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「くん…高木くんっ」
はっ!と高木は声を見上げた。佐藤は不自然そうに首をかしげる。
「ちょっと、ちゃんとやって」
「え、あ。はい…すみません……えっと」
「大丈夫?」こく、と高木は頷く。佐藤は白鳥を見た。肩をすくめる。
佐藤はデスクに戻る。
「名前さんの件だけど」という言葉に高木はすっと眉間を押さえた。
「あれは…恐らく米軍の狙撃用のライフルだわ。調べたら似たようなものがあった。警察の特殊部隊のもの照らし合わせたけど、全部違う」
「それは」と白鳥がコップを置く。「何も不自然ではありません。米軍は日本の防衛も担っていますから…」「違うわよ」佐藤は椅子を鳴らす。「たしかに誘拐されたのはただの一般人じゃないわ、現職の外務省の息子……警察が恩を売りたいのもわかる。でもーー」
「たしかに」白鳥も同じようにする。「なら、【我々】に狙撃させたほうがいい……」
「それでなぜ?」佐藤は首を振る。「なぜ公安部が名前さんに狙撃させるわけ?名前さん……たしかに一般人よね?そんなこと許されるの?」
「…まあ」と白鳥は腕を組んだ。「公安部が出してくるのはすべて…【表向き】の情報ですから」
たどり着けない……。ということ?
佐藤はどっと頭を下げた。
「公安より上が関わっていたら…」
「幽霊どころか」と白鳥。「…【誰】でもない可能性が高いです」それに、と白鳥は続ける。「僕は狙撃はからきし駄目なのでわかりますが、3キロ先の食事しているカーテン越しの男の」こめかみに人差し指を当てる。「あんなこと…本当に並みの人間にはできませんよ」
「えぇ、まるで…訓練でも受けた軍人だわ…」
海兵だーーと彼女も口走っていたし…
「あ」がたん。と高木は立ち上がる。
「僕もう帰らないと…」さっさっ、とデスクを片付ける高木に、佐藤はまた眉をひそめる。
「高木くん」
「あ、ほら…ミルク買って帰らないと……」と佐藤から目をそらす。
「ミルク?」「猫でも飼ってるのか?」
「いえ?」と佐藤が答えるので、白鳥は少し目をそらした。
「じゃあまた明日っ」高木は走り出した。
バタン、とドアが閉まり佐藤は腕を組む。
「怪しい……」
警部の後ろのカーテンを開ける。やがて出てきた走る高木が、辺りを見回す。見回して走り、また見回す……。繰り返しながら地下鉄に消えていった。
「…高木くん。あなた、わかりやすいのよ……白鳥くん」
「ん?」と白鳥は首を伸ばす。
「高木くんのパソコン、開ける?」
「は?」と警部が言ったので千葉は立ち上がり警部のほうへ行き、話しかけだした。
「えっ…だめでしょ、それ…」
「彼が何を1日調べていたか知りたいのよーー」ちら、と千葉でかぶって見えない警部を見る。「早く」
白鳥はため息をつき、パソコンを開く。パスワード、と出る。「わたしの誕生日は…」とすぐさま言われ、言われた通り打ち込む。1発だった。
「セキュリティって意味、彼わかってます?」
佐藤はす、とマウスを動かす。「これ…」白鳥も覗いた。
猫じゃない。と高木は帰宅して思う。
スミスがベッドであぐらをかいて、英字新聞を読んでいる。
「やあ。だんな様……」とふふ…と彼女は笑う。
「虎……」
「あ?」とスミスはぺた、と足を床におろしてゆっくり歩いてくる。ふわ、とまた不思議な匂いがして高木は抱き締められた。カーテンが開いている。
「わたしの国の匂いだ」
「え?」
「わたしは様々な国の混血……匂いは遺伝子で決まるーー」
ふ、と顔を押さえる。
「……肺ごと……わたしでいっぱいにして…」
ふさ、と前髪が目にかかる。がん、と玄関に高木は押し付けられる。
耳元で囁かれる。「昼間わたしがいない間……誰か入った」すっ、とドアの蝶番を指差す。「挟んだつまようじが落ちてた」はっ!と高木は目を開く。「盗聴器か……恐らくリビングだろうな…」
「高木くんっ!」
ドアがどんどん叩かれる。「開けて!いるんでしょ!話があるのーー!」
「佐藤さ……」
「おや」とスミスはぱちぱち瞬きする。
最悪だ、と高木は思う。どうしたらいいのかわからない。
「やめっ…!」と言うのとスミスがドアを開けるのは同時だった。
「たかーーえ…?」佐藤は素直にきょとんとした。
