コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
全員が息を潜め、綺麗な列を作り、心臓の鼓動が聞こえそうな程の緊張の中で、合図を待つ。
ドアの前には魔族軍 四天王 風の使徒 セノ=リューク。
今回の、エルフ帝国 帝王 アザミ・クレイヴ討伐班の指揮を務めることとなっていた。
その横には、セノの部下数名と、エルフ王国軍の精鋭が三人、その後ろに、リオンやヒノト、アザミ討伐班に加えられたチームと、帝国軍との戦闘に備えられた、魔族軍幹部率いる魔族軍の訓練生、エルフ王国軍、そして、残りのキルロンド生たちが待機させられた。
「準備はいいか?」
ニタリと微笑むセノに、エルフ王国の精鋭三人は、静かな瞳でコクリと頷く。
そして、静かに並ぶ面々を見遣り、手を上げる。
バン!!
激しく扉が開かれると、その先には、エルフ帝王 アザミ・クレイヴを含め、参謀 シュバイン・ヴァグズ、帝国軍隊長 シュヴルス・エルスなどの幹部の面々が円卓に座り、会議の真っ只中だった。
開かれた扉に、瞬時に臨戦態勢を敷くが、全てを先手に作戦を練っていたセノら強襲部隊に反抗する術はなかった。
「討伐班!! アザミの下に飛び込め!!」
セノが突入すると、次から次に、アザミ帝王討伐班に参入した面々がアザミを囲う。
「アザミ様!!」
直ぐに帝国軍も動こうと躍起になるが、既に時遅し。
“転移魔法・ルワインド”
エルフ王国の精鋭、三人は、ドアを開けるその時から詠唱を始め、アザミを眼で捉えた瞬間に、その足下に転移魔法の陣を形成、セノら討伐班が飛び込んだ瞬間に、転移魔法を発動し、アザミを含めた部隊はどこかへと消えた。
チャッ…………
帝国軍隊長 シュヴルスと、エルフ王国軍の精鋭の一人が、睨み合いながら互いに剣を向け合う。
「久しぶりだな、シュヴルス。隊長の座に着いた気分はどうだ?」
「悪くはないですよ……。長が、アザミ様でなければ……」
そう俯いた瞬間、その場にいたエルフ帝国の精鋭たち全員の瞳は蒼く輝き、膨大な魔力を放出させる。
「一度退け!!」
危険察知をしたエルフ王国の精鋭は、一度ドアから全員を退かせ、武装解除はせずに、様子を伺う。
「何が起きているんだ……?」
困惑するエルフ王国の精鋭に、魔族軍幹部 エル=クラウンが前の方に駆け寄る。
「闇魔法の力を感じる。やはり、セノの予測は正しかったようだ……」
「どう言うことだ……?」
「アイツら全員……もしかしたら、エルフ帝国にいる兵士全員が、アダム=レイスから闇魔法により強化魔法を受けているかも知れないってコト」
「そんな……一人であんな膨大な魔力なのに、兵士全員ともなると……!」
そして、背後の大勢の兵士を眺める。
人数は、圧倒的に有利。
しかし、
「勝てるわけないじゃないか……!」
「セノはそれも予測済みだ。アザミとエルフ帝国軍の分断には成功した。これから、兵士たちが集まらないように、なるべく少人数を全員で叩けるようにする」
「どうやって……?」
背後から、魔族軍幹部 シグマ=マスタングが出でる。
そして、エルはニタリと笑う。
「クハッ、その為の “魔族” だ。シグマ、行くぞ」
“合体闇魔法・帳”
エルとシグマの二人により、周囲一体が黒い結界に覆われる。
「二人の闇魔法により創られた結界だ。無敵ではないが、ちょっとやそっとのことでは壊せない」
「その間に、その中にいる奴らだけと戦えるということか!」
「そう言うことだ。しかし、あの目立って強く感じる二人は、幹部の僕たちだけでも厳しい。ここからは、君たちエルフ王国軍の精鋭にも指揮してもらうよ」
