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直樹と清水寺から逃げて来たのは
拓海、佐久間、里奈の三人だ。
清水寺の境内を抜けた瞬間、空気が一段重くなった。 非常放送のサイレンが、どこかで鳴り続けている。
人の波はばらばらで、観光客も修学旅行生も、行き先を失ったまま走っていた。
「……はぁ、はぁ……っ!」
拓海が息を切らし、振り返る。
「なあ、もう追ってきてないよな……?」
直樹は答えなかった。
背中が、まだ冷たい。
「止まるな」
短く言ったのは佐久間だった。
スマホを見ながら、周囲を警戒している。
「避難場所は……五条坂小学校。ここから南に七百メートル」
「そんなに……」
里奈が声を震わせた。
そのとき、遠くで金属音がした。
ガン、という乾いた音。
打ち鳴らされた鐘のような、不吉な響き。
「……今の、聞いた?」
拓海の声が裏返る。
「聞こえた。一定間隔だ」
佐久間が言う。
「武器を鳴らして、位置を知らせ合ってる」
「そんな……人間みたいなこと……」
「人間だからだ」
直樹は思わず口にした。
全員が、同時に黙る。
路地に入る。 古い町家が並び、道は細い。
「こっち!」
直樹は無意識に角を曲がった。
胸の奥が、そちらへ引っ張られる。
「なんで分かるんだよ!」
「……分からない。でも、近づいてる気がする」
自分でも説明できない。
ただ、背後が危険だと分かる。
次の瞬間、路地の入口に影が立った。
その時、声が聞こえた気がした。
「走れ!!」
拓海が叫び、四人は一斉に駆け出した。
佐久間が息を荒くしながら言う。
「このままじゃ追いつかれる!」
直樹は歯を食いしばる。
「……分かれ道だ」
前方で、道が二つに分かれている。
左は広いが、見通しがいい。
右は細く、曲がりくねっている。
「右だ!」
直樹は即答した。
「理由は!?」
「……分からない!」
一瞬の沈黙。
それでも三人は、直樹に従った。
細道に飛び込む。
すぐに視界が遮られ、足音が反響する。
背後で、金属音が止まった。
「……撒いた?」
拓海が呟く。 直樹は首を振った。
「……いや。止まっただけだ」
そのとき、遠くから拡声器の声が聞こえた。
『こちらは京都市災害対策本部。五条坂小学校方面へ避難してください』
「……あそこだ」
佐久間が息を整えながら言う。
小学校の校舎が、瓦屋根の向こうに見えた。
門は開いている。
中から、誘導灯が振られていた。
敷地に入った瞬間、膝の力が抜けた。
「……助かった……?」
里奈がしゃがみ込む。
直樹は、校門の外を見つめたままだった。
なぜか分かる。
ここは安全ではあるが、終わりではない。
空の向こうで、また別の金属音が鳴った。
コメント
1件
第4話読んだ!清水寺から逃げてきた後の空気の重さ、非常放送のサイレン、もう最初から息が詰まる展開だったね。直樹の「理由は分からないけどこっち」って直感がめっちゃ気になる…何か能力とか関係あるのかな。金属音の「一定間隔で鳴らして位置を知らせ合ってる」って佐久間の考察が怖すぎる。そして校舎に辿り着いても終わりじゃないっていう直樹の感覚、続きが気になりすぎる🔥