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#異世界転移
花月夜れん
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「ねえねえ知ってる? Re:noteってバンド!」「知ってる! あの文化祭の動画のやつでしょ!?」
「今度テレビの取材が来るって噂だよ!」
「ソロライブとかやってくれないかなあ──!」
校内のあちこちで、そんな会話が飛び交っていた。
Re:noteは、文化祭での演奏動画が学校の公式SNSにアップされるやいなや、瞬く間に拡散されて大バズりを記録した。そこから一気に知名度が広がり、地元メディアからの取材やテレビ出演の話まで舞い込んでくるという、夢のような怒涛の展開を迎えていたのだ。
「なんか……未だに信じられないね」
放課後の教室で私がぽつりと溢すと、周りのみんなも深く頷いた。
「まさかこんなに反響があるなんて思わなかったよ」
キーボードを撫でながら優しく微笑む明里。彼女はあの文化祭以来、ずっと胸に抱えていた母親との葛藤を乗り越えて和解し、今ではクラシックピアノとキーボードの双方を誇りを持って堂々と弾いている。
「俺なんて最近、登校中の電車でやけに視線感じるんだよな〜! ついに俺のモテ期到来か!?」
隼人は大げさに肩をすくめておどけてみせる。少し調子に乗り気味ではあるけれど、その表情は以前の迷いが晴れたように晴れやかだった。
「…………」
そんな騒がしい空気の中でも、怜央だけは普段と何一つ変わらない様子で、静かに譜面と向き合い曲を作り続けている。
──周りの人たちからは、すべてが順風満帆にいっているように見えているかもしれない。
けれど、鈴には分かっていた。怜央の心の奥底には、今も癒えることのない冷たい穴がぽっかりと空いたままだということを。
「ねえ、どうしたの?」
夕暮れ時、いつもの公園のベンチでノートパソコンを開いている怜央に、私はそっと声をかけた。
「何が? 別に何もないけど」
返ってきたのは、いつも通りの淡々としたクールな声。けれど、キーボードを叩く指先のわずかな強張りでわかる。無理をしているのは、私にはバレバレだった。
「私に嘘は通用しないよ。怜央はわかりやすいんだから」
(……え? わかりやすい?? 私には全然わからないよ……)──by あかり
「……何かあったんでしょ?」
茶化すことなく、静かに、けれど逃さぬように、私はもう一度彼の横顔を見つめて尋ねた。
長い沈黙が流れた。パチパチと響いていたタイピング音がピタリと止まり、木々を揺らす風の音だけが二人を包み込む。
やがて、彼は絞り出すようにぽつりと言った。
「……あの文化祭、親父も来てたんだ」
「……うん」
「後で感想を聞いたんだよ。でも、何も言ってくれなかった」
胸がキュッと締め付けられ、私は息を飲んだ。
「……そう……なんだ」
怜央はうつむいたまま、自虐的に小さく笑った。
「俺さ、あの日……あのステージで全力で演奏すれば、何かが変わるかもしれないって、ほんの少しだけ期待してたんだ。俺たちの音楽で、親父を振り向かせられるんじゃないかって」
「怜央……」
「でも、ダメだった。俺がどれだけ必死に足掻いても、あの人の中じゃ、俺の作った音楽なんてただの『お遊び』でしかないんだよ」
怜央の言葉はどこまでも平坦だったけれど、その声の低層に揺れる悔しさと孤独が、痛いほど私の心に刺さってきた。これまで彼がどれほどの思いで音楽と向き合ってきたかを知っているからこそ、胸が張り裂けそうになる。
「怜央」
私は名前を呼び、逃げずに彼の横顔をまっすぐに見つめた。
「私たちは、ちゃんとわかってるよ。怜央の作る音楽がどれだけ素敵で、どれだけ人の心を強く揺さぶるか。あかりも隼人も、私だって、あのステージの上で全身で感じた。そして、あの日私たちの演奏を聴いてくれたたくさんの人たちも、絶対にそう思ってる」
怜央は言葉を発さず、じっと地面を見つめている。けれど、固く結ばれていた彼の肩から、ほんの少しだけ力が抜けた気がした。
「だからね、私は信じてるよ。怜央が魂を込めて信じているその音楽は、いつか絶対に、届くべき人に届くって」
心地よい秋風が二人の間を吹き抜けていく。夕暮れ色の木々がさわさわと優しく揺れた。
「……ありがとな、鈴」
やがて、噛み締めるように怜央が言った。
「俺、もうちょっとだけ、足掻いてみるよ」
「うん。一緒に、頑張ろう」
──いつか、いつの日か、あの人にも私たちの音が届き、認められますように。
祈りを込めるように、私は深く頷いた。
コメント
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もう第36話、涙腺崩壊した…😭✨ 怜央くんの父親への想い、めっちゃグッときたよ…!あの文化祭の大成功の裏で、一番認めてほしい人に何も言ってもらえなかった切なさが痛いくらい伝わってきた。でも鈴ちゃんが「ちゃんとわかってるよ」「届くべき人に届くって信じてる」ってまっすぐ伝えるシーン、本当に尊すぎる…!2人の距離がもっと縮まっていく予感に胸が熱くなる。しろのねさんの描くキャラの心情が繊細で美しすぎて、何度も読み返したくなるエピソードでした…!次回もめっちゃ楽しみにしてるよ〜🌸💕