スミスは肩に髪を流す。
「こんばんは……」
佐藤はすぐ高木を見て、明らかに目元を歪ませる。「ちがーー」
61
饅頭
13,885
#風見裕也
#降谷零
「わたしの【だんな様】に……」前髪が垂れる。「なにか用かい…?」ふ、とスミスは首をかしげる。
「…っ!」佐藤は後ろにさがったあと、だっと走り出す。
「佐藤さんーー!」「よせ」ぱし、と高木の手首をスミスは掴む。ぎっ、と睨まれたが、スミスは表情を変えない。
「あの女を愛しているなら追うな」
「!」
「彼女に危害が加わってもいいのか」
ばっ、とその手を振りきり、高木は肩で息をする。
「君を許さない、名前さん……佐藤さんを傷つけた!」
スミスは肩をすくめた。「どうぞ好きに。だがな…」とスミスがぐっ!と耳元にまた寄る。「なら…早く突き止めなくちゃならない。わかるだろ、刑事さん」
「くそっ…」
バタン、とドアが閉まる。「カーテンを閉めて…」引きちぎる勢いで高木はそうする。「動くなよ…」スミスはそのまま口付ける。「くっ…」高木はすぐ顔をそらした。「そのままわたしに腕をまわして…そうすれば、電気が消えてもおかしくないから」言われた通りにするしかない。
そのままスミスは電気を落とした。人差し指を立てる。
しん、とした室内でスミスの不思議な匂いだけがする。
「何を…」スミスはスマホのカメラを起動させて足元を写し歩き回る。見えた赤い線に、高木ははっとした。
赤外線かーー!
カメラから出ている赤外線はカメラを通すとうつる……スミスが顎でやる。高木はすぐ線の先、コードの中を開けて息を飲んだ。頷いて外し、足で踏む。
スミスは真横で囁く。「お前…パソコンにカメラがあるな」「元々ついているやつです」
「なら閉じてーー」スミスはまた服を脱ぐ。「早く」
「ん…?」明らかに黒いボタンが2つあり、高木はすぐパソコンを閉じた。
はあっ、とデスクに寄りかかる。
「お疲れさん」
「名前さん!」ぐっ!とシーツを引き上げ、高木は言う。「なんてことをしてくれたんですか!」
「言われたことは?」とスミスは高木を見上げる。
「…えぇ調べました」
所轄は一瞬ざわついたがすぐ静かになった。佐藤が明らかに泣いていたからだ。
「佐藤さ…」
「警部っ」と彼女は駆け寄る。
「な、なんだ藪から棒に…というか佐藤くん大丈夫かねーー」
「恐らく、高木刑事は事件に関わっています」
「な、なんの?」と白鳥。
佐藤はぐっと目を擦り言う。「マトリとの合同捜査だった、麻薬取締りの事件。公安部に持っていかれたーー」いえ、と佐藤は顎を引く。
「揉み消された件」
ざわつく所轄の人間が集まってくる。
「先入捜査官がつけていた盗撮器と盗聴器……あれで、見たでしょう?もう、公安に持っていかれたからありませんけど、私達はたしかにこの目で見た!」
名前さんが、窓から女性を落として殺すのを……!
「それが…」とゆっくり警部は言う。
「その女性は、真下組の女ではない!対立していた…」はあっ、と佐藤は息をつく。
「対立していた、萩原組の…ボスの女のひとりだったんです!」
「スパイかーー」千葉は頷く。「だから!」と佐藤は振り向く。「…突き止めた萩原組も黙ってない……!」
「それと高木くんがなんの関係が?」
佐藤はスミスを思い出して首を振る。
「名前さんが個人的に…高木くんを頼ったら?」
白鳥は上を向いた。「まぁ…あのお人好しだから」「あと美人だしね」と言う千葉に、白鳥は肘をつく。
「ということはもうっ」佐藤はぶんぶん首を振る。「彼ももう巻き込まれている可能性が高いわ!」「だが証拠がない……」
はあっ!と佐藤はカーテンを開けた。
どうするつもり?高木くん。そして…
「何をするつもり…名前さん……」
コメント
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みぅです🤍🥀 第32話、どんどん深みにはまっていく感じがたまらなかったです……。 佐藤さんの直感と、スミスさんのミステリアスな存在感の対比がすごく印象的で。 「だんな様」って呼ぶシーン、心臓がぎゅっとなりました。 高木くん、ほんとに大丈夫なのかな……優しいからこそ巻き込まれちゃうのが切ない🥀 続きが気になりすぎます…!