テラーノベル
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彼の運転のおかげで、車はあっという間に空港へと到着した。
レンタカーを返却し、ロビーへと向かいテキパキと搭乗手続きを済ませる。
大きなキャリーケースもすべて手荷物として預けた。
あとは、時間が来たら飛行機に乗って東京へ帰るだけ。
明日からは、またいつもの生活、いつもの日常に戻るのだ。
「あぁー、まじで北海道から出たくないなぁ……」
「ほんま、帰りたないなぁ……」
ふたりして空港の待合ロビーの椅子に深く腰掛け、現実に戻る寂しさから、絵に描いたようにがっくりとうなだれる。
――その時だった。
どこからともなく、ふわりと香ばしくて、たまらなく魅力的な良い匂いが鼻腔をくすぐった。
「ん…? なんかめっちゃ良い匂いしない?」
辺りを見渡すと、匂いの正体であろうガラス張りの実演ショップがすぐ近くに目に入った。
あ、あそこだ。
僕がそこを見つめたまま隣に座る彼の方をのぞくと、しゅんも全く同じ顔をして僕を見ていてバチッと目が合った。
「わかるで、じゅう……。めっちゃええ匂いやんなぁ……」
「これ…、食べてから帰ろう」
「せやな……!」
ふたりして深くコクリと頷き、吸い寄せられるようにその長い列の後ろへと並んだ。
どうやらそこは誰もが知っている大手メーカーの揚げたてポテトチップスや、定番スナック菓子の新食感バージョンが出来立て熱々のままで食べられる空港限定の特別なショップらしい。
「さっき色々食べたばかりなのにね〜!」
なんて笑い合いながら、目の前で次々と揚げられていくお菓子を、僕たちは目を輝かせて見つめた。
せっかくだからと、僕たちは北海道バター味のポテトチップス、とろりとチョコのかかった甘いもの、そして定番のポテトスナックのチーズ味の3種類を注文。
ついでにショップに並んでいた北海道限定の商品まで、カゴに大量に買い漁った。
注文したものを受け取り、再びロビーのベンチに座って揚げたてのポテトを口に運ぶ。
「……まじで、美味しいんだけど……っ」
「なんか……美味しすぎて涙出そうやわ……」
「いや、わかる。まじで感動……」
「最後まで全力で北海道を味わい尽くそう……!」
旅の終わりの切なさを美味しいお菓子で誤魔化すように、僕たちはしみじみと感動しながら、サクサクと音を立ててそれらを口いっぱいに味わった。
けれど楽しい時間ほど過ぎ去るのは早い。
ち び
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電光掲示板の時計の針は、あっという間に出発時間を指そうとしていた。
「ほな……行こうか」
「うん」
お揃いのシマエナガマグカップの入った小さな袋をそれぞれ手荷物として大切に抱えながら、僕たちは東京行きの飛行機の中へと乗り込んだ。
座席に深く腰掛け、シートベルトを締める。
飛行機がゆっくりと動き出す直前、僕は思い出したようにスマホを取り出してはやちゃんへとメッセージを送った。
昨夜のあのパニックの最中、外に飛び出してはやちゃんに電話をした時の気持ちと今の僕の心は、しゅんの愛のおかげで大きく前向きに変わっていた。
けれど、はやちゃんに話したいこと、報告したい感謝の気持ちは山ほどあったから、今晩会う約束を果たすために指先を動かす。
《はやちゃん! 今飛行機乗ったよ! 予定通り到着出来そう》
少しして、すぐに既読がついた。
《おけ。お疲れ様! 会えそう?》
《うん! 大丈夫そう!》
《良かった、じゃあ迎えに行くわー》
《はーい! とりあえず着いたら連絡するー》
そこまで流れるように送って、僕はスマホの電源を切ってポケットへとしまった。
ふぅ、と小さく息を吐く。
……ん?
あれ……?
シートが微かに振動し、飛行機が滑走路に向けて加速し始めたその瞬間、僕ははやちゃんからの最後のメッセージの違和感に気がつき、ハッと目を見開いた。
迎えに行くって……。
それって、僕の家に迎えに来てくれるってこと、だよね……?
え、まさか空港まで迎えに来るってこと…!?
あぁちがうの、はやちゃん!
空港じゃなくて、お家に迎えに来てくれるんだと思って…。
確認のために、もう一度はやちゃんにメッセージを送ろうと大慌てでスマホを取り出したが、機体はすでにフワリと宙に浮き上がっており、画面の右上には無情にも『圏外』の2文字が白く冷たく光っていた。
あー、どうしよう……困った。
完全にやらかしたかもしれない。
でもいくらはやちゃんでも、さすがに空港まで迎えに来るなんてことは……
いや、あるな。
はやちゃんだからこそ来る気がしてきた。
もちろんいつかはちゃんと紹介しようと思っていたけど……。
でも今じゃない。
どうしよう……。
窓の外に遠ざかっていく北海道の大地を眺めながら、僕は顔を引き攣らせるのだった。
to be continued…….
コメント
1件
🍼🩷なら空港まで絶対に来る笑!!もし来たとして🍼❤と会ったらどうなるんだろう笑修羅場になるのかそれとも仲良くなるのか…想像がつきません!笑、本当に面白い!!私のいつもの癒しとして読ませて貰っています😆次の話も楽しみにしています😊‼️