コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「三輪ちゃん、そろそろランチ行こっか~」
今日の午前中の仕事が一段落して、同じ部署で今度のプロジェクトでも一緒になる後輩の三輪ちゃんをランチに誘う。
「あ~もうそんな時間なんですね~!お供しま~す!」
今日のランチは少し時間に余裕がありそうなので、三輪ちゃんを誘って会社の食堂へ。
基本ランチは外で用事があればそのまま外食したり、時間がなければコンビニ、たまに節約でお弁当持参なんかもすることもあるけど、大体は食堂に行くことが多い。
うちの食堂はそこそこオシャレで女子社員も多いからヘルシーだったり美味しいメニューも多いから充分満足出来るから、結構お気に入り。
「望月さ~ん。今日何します~? あっ、最近メニューに加わったスペシャルランチ食べました~?」
「う~うん。まだ~」
「相当美味しいみたいですよ~。 数量限定らしいから、かなり早めに無くなっちゃうみたいですけど」
「相変わらず三輪ちゃん情報早いね~」
三輪ちゃんとは仕事的にもよく同じプロジェクトに参加することが多いから、一緒に話す時間も多くて。
何事も興味津々の情報通で、会社の情報や噂にも詳しいらしくよくいろんな話を教えてくれる。
「じゃあ今日チェックしてみようかな~」
「あるといいですね~」
それから食堂で入口に入って席を探そうとしていると。
「あっ、望月さん。あの人知ってます!?」
三輪ちゃんが小さく誰かに向かって指を差している。
「ん?誰?」
「あの人。最近噂になってる・・・知りません?」
その指差す方向に目をやると。
「早瀬さん。商品企画1部の。元々営業いたらしいんですけど、一時期から1部に移動して、どちらの部でもかなり活躍してるみたいで、今うちの会社で上位の有望株らしいです!」
やっぱり・・・アイツのことね。
無駄に背が高くてスタイルもいいあのビジュアルは、遠くにいてもやけに目立って目に入ってしまう。
この前まで全然知らなかったのに。
少しでも関わり持つとこんな簡単に目に入るモンなんだ。
「へぇ~そうなんだ」
アイツそんな有名なんだ。
そんでそんなすごいんだ。
へぇ~。
「それであのビジュアルとスタイルじゃないですか~。やっぱり周りの女子は放っておかないみたいで相当モテるらしいですよ~」
でしょうね。
それは初めて出会った時にすでにわかってました。
「でも~会社では特定の人と仲がいいとか、付き合ってるとかはないみたいなんですけど」
へぇ~。そういう人・・いないんだ。
じゃあ・・さっきのは・・・何?
会社でかなりの距離感出されてましたけど・・・。
「なんか入社最初の頃はかなり女性関係も激しかったみたいです。でもどんどん仕事で活躍し始めたと同時に、変わらずモテて会社で言い寄られても誰も相手にしなくなったみたいです。なのでその頃から会社以外でもう特別な人いるんじゃないかって噂ですよ~」
あっ・・・そういうことね。
なるほど。
だからモテる意識はあるってことか。
でも実はそういう人いるんじゃん。
特定の相手と付き合うの面倒だとか言ってたくせに。
じゃあ、やっぱりさっきのは何だったのか。
紛らわしい。
「残念ですよね~。会社の女子たちは皆ここぞとばかりに、隙間があったら狙ってるみたいですけど」
面白そうに笑いながら三輪ちゃんが話す。
「三輪ちゃん面白がってるってことは特に興味ないの?」
「私ですか!? 私はあそこまでのイケメンは苦手なんですよ~。今の彼氏の程よく三枚目くらいがちょうどいいです~」
キャハハと楽しそうに自分の彼氏をネタにする。
「あっ、望月さんとなら早瀬さんお似合いですね!」
「はっ!?」
三輪ちゃん、なぜそうなる!?
え!さっきの見られてないよね!?
三輪ちゃん情報通なだけに怖い!
「向こう私よりかなり年下だし。向こうが可哀想だよ~」
流石に私とそういう対象にされても向こうも困るでしょうよ。
「あっ、望月さん、そういえばずっと前から付き合ってる彼氏さんいらっしゃいましたっけ~? なんだ~残念~。二人お似合いなのに~!」
キャハハとまた笑って楽しんでる三輪ちゃん。
「ハハハ。ま、まぁ・・・」
結局どっちも間違っているけど、もう否定するのもめんどくさい。
いつの頃だったかは忘れてたけど、一時期必要以上にそういう出会いや飲み会に誘われること多くて、仕事にも集中したかったし、やっぱり誰かと付き合うとか面倒だったから、話の流れで彼氏いることにしてたんだっけ。
そんな風に話していると、同じく隣の男性社員と話しながら徐々にこちらの方に近付いて来る噂の対象人物。
三輪ちゃんと話しながら、さすがにちょっと気になって少しだけそちらに目をやる。
すると少し前の方で一瞬、彼と目が合う。
さっきのさっきで、こんなとこでお互い違う人といて、また会うのも少し気まずい。
だけど、また何か変に反応されるかもしれないとか思ったら、三輪ちゃんと会話しながらも少しだけ意識してしまう。
向こうも気付いたっぽくて、三輪ちゃんと会話しながらまたそっちの方向を確認すると。
会話しながらもなぜかずっとそのまま感じる視線。
いや、そんな見られると・・また意識・・しちゃうじゃん。
てか、そんな見てたら不自然だし・・。
あまりにも感じる視線に耐えられなくなって、会話する隣の三輪ちゃんに視線を切り替える。
ってか、ここは挨拶だけでもするべき?
一応さっき仕事仲間として顔は合わせたワケだし。
これから一緒にやってく仲間として別に挨拶くらいは不自然じゃないよね。
多分向こうも会釈くらいはするはずだろうから、そしたらまぁ自然に挨拶くらいはしてもいっか。
三輪ちゃんと会話して、向こうからの視線を外しながらも、近づく瞬間までにフル回転で考える。
そして、少しずつ距離が近づいて来て、挨拶しようかと視線を戻したら・・。
なぜか合っていたはずの視線が私が目を合わせた瞬間に急に外される。
あれ?今・・・、視線わざと外した?
このまま挨拶する雰囲気じゃなかった?
ずっと視線感じてたのは気のせい?
何事もなかったかのように、全然知らない相手かのように、その場を過ぎ去る。
なんだか・・・ちょっと寂しく感じたのはきっと気のせい。
別に寂しがる理由ないし。
別に元々そんな知り合いなワケじゃないし。
って、なんで私こんなこと考えてんだろ。
気にしない気にしない。
なんだか出会ったすぐで少し振り回されてる気がして、いつもと違う自分になっていきそうな予感に、この状況にモヤモヤしてる自分がいる。
だけど今は、そんな感情にまだ自分自身気付かないフリをした。