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カイガ
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#魔道具職人
こはる
135
「俺と羽佳理、揃って解雇処分が下された。中里会長が直々にリストラ宣告をしてきた」
家族会議を始めてから開口一番、シュートの父・彰司《しょうじ》は、シュートに重々しくそう告げた。
「クビってやつか……。じゃあ二人とも、明日から無職ってことになるの?」
「正式に職を失うのはあと半月ってところだ、俺も羽佳理もまだあの会社の人間だ。もっとも、中里会長は明日から俺たちを大企業に属するどの会社の敷居にも入れない気でいるから、仕事が無くなったも同然か。
まったく、同僚たちへの仕事の引き継ぎがまだだというのに、入社禁止となってはどう引き継ぎをしろというのか……」
困るところそこなのか…とシュートは心の中でツッコむ。彰司が告げた通り、二人が中里の会社をクビになって、完全な無職になってしまうのも時間の問題である。
そもそもどうして二人に突然の解雇宣告が下されたのかについてだが、そのことについてシュートは何となくの心当たりがあった。
「中里大企業の会長の息子……俺の元クラスメイトでもあるそいつを、俺が壊したことが関係してるんだよね?というかそれしかないよね」
「その通りだ。前にもここで推測した通り、お前が会長の息子に過激な暴力を振るったことが会長の耳に伝わり、それに大変お怒りになった彼は、報復として俺たちを解雇処分しにかかった、というわけだ。もっとも解雇処分の理由について本人は明確には話さなかったがな」
じろりと三白眼でシュートを見据えながら、彰司は静かな声音で事情を話す。傍にいる羽佳理は疲れたように溜め息を漏らすだけだった。
「左遷や減給程度の嫌がらせは覚悟していたが、まさか問答無用で俺たちの首を切りにくるとは、さすがに想定外だった。柊人の件よりも以前から、あの男は俺を嫌っている節があったとはいえ、こうもあっさり解雇処分が下るとはな。会社に敵をつくりすぎてしまったのか、あの男の圧力に皆が屈しただけなのか…」
あんたもあんたで、前から中里父に敵視されてたのかよ、とシュートはまたも内心でツッコみを入れる。
「俺や羽佳理というより、柊人、お前に対する報復なのかもな。まずは親である俺たちの収入源を潰して、経済的な報復に出てきた。この攻撃は今後も続くと予想している。中里大企業傘下であるどの会社へはもちろん、他の会社への再就職も困難になるだろうな。あの男は俺たちをブラックリストにでも登録させて、他の企業・会社に回しているだろうよ」
そうやって他所の企業や会社への転職の道をも潰して、三ツ木家を路頭に迷わせるという経済的な報復である。
「ま…その点に関しては特に大きな問題にはならない。前にも話した通り、あと半年以内に、二人で新たな製薬会社を立ち上げて、そこでやっていくつもりだからだ。
だが、それでもいずれは厄介なことになり得る。俺たちが独立することも、あの男は前から気付いている。俺たちに目を付けているあの男は今後、大企業の力を使って更なる経済的な攻撃を仕掛けてくるだろう。中里大企業の手が届かないどこかへ…海外まで飛ぶ必要になってくるかもしれない」
中里大企業は日本屈指の大企業グループであり、その傘下の会社は全国各地に存在する。国内のどこへ行こうが、その先に中里が持つ会社がある限りは、そこを伝手にした中里が圧力をかけて三ツ木夫妻の妨害をする可能性が高い。どちらにしろ経済的な攻撃は避けられないとされる。
「はぁーあ……。俺に恨みがあるんなら、親父と母さんをクビにするとかまだるっこしいことしねーで、真っ先に俺を潰しに来れば良いのに。汚い大人らしい陰湿な報復だなぁ」
「何を呑気なことを……。いずれはお前にも直接な報復をしにくるに決まっている。中里大企業の力は裏社会にも及んでいると聞いている。俺たちに十分な経済的な報復を済ませた後、法の外で生きる人間たちを使って柊人を物理的に潰しにくるだろうな。警察などに痕跡が見つからないよう処理も完璧に行ってだ」
「柊人のせいで私たちが解雇されて、今後もしんどい生活になるかもしれないのよ……って言いたい気持ちもあるけれど、柊人にも辛いことがあったみたいだからあまり責めるようなことは言わないでおくわ。でも…自分がしでかしたことが、ここまで深刻な問題を呼び起こしてしまったということを、しっかり自覚すること。
