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一方そのころ、美晴と亜澄はアジトで打ち合わせを行っていた。
「面白いくらいに予想通りの行動をしてくれるわ、このクズたち」
彼らの行動はすべて把握している運営からの情報を見て、亜澄が不愉快そうに顔をしかめた。
「自分が悪いと微塵も思っていませんよ」
「こっちにどれだけの味方がいると思っているのよねぇ。ふふっ。アイツらが地獄に落ちる絵が早く見たいなぁ」
自身も酷い浮気をされて辛い目にあったことがある亜澄は先ほどとは一転、うっとりとした表情を美しい顔に浮かべた。
「こずえの知り合いも、松本会計士のみなさんも、みんな彼らを恨んでいますからね。それから隆也先生も」
「隆也先生の方から先に進めましょう。お楽しみメインディッシュはこれからです! 美晴さん、先に中ボス(義母)からの討伐といきますか」
義母を中ボスと表現する亜澄の言葉に思わず笑ってしまった。
さあ、いよいよあのクズ義母から攻略するのだ。
美晴は集めた義母のセクハラ証拠を握り締めた。
※
美晴と隆也が手を組んだあの日から、彼はべたべたと自分の身体を触ってくる気持ち悪い和子を断罪するべく証拠を取り続けた。男だからと泣き寝入りすることはあってはならない。性犯罪はいつ、だれが受けても苦しいものだ。それを世間に知らしめるために腹を括った。
この日は美晴と隆也は、地元から離れた場所で打ち合わせをしていた。見つからないようにできる限りの配慮も怠らない。美晴はサングラスをしてウィッグまで着けている。化粧も普段のナチュラルメイクではない。一見、美晴だとわからない。とても秀麗な女性へと変わっていた。
隆也は急に変身した美晴に心を奪われた。
しかし、彼女が美人に変身したからといって、急にこんな気持ちを持ったわけではない。
美晴が日々、隆也を励ましてくれた優しい女性だということはわかっていた。和子のセクハラが行き過ぎて辛いと思う時でも、美晴の存在がいたから講師を辞めずに耐えることができた。マッチアプリで何度美晴の優しいメッセージを読み返したことだろう。いつしか、忖度抜きで美晴とのメッセージが楽しみになっていたことは否めない。
ただでさえ心が傾いていたところに、急に好みの恰好をした美晴の姿を見て、隆也は胸の高鳴りを覚えてしまった。
しかし今は美晴に心を奪われている場合ではない。自身を叱責し、隆也はぐっと顎を引いた。
「だいぶ証拠は集まりましたよ」
隆也が集めた証拠を見て、美晴は口元を押さえた。
(隆也先生にこんなことをして…自分の年齢考えたらどうなの!!)
大人しく優しい好青年の隆也にやりたい放題の義母は、度を越えたアプローチやダンススクール以外の場での接触を求めるようになった。やんわり断っても待ち伏せしたり、彼のプライベートに踏み込む行動が増えていった。まるで老婆のストーカーだ。
気持ち悪く濃い塗りの化粧と悪臭ともいえる香水の匂いをまとった和子に迫られる隆也のことを思うと、おぞましさで支配された。肌が粟立ち、ぞくぞくした。彼がされたことを思うと悔しくて許せなくて、その辛さに涙が出そうになる。