テラーノベル
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――またしても情報量の多さに悶々としていた。
何日も悩んで出した勇気に、その場で後悔することになろうとは。バツイチだけでも衝撃なのに、学生……。しかも(向こうにとっては)初対面の女の告白にその場でOKするなんて。告白した自分を棚に上げて不信感を持つ。
そうだ、でも、私は自分の年齢を言ってないから向こうも私の年を聞いたら引くに決まってる。
……ひょっとして私、学生に相手されるほど若く見えたのかしら。不意にそう思って顔が緩んだ。いや、喜んでいる場合じゃなくて。
このままフェイドアウトしちゃおうかな……。電車だって時間をずらすか違うルートで行けば……。
パッと彼の顔が浮んだ。『まさか、自分から始めといて逃げないよね、春美ちゃん? 』首をブンブン横に振った。ダメだ、大人の私がちゃんとしないと。
「何百面相してんの」
声をかけられてビクリ飛び上がってしまった。
「あ、ああ、びっくりした」
三宅くんだった。
「お前、さっきホームで一緒にいた男、彼氏? 」
「違う! 」
「そんなデカい声で否定しなくてもいいだろ。確かに随分若かったもんな。はは、一瞬大学生かと思ったもん。親戚か何か? 」
「まあ、そんな感じ? 」
「はは何で疑問形? な、今週の金曜空いてるか。送別会してくれるってよ、俺の」
深入りされなくてホッとする。
「あはは、送別される人が誘ってくれるんだ」
「そだよ、お前は来いよ。長いつきあいなんだから」
「うん。行くよ、もちろん」
三宅くんが見えなくなるとため息が出てしまった。一瞬見ただけで学生だってわかるほど彼は若い。私、どれだけ見えてなかったの。
普通に並んでいてカップルには見えないかもしれない。
もう一度大きなため息が出てしまった。
彼がもう少し年上なら……違うな、私が若かったらよかったのに。
昼休み、スマホを開けるとメッセージが届いていた。
彼――七瀬広睦(21)からだった。
……ダメだ。もう年齢しか頭に入って来ない。
『今日、仕事終わんの22時過ぎぐらい。そっちはどお」
22時って、そしたら会うの23時近くなるじゃない。平日の夜に無理でしょ。仕事ってバイトって言いなさいよ。どお、じゃなくて『どう? 』でしょ。
……ダメだ、苛立ってあら捜ししちゃう。彼が悪いんじゃなくて、ちゃんと事前に気づかなかった私が悪いんだから。
腹が立つのは何だろう、思ったよりチャラい態度だ、私は最初から敬語を使っていたのに彼はタメ口だった。だから、同じくらいの年かなって思い込んでしまって。ナントカは盲目ってやつかもしれないけど……。あーあ、ただの礼儀がなってない奴。無礼者じゃないの。
『さすがに平日だしそこから会うのは厳しいかな』
返事はすぐ既読がついたけど、返事はなかった。
でも、会わなきゃな。それで、不本意だけど年齢を伝えてなかったことにしてもらって、明日から車両変えるか時間変えるかしたら大丈夫だし。あれだけ見た目が素敵なんだから相手に苦労はしていないと思う。わざわざこんな年上の女にこだわる必要もない。結婚したくらいだ。モテたはず……。って、そうだ。あの子、バツイチって言ってた。学生でバツイチって結婚してたってことだ。私だってしたことないのに!って羨ましがっている場合じゃない。いつ結婚したんだろう。若気の至り?いや、学生が結婚する理由なんてデキた以外にあるんだろうか。それなら彼は子供もいるってことになるけど……。
詮索しても仕方がない。もう、関係ないのだから。これは私が撒いた種。彼に謝んなきゃな。
このまま連絡来なくなるパターンあるんじゃないかと思ったけど、それもやっぱり不誠実かとこちらから会う日を決めようとスマホを持った。
わざわざ会わなくても朝の電車で話せばいいんじゃないかと気が付き、その旨連絡することにした。
『明日は朝早くないんだよね 金曜の夜は? 次の日休みでしょ』
彼からはこう返信があった。金曜は、三宅くんの送別会だっけ……。なんだか、日にちも会わない。
『会社の人の送別会なの』
他の日に……と送りかけて、ここで終わらそうと思った。
『ごめんね、やっぱりこの前の事はなかったことにして欲しい』
既読はすぐについたけど返事はなかった。これでいいと思う。
――ところが、翌々日。
1本早い電車に乗り込んで、完全に油断していた私は彼に声をかけられて驚いた。
「おはよ。やっぱ会った方が早いよね』
そう言って笑う。やっぱりとても綺麗な顔をしていて、艶のある肌が若さを伝えている。若い。明らかに若いじゃないの。
「おはようございます。あの、メッセージで伝えた通り」
「好きって言った。俺のこと。何でなかったことにするのか聞きたくて」
ぐっと言葉に詰まった。だけど、正直に言うしかない。ごく、と喉が鳴った。
「俺が学生だから、だろ? 」
先に彼が口を開く。わかってるじゃないの。私はこくり頷いた。
「まあ、そだわな。学生だと思わなかったってことだろうけど、それならあと1年も経たずに解決するけど? 俺、春から新社会人ってやつ」
にっこり笑って自分を指さす。
「違う、そうじゃないの。私がもっと年上だからさすがにあなたが無理だろうなって思って」
さすがに私の年を言うと引くだろう、そう思っていた。
「ああ。いくつ? 」
「……32」
「今年32? 」
「え、うん」
「11歳差ってことかぁ」
「そうなるのかな」
彼はなんてことないようにこう言った。
「俺は気にしないけど? 」
#婚活
西原衣都
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コメント
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みぅです🥀 第2話、読みました。 春美さんの「若かったらよかったのに」って呟き、すごく胸に刺さった……。年の差って簡単じゃないけど、広睦くんが「俺は気にしない」ってさらっと言えたの、めっちゃかっこよかった。年齢のこと、ちゃんと伝えられてよかったね。ふたりの空気感、これからどう変わるのか気になります📖