勢いよく振り下ろしてしまった拳はどうあっても戻すことが出来ないからね……」
羽佳理の咎めつつも諭すような説教に、シュートは無気力に「はい」と答える。
「それと……新しい学校への転校手続きがまだ終わってないそうじゃない。今日の朝学校から電話がかかってきたわ。早く済ませて学校に行きなさい。まぁ……すぐ転校することになりそうだけど……」
ここでシュートは両親がユアチューバー「SHOT」の生配信について何も言ってこないことに気付く。二人ともあれが目の前にいるシュートだったことに気付いていないのか。それともあの生配信をそもそも見てすらいなかったのか。少し気になるが聞くのは止めておこうと思うシュートだった。
「そういえばさ、親父と母さんを解雇することに、周りの人間は誰も反対とかしなかったの?」
シュートの質問に二人が沈黙する中、羽佳理が「あっ」と声を出す。
「そういえば一人だけ……私たちの解雇があまりにも突然で理不尽だって、異議を唱えた人がいたわね。
確か…花宮さんとかいう、会長の直接の部下の……」
「ああ、彼か…。今時珍しい正義感あふれる男だったな。しかし今回ばかりは、間違ってることに対して間違っているといった噛みつきは控えておくべきだったな。今の中里会長は大事な息子が傷つけられて大変ご立腹の最中にある。
おそらく彼も、理不尽に切られるかもしれないな」
花宮という単語にシュート反応する。ここ最近退学した学校先の元クラスメイトの少女以外でその苗字を耳にしているシュートはまたか…と思いつつ関心も寄せていた。
(先日家に来た花宮から聞いた話からして、その花宮の父親で間違いないだろう。彼は中里会長の直接の部下だって話だったし。
あいつの親父、俺の両親を理不尽に解雇処分した中里会長に物申ししたんだ?娘と違って、自分の上司にも言いたいことをきちんと言えるような正義感あって我も通す男のようだな。
ま、いちおうその父親あっての娘・花宮紅実ってわけか…)
どんな男なのかと思いつつ、彰司が今口にしたことを掘り下げる。
「その人って中里大企業ではそれなりのポストに就いてるんじゃないの?会長とやらの近くにいる人ってことはさ。そんな重要そうな人ですら、何か意見されたからって切るつもりなのかよ」
「あの男に、他人への情などありはしないだろう。たとえ身近な部下であろうともな。あの男にとって俺も羽佳理も、そして花宮君ですらもただの駒としか認識していないのだろう。自分にとって不利益で不快で不要と見なした瞬間、誰であろうと平気で切り捨てる。あれはそういう人間だ。
ただ一つだけ…あの男が情をかけているものがあるとすれば、あの男の家族であろうな。でなければ俺と羽佳理、そしてお前にここまで牙を向けたりはするまい」
「家族が大事、ねぇ……」
それを聞いたシュートがある考えを巡らせていると、彰司が話はもう終わりだと切り上げるムーブを見せる。
「とにかく…俺と羽佳理は今後も忙しくなる。会社の創立を予定より早める段取りをしなければならない。あとは一応、不当な解雇処分を下されたと、然るべき機関へ相談してもみるか。
柊人、俺と羽佳理はお前の浅はかな行いのとばっちりに巻き込まれたということを理解しろ。二人ともお前に構ってやれる時間はない、自分の身に降りかかる火の粉は自分でどうにかすることだ。家やお前の学校のことは親である俺たちに任せて良い」
両親揃って自分の面倒は見ないぞ、何とかしなさい、という解釈をしたシュートは心が冷めていくのを実感する。自分への心配をするどころか、自分のことを少し非難してきたり、自分に危険が迫っても自分でどうにかしろと関与しない宣言をしたりと、普通の親なら子どもにそんな対応はしないんじゃないのか…とシュートは何となく思うのだった。
コメント
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うわっ…59話、めっちゃ重たい展開きたね😭💦 シュートのとった行動のツケが、まさか家族全体に返ってくるとは…。 彰司パパの冷静で理知的な分析が逆に怖くて、羽佳理ママの「振り下ろした拳は戻せない」って言葉がめっちゃ沁みたよ…。 親二人が「自分の面倒は自分で見ろ」ってスタンスなのも、シュートにとってはキツすぎる… それでも花宮親子のエピソードがちょっとした光になってて、そこはホッとしたかな。 次、どうなるか気になりすぎる…!🌸