そして、魔王軍精鋭たちは、参謀 シュバイン・ヴァグズの下へ、エルフ王国軍精鋭たちは、隊長 シュヴルス・エルスの下へと向かい、キルロンド生たちも散り散りに包囲網を作り上げた。
「全員、エルフ帝国軍のエルフ族は、アダム=レイスより力を与えられている!! 決して油断せずに、エルフ族の草魔法を駆使してバリアの破壊を優先しろ!!」
まず最初に動いたのは、キラ・ドラゴレオのパーティだった。
「ガッハッハ!! さあ、久々のパーティ戦闘!! 暴れてやるぜぇ!!」
今回、キラは和国製の斧を手に持っていた。
編成は、アタッカー キラ・ドラゴレオ(雷)、サブアタッカー エルフ族(草)、ヒーラー ニア・スロートル(氷・精神)、シールダー クラウド・ウォーカー(氷)。
この時、 “氷共鳴” が発動し、全員の会心率が上昇。
公式戦とは違い、キラは最初から斧にバチバチと雷を帯びさせる。
「さあ、エルフ族! 行くぜ!!」
「私に命令するな!!」
キルの抜けた穴に入ったのは、エルフ族のサポートに特化した女性で、気の強い訓練生だった。
“雷魔法・雷弾”
“草魔法・ローズアロー”
キラとエルフ族による、雷と草の同時の遠距離魔法。
「なっ……!!」
シールドは大幅に削れたものの、キラは声を荒げる。
「原激化状態になるんじゃないのか……!? クッソ……超激化を喰らわせてやろうと思ったのに……!」
「お前……あまり人の話を聞かないタイプだろ……。前の作戦会議中にも話したが、円状のバリアを張られている間は原激化状態にならない! それでも、岩や風のシールドでない限り、私たちの草魔法は強力に相手のバリアを削ることが出来るんだ!」
「あ……そ、そうか……。い、いや! ド忘れをしていただけだ! 俺たちの攻撃でバリアもかなり削れているんだからいいだろ! 畳み掛けるぞ!!」
キラたちの相手は水バリアを展開させている為、パーティ全員の属性が有効打となる。
「一気に行くぞ!!」
しかし、息巻くキラの前に、ニアとクラウドが出る。
「キラさん、ここは任せてください……!」
「そうだよ〜! たまには活躍させてよね!」
“氷魔法・ブリザードダスト”
“氷魔法・氷風陣”
ニアは上空から、クラウドは陣を形成させ、同時に氷魔法を降り注がせることで、凍結を絶え間なく起こさせた。
「これが……ニアの魔力強化された力か……! サブアタッカーでも通じるんじゃねぇか……!?」
絶え間ない二人の氷魔法により、相手の水バリアはぐんぐんと削られ、そのままバリン! と弾けた。
「今です……!!」
“草魔法・ローズアロー”
“雷魔法・雷弾”
「ふはっ! バリアが砕けても、この程度の魔法だけなら魔力量だけで戦えそうだな!」
ザッ……!
“異邦剣術・雷狼・牙突”
ゴォッ!!
凄まじい音を立て、下から振り上げた斧からバチバチと雷が一縷に放出され、雷ダメージと共に “超激化” ダメージが同時に発動される。
「ぐあああああああっ!!」
自身で攻撃したキラも、その威力に唖然とする。
「これが……草魔法と起こせる火力かよ……」
「まだだぞ、キルロンド生!!」
背後からエルフ族が駆け寄り、杖を前に突き出す。
“草魔法・ローズグロウ”
最後のエルフ族の攻撃により、エルフ帝国軍の兵士はそのまま気絶した。
「い、今の攻撃は……?」
「 “草激化” だ。雷×草で原激化になっている間に、更に草魔法の攻撃を当てれば、草激化ダメージを与える。お前の与えた超激化には及ばないが、この通り強力だ」
その攻防に、他の兵士たちにも火が着く。
それは良くも悪くも、味方にも、敵にも。
「俺たちも負けていられない。行くぞ……!!」
「コイツら……一朝一夕で集められた有象無象じゃない! 精神魔力増強してても油断するな……!!」
そして、戦闘は更に激しさを増して行く。