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『あの…みきくん。美晴と離婚したなら、私との再婚、考えてくれる?』
こずえの言葉に幹雄の胸が高鳴った。どうやって切り出そうと思っていたら、相手から話を振ってくれてこちらも好都合だ。
『みきくん…私、みきくんが大好きなの。私と一緒になったら毎日赤ちゃんになれるよ? 私ほどあなたのことをわかってあげられる女はいないと思う』
毎日赤ちゃんになれる――その言葉は非常に彼の心を揺さぶった。幹雄は思わずごくりと唾を飲み込んだ。それはナイスアイディアだ。
美晴と離婚した今、部屋も散らかっていて、片づけができる家政婦(よめ)が欲しいのは事実。こずえのわがままな部分は矯正すればいい。嫁は夫に尽くす生き物なのだから、知らないなら教えてやればいいだけ――
「そうだね。じゃあ婚約しちゃおう。いよいよこずたんと一緒になれるなんて、嬉しいよ!」
心にもない台詞を吐いて電話を切った。婚約パーティーの準備を進めなければ。兼房のいう通り、その場で再婚の是非を確認し、祝福されたら籍を入れ、生頼を紹介してもらう。これは、完璧なプランだ。
僕はなにも間違っていない――その解釈から美晴の訴えを無視する戦略をとった。運営が思い描いた通りのシナリオになってきた。
幹雄は自分の権力と金の力を信じており、その力でなんでも解決することができると過信していた。
そのため父親には報告せず、こずえとの婚礼準備を始めることにした。
日本国内で重婚はできない。法律で定められている。
民法第七百三十二条では『配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない』とし、重婚を禁止している。 これに違反した場合、刑法第百八十四条で『配偶者のある者が重ねて婚姻をしたときは、二年以下の懲役に処する。その相手方となって婚姻をした者も同様とする』と罰則が設けられている。
美晴のリベンジプランは、まだこれからだ。
法律や罰則を無視する形になっているにも関わらず、気が付かない愚かな幹雄との勝負は、果たしてどう決着がつくのか――?
※
それから幹雄は強硬策に出た。というのも、兼房からアドバイスがあったのだ。
「美晴が浮気をした挙句、せっかく授かった子供をだめにして家を出て行ったんだ」
このように言えと彼からお達しがあった。というのも、急な再婚というのは賛同する人間が少ないからだ。生頼の信頼を勝ち取るためには、あくまでも美晴側の有責で離婚をしたことを前面に押し出さなければならない。
AIで作られた偽の兼房の音声からのお達しだとは露ほども疑わず、幹雄は会う人ごとにアドバイス通り美晴を貶めるような話を広め、自らの状況を有利に進めることに尽力した。
その結果、美晴が浮気をしたことが原因の流産をし、仕方なく幹雄は別れを告げたというシナリオができあがった。彼から話を聞いた人間は、それを信じた。
これはすべて、美晴たちのリベンジプラン。
幹雄はすでに破滅への列車に乗せられ、美晴たちが敷いたレールの上を爆走している。
地獄への道を――