばかりって感じだね」
「うん。でも、なんかちょっと楽しくなってきた」
沙耶の言葉に、俺も少し笑みがこぼれた。確かに、誰かの恋を応援するってのは、意外と楽しいかもしれない。
そう思った矢先、次の映像が浮かび上がる。そこには見覚えのある顔が。
「えっ」
「まさか…」
俺たちは顔を見合わせた。映し出されていたのは、あの噂の二人